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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生59巻5号

1995年05月発行

雑誌目次

特集 水銀汚染—水俣病よりグローバルな環境問題へ

水銀汚染—局地的問題とグローバルな問題

著者: 鈴木継美 ,   佐藤洋

ページ範囲:P.300 - P.302

水銀の化学形
 周知のように,環境における水銀の存在形態は,①金属水銀,②その他の無機水銀(主に2価,一部1価),③有機水銀(主にメチル水銀,人為的に他のアルキル水銀,アリル水銀等),の三種に区分される.この中で人の健康に関わる汚染として重要なものは,金属水銀,2価の無機水銀,メチル水銀で,近年この三者の環境の中での化学形変換について研究が進んでいる.しかし,これまでに発生した大規模な水銀中毒(水俣,イラクの事例)がいずれもメチル水銀によるものであったこと,さらに魚に蓄積している水銀は多くの場合,大部分がメチル水銀であることが分かってきて,環境中での無機水銀のメチル化に大きな関心が寄せられている.

水俣病の疫学

著者: 二塚信 ,   北野隆雄 ,   若宮純司 ,   金城芳秀

ページ範囲:P.303 - P.306

はじめに
 水俣病は魚介類に蓄積されたメチル水銀を経口摂取することによって起こる神経疾患である.このメチル水銀はアセチレンよりアセトアルデヒドを生産する際に用いられた無機水銀触媒が,メチル水銀に副生され,工場廃水を通じて水俣湾に排出し,食物連鎖を通じて生物濃縮により魚介類に畜積されたものである.チッソ水俣工場のアセトアルデヒド生産は1932年に始まり,1955年から67年にピークに達し,1968年に稼動を停止している1).1987年の本誌で報告したように,ほぼこれと軌を一にしてヒト頭髪や臍帯中メチル水銀は著減をみている2).他方,水俣湾内の魚介類は,ごく少数の魚種ではあるが,食品衛生法による暫定的基準値(総水銀0.4ppm,メチル水銀0.3ppm)を超えており,同湾内の魚穫自主規制は今なお継続中である.

ブラジル・アマゾン水域の採金による水銀汚染調査

著者: 原田正純 ,   中西準子 ,   小沼晋 ,   大野浩一 ,   赤木洋勝

ページ範囲:P.307 - P.311

はじめに
 全長6,749km,1,100の支流をもつアマゾン川の360万km2という広大な水域(アマゾニア)の水銀汚染といわれてもなかなか実感がわかなかった1).河口の幅は320km,最も流量少ない時期で1日4億トン(わが国のすべての用途の水使用量が1日2.5億トン)といわれるから,仮に水銀で汚染されても希釈されて生態系にはほとんど影響がないのではないかと考えていた.しかし,今までの局所的・部分的調査によってみても事態はあまり楽観的にみておれないようである1〜3)

アマゾン河流域の環境汚染調査

著者: 赤木洋勝

ページ範囲:P.312 - P.316

はじめに
 1992年6月,リオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において表面化したアマゾン河流域の水銀汚染問題は今や世界的関心事となっており,この問題に対する取り組みもますます活発化する様相を呈している.この水銀汚染は砂金の抽出に使用される金属水銀の環境への放出によるものであり,2000カ所を超える金採掘現場(ガリンポ)で働く労働者(ガリンペイロ)は100万〜120万人とも言われ,環境中に放出された水銀量は,最近の過去8年間で1800〜2000トンにも上ると推定されている.
 アマゾン河流域の水銀汚染において特に重要なのは,環境中に放出された金属水銀から生物濃縮性の高いメチル水銀への化学変換であり,したがって,金属水銀を直接扱っているガリンペイロへの無機水銀による被害もさることながら,河川流域に沿って生活し,水系に食糧を依存する地域住民へのメチル水銀による被害も懸念されている.前者は職業性の曝露によるもので,対策を講じることによって被害の防止は可能であるが,後者に対する対策は容易でなく,新たな大きな問題へと発展する可能性を秘めている.しかしながら,広大なアマゾンの水銀汚染に関する調査研究はまだ緒についた段階で,これまでいくつかの研究グループによって主要なアマゾン河支流の住民の毛髪,魚類等を対象とした汚染調査が進められているものの1-5),調査データは総水銀としての値であり,環境中で生成されたメチル水銀のデータが乏しいのが実状である.

