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特集 少子化時代への対応
社会政策と出生率
著者: 織田輝哉12
所属機関: 1慶應義塾大学文字部人間料学 2前社会保障研究所
ページ範囲:P.379 - P.382
文献購入ページに移動近年,日本では合計特殊出生率が人口置き換え水準を下回って低下していくという状況が続いている.これによって,人口過剰に伴う問題は軽減されるが,老齢年金を初めとする社会保障の費用負担の問題や,労働力不足による経済力の低下などのデメリットも生じてくる.個人の選択の結果として社会的に望ましい出生率の水準が維持されないとすれば,出生率は公共財として政策的対応の対象となりうることになる.
しかしながら,子どもを生むということは,個人にとってきわめてプライベートな出来事である.このような個人の内面とかかわるような問題に対して他者が直接的に干渉することは,個人の自由な選択権を侵す危険性がある.よって,低出生率に対して何らかの対策をとるとしても,それが実際に出生率にどのような影響を与え,またどのようなコストを伴うかに関して,慎重な検討が必要とされる.
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