魚多食集団における有機水銀汚染—セイシェル,ニュージーランド

著者: 秋葉澄伯 ,   安藤哲夫

ページ範囲:P.317 - P.320

はじめに
 ヒトの水銀曝露源として最も重要なものは魚類の喫食である.ヒトの水銀曝露量は魚と強い相関を示す.もちろん,魚肉以外にも水銀のソースがない訳ではないし1),また飲酒のように肺からの金属水銀の排出を促進してヒトの水銀曝露レベルを修飾する因子もない訳ではないが2),それらの因子の影響は通常あまり大きなものではない.海洋系の食物連鎖の中で頂点に近いレベルに位置する大型の回遊魚,すなわちサメ,マグロ,カツオなどの魚肉が比較的高い水銀濃度を示すことはよく知られている.米国の食品・薬品局の規制値は0.5ppmであるが,その近辺の水銀レベルでは同じ種類の魚でも体長が長く体重が重いほど水銀濃度が高い向傾があり3),局所的な汚染が特になくとも,体型の大きな魚では0.5ppmを超えうることが報告されている.魚肉中の水銀は主に有機水銀であり,これは無機水銀と違って,体内に比較的長く留まって蓄積され高い濃度に達する.したがって,魚類を大量に喫食する集団は無視できないレベルの有機水銀曝露を受ける可能性がある.

魚多食集団における有機水銀汚染—フェロー諸島

著者: 荒記俊一 ,   村田勝敬

ページ範囲:P.321 - P.324

はじめに
 水俣病で代表される有機水銀中毒の集団発生は,日本のほか,イラク,中国などの国々で工場廃水や食品汚染による中毒が報告され,中毒学的,疫学的および生態学的な解明が進んでいる.一方,地殻ガスや産業活動によって大気中へ放出された無機水銀が,微生物や魚介類の体内でメチル化され,食物連鎖により大型魚や魚を捕食する哺乳動物へと濃縮され,これらをヒトが多食することにより非顕性の健康影響(subclinical effects)が発現する可能性が懸念されている.後者のように魚由来の高濃度の水銀がヒトに検出された事例は,ニュージーランド(鮫),フェロー諸島(鯨),グリーンランド(アザラシ,鯨)で報告されている.
 本稿では,我々が国際共同研究チームの一員として参加している北大西洋フェロー諸島で1986〜1987年に出生した1,023人の小児のコホートを対象とした研究の概要を報告する.この研究は,1986年にデンマークオデンセ大学のP. Grandjean教授とフェロー諸島のP. Weihe病院部長により始められ,我々は神経生理学的検査を行うために1993〜1994年に国連大学とファイザー財団の研究助成を受けて参加したものである.

カナダにおける水銀汚染—史的一考察

著者: ,   多田羅浩三

ページ範囲:P.325 - P.329

はじめに
 水銀汚染は一般に,歯科領域(例えば,水銀を含むアマルガムの問題),職業上における危険物として,あるいはハイリスクグループとして認定されている住民に関連して,重要な意味を持っていると思われる.本稿では,とくに一般の人たちの関心の強い,第三の点について述べることとする.最初の二つの問題については,主として専門の雑誌において議論されているが,住民の水銀汚染の問題は,いくつかの政府の調査委員会,市販の書籍,テレビやラジオのドキュメンタリー番組,また疫学研究においても取り上げられてきた.
 筆者が水銀中毒の問題に関心を持つようになったのは,1990年に,モントリオールから北に1500km,ジェイムス湾に面した人口約3千人の谷合の小さなクリー族の人たちの村,チサシビで医師として仕事をするようになった時のことである.モントリオールにいる頃,この地域がラジオやテレビ,あるいは新聞の記事で何度も,ジェイムス湾の水力発電所貯水池のメチル水銀の汚染によって毒されているということを聞いていた1)

イラクの有機水銀汚染

著者: 金城芳秀

ページ範囲:P.330 - P.332

はじめに
 1971年9月,イラクのBasra港からメチル水銀殺菌剤で処理された種子小麦73,201トン(大麦22,262トン)が荷揚げされ,まもなく全国の農家に配布された.翌年1月,自家製のパンを食する地方からメチル水銀中毒患者が多発した.中毒患者は入院患者として把握され,大部分は農夫もしくはその家族であった.3月末には患者の集団発生が終息に向かったものの,最終的には入院患者約6千人,死亡者が約500人に達し,大規模な水銀農薬禍となった1)
 ここではメチル水銀曝露に関する量・反応関係に焦点を当て,イラクの有機水銀汚染について紹介する.

中華人民共和国松花江流域の有機水銀汚染

著者: 加藤寛夫

ページ範囲:P.333 - P.335

はじめに
 1958年に中華人民共和国,東北地方(旧満州)吉林省にある吉林化学工業工司でアセトアルデヒドの生産が開始された.
 用いられたアセトアルデヒドの生産工程は水俣市の新日本窒素株式会社および新潟県の阿賀野川上流の昭和電工,鹿瀬工場で有機水銀が副生された方法と全く同一のものであった.そのため,触媒として使用された無機水銀から副生された有機水銀が工場廃水とともに第2松花江(図1)に流出し,沿岸流域が汚染された.

水銀汚染の今後の対応

著者: 滝澤行雄

ページ範囲:P.336 - P.339

はじめに
 水銀汚染を論ずるとき,日本で再度経験した水俣病の発生を抜きにはできない.水俣病はメチル水銀で汚染された魚介類を多食して起こっており,自然界の媒体を通して濃縮し,人体に蓄積するという食物連鎖が介在した事件として,日本では公害の原典とされ,また国際的に広く環境汚染に対する警鐘と受けとめられているものである.
 元来,水銀は大気,地・水圏において鉱山および鉱染地帯を除き,鋭敏な測定器で感ずる程度の微量しか存在しないのが普通である.しかし,生物活動圏では連鎖機構で比較的高濃度に濃集し,その影響はアマゾン川流域の水銀禍でみるように,いまや看過できない現状にある.

視点

環境保健—保健所の対応

著者: 青山英康

ページ範囲:P.298 - P.299

はじめに
 保健所法の抜本的な改正による地域保健の基本法とも呼ぶべき地域保健法の制定によって,保健所機能の大きな変革が期待されており,これに伴う都道府県の行政機構も改編されつつある.
 これらの変革の中で保健所が,環境保健にどのようにかかわっていくべきかを論ずることは,今後の公衆衛生の動向とともに保健所機能の将来展望にとっても極めて重大である.

連載 地域精神保健の展開—精神保健センターの活動から・14

栃木県精神保健センターの活動—さまざまな協力組織・ボランティア育成を通して

著者: 大西守 ,   椎名良子 ,   塚田里香 ,   平本満 ,   小倉謙介

ページ範囲:P.340 - P.342

1.はじめに
 栃木県精神保健センターは昭和43年に,従来からの精神相談所(昭和27年開設)を拡充して設立されている.その業務の一つとして重要な位置を占めてきたのが精神保健に関する協力組織・ボランティアの育成である2,4)
 各団体との関わりの持ち方は,その発生状況から二つに分けることができる.一つはセンター事業のなかでグループが生まれ組織化していったもの,もう一つは事業上の必要から既存の組織と結びついたものである.実際には,前者の発展的な誕生による団体がほとんどである.そこで,栃木県の精神保健活動のなかで,地域に密着した協力組織・ボランティア育成の実情について紹介し,今後の課題について検討してみることとする.

都道府県医師会の公衆衛生活動

大分県医師会の公衆衛生活動

著者: 吉川暉

ページ範囲:P.344 - P.345

はじめに
 大分県医師会の公衆衛生活動を語るについて,過去の歴史にふれないわけにはゆかない.
 それらに一貫していることは,昭和40年代の始めから,医療,県民の健康にかかわるすべてのことを地域で考えよう,実践しよう,評価しよう,との医師会の提唱で結成された大分県地域保健協議会(会長・知事,副会長・県医師会長および県担当部長)の傘下において,ことが進められてきていることである.以下,順を追いながらその活動の概要を述べる.

地域口腔保健—歯科医師会の実践

宮城県歯科医師会の活動

著者: 守谷友一

ページ範囲:P.346 - P.347

はじめに
 はじめに宮城県の地域医療をとりまく環境についてふれてみる.本県の人口は平成2年10月1日現在2,248,558人であり一貫して増加傾向を続けているが,仙台市域だけで全県入口の40.8%を占め,人口の集中化が進んでいる.また年齢構成別人口の推移をみると,平成2年における65歳以上人口は12%であったが,平成12年には16.7%になるものと推定され高齢化の進展は急激で,全国と同様の傾向を示している.本県では5つの二次医療圏をさらに12に細分して地域保健医療圏を定めているが,平成4年3月末現在,高齢化の最も高い地域保健医療圏で19.5%,最も低い圏域では9.6%と2倍を越える地域格差がみられる.そのような中で本会は11支部会をもって組織されており,2つの地域保健医療圏を包含した形で仙台歯科医師会があるほか,他の10の支部会は地域保健医療圏と一致した区域を有している.会員数は991名(平成6年9月1日現在)でその半数超が仙台市で占められている.また医療施設をはじあ,中核施設機能も同様に仙台圏域に一極集中しており,地域歯科保健医療を展開する上で,この集中化した施設機能をより広域的に活用することが重要な課題となっている.

保健活動—心に残るこの1例

「そよ風と暮らしと健康」との出合い

著者: 福本久美子

ページ範囲:P.362 - P.363

 私の保健所保健婦の活動の中で,多くの人々,いろいろな町役場の健康づくり活動と出合った.その中で私の心に残る一例は,「そよ風と暮らしと健康」というキャッチフレーズで始まった熊本県蘇陽町とのかかわりである.
 熊本県蘇陽町は,昭和63年度から,熊本県の健康で活力ある地域社会をめざす「くまもと80ヘルスプラン」事業のモデル町指定を受け,「すべての町民が健康で活力に満ちた町づくり」をめざして,高齢者対策を入り口とした活動を展開してきた.その結果,住民が健康づくりの計画策定に積極的に参画したり,主体的な健康づくりの実践活動が始まった.さらに,町の保健部門の位置づけが高まり,町の基本構想計画が健康づくりを重視した計画となった.そのような蘇陽町の活動に,管轄する保健所保健婦として,私は平成元年度から平成4年度までかかわってきた.

活動レポート

埼玉県食生活改善推進員の軌跡—昭和46年〜平成6年

著者: 斉藤ミチ子

ページ範囲:P.348 - P.350

はじめに
 昭和46年「埼玉県食生活改善推進員団体連絡協議会」の前身である「埼玉県栄養大学修了者団体連絡協議会」は,会員381名で発足した.主婦のボランティアの組織として“私たちの健康は私たちの手で”をスローガンに掲げ,食生活の改善を通して,“成人病予防による健康づくり”をめざして活動を開始した.幸い関係諸機関によるご指導およびご助力により当協議会に対する社会全体の理解の深まりで,現在のように大きな組織に成長することができた.
 協議会が発足して24年の着実な実践活動の結果,現在では会員数9,028名を擁する全国で最も大きな組織に発展することができた.この間,ボランティア精神に徹し食生活改善,特に成人病予防活動を続け今日に至っているが,その活動に対し,昭和51年に「南 喜一賞」,平成2年に「厚生大臣賞」,平成4年に「保健文化賞」を受賞することができた.

滋賀県草津保健所における地域保健医療計画の進行管理とその評価

著者: 辻元宏 ,   結城隆之

ページ範囲:P.351 - P.354

はじめに
 草津保健所が担当する二次医療圏の湖南地域保健医療計画は,平成3年11月に湖南地域医療協議会で案を決定し,平成4年12月の本課意見を踏まえて最終案を作成した.しかし県版保健医療計画の見直しの時期をむかえ明らかになる事実は,任意的記載事項としての保健—医療のソフト面について進行管理が不十分であり,各事業評価を基礎に次期計画を定める上で客観性と実践性の困難を伴うことである.地域保健医療計画作成を契機に保健所は,地域保健事業の機能的意義と必要性を見極めて将来展望を図らなければならない.そのためにはこの計画が社会計画であることに留意して,実施には他組織,機関との共同作業が必要となると同時に,将来の各事業の評価も他組織と連携することにより客観的に評価される必然性が存在する.それらを解決する基礎は地域保健医療計画の具体的進行管理であり,そのための真摯な取り組みの必然性である.当保健所では平成4年3月に進行管理計画を策定し具体化した.その後1年を経て進行管理の意義が明確になり,保健所機能について数々の問題点も生まれた.計画と進行管理については,中俣らの論文の思想を基礎に合理主義的方法を用いた1,2)

調査報告

在日外国人の医療問題—都立病院の受診実態から

著者: 杉山章子

ページ範囲:P.355 - P.358

はじめに
 ここ数年,日本に入国する外国人は増加の一途をたどっている1)が,それに伴って生じる諸問題について,様々な論議が展開されている.医療の分野では,医療保障のない資格外滞在者の治療の困難さがかねてから問題とされてきたが,事態は改善されないまま深刻さを増している.外国人の増加だけでなく定着化の傾向が顕著となってきた現在,単に医療費の未払いといった経済的問題だけでなく,地域の公衆衛生に関係するような問題も生じている.滞在資格の有無にかかわらず,外国人が地域で生活している以上日本の社会と密接な関わりをもつことは当然であり,外国人の健康は今や日本人のそれと切り離して考えられない段階にきているといえるだろう.
 都立豊島病院は,都内でも発展途上国の外国人労働者が多数居住している地域の一つに位置しており,アジア諸国を中心とした外国人の利用が多い.病院のある板橋区とその周辺の豊島区・北区・練馬区の4区に居住する外国人は,外国人登録をしている人だけでも平成3(1991)年には44,049人(東京23区全体の21%)にのぼり,その約80%がアジアの人々であった.特に板橋区は昭和62年から平成3年にかけて外国人登録者数が倍増しており,23区内で最も高い増加率を示している2),現実には,これに加えて,登録をしていない外国人が多数存在するものと思われる.

報告

地域・医師会・保健所が連携した地域健康づくりの新しい取り組み

著者: 竹中章 ,   川波由紀 ,   藤井久仁子 ,   南部由美子 ,   恒吉香保子

ページ範囲:P.359 - P.361

はじめに
 福岡市では老人保健法に基づく基本健康診査(以下,成人健診)を保健所および医療機関で実施している.私ども南区では,従来より医師会の先生方および地域の方々と連携,協力しながら健診受診率の向上と,地域健康づくりの充実を図ってきたが1),平成3年度より「新々南区方式」とよばれる医療機関での成入健診と,保健所による健診後の健康教育を継続的に行う独自の方式を実施している.
 地域健康づくりの新しいモデルとして,その概要と2年間の実績を報告する.

新しい保健・福祉施設

岩手県浄法寺町ほほえみセンター

著者: 澤田勝美

ページ範囲:P.364 - P.365

 これまで町民に対して保健部門は保健課で,医療部門は直営診療所で,福祉部門は町民課でそれぞれの枠の中で町民にサービスしてきたが,町民の声として保健・医療・福祉のサービスを手軽に受ける施設を1カ所,まとめて欲しいとの要望があり,また一昨年各市町村で策定した「老人保健福祉計画」に基づき事業を進めなければならないと考え,これまでバラバラに行って来たサービスを一体化出来ないものかと色々検討を重ねた結果,当町では平成5年度に計画していたデイサービスセンター,平成6年度建設予定の保健センターの二つの施設を合築したものを直営診療所の隣に建設したらどうかとの結論に達し,直ちに関係機関に働きかけ平成5年度に,この二つの施設を合築した「ほほえみセンター」を新築し,94年4月にオープンさせた.
 開所してから7カ月が過ぎたが,この施設のマンパワー体制は町の職員定数の関係上,所長・係長・保健婦2名・看護婦1名・栄養士1名と臨時委託職員(保健指導員)1名,デイサービスに従事する職員は,町の社会福祉協議会より6名の派遣職員,計13名の限られたマンパワーで運営している.

保健行政スコープ

コレラ流行と空港検疫業務について

著者: 淺沼一成

ページ範囲:P.366 - P.368

1.はじめに
 平成7年2月に入り,わが国のコレラ感染者数は大幅に急増した.その多くは,インドネシア・バリ島からの帰国者である.
 平成7年3月9日現在,コレラ患者数は218名である.実質1カ月余りという短期間のうちに,これだけのコレラ感染者数が確認されたのは,わが国の近年の防疫史の中でも異例のことであり,現時点でありながら,年別コレラ感染者数としては,戦後では昭和21年(戦後の引き揚げ期)に次ぎ,過去2番目の流行となっている(伝染病統計および検疫所業務年報による).

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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