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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生59巻6号

1995年06月発行

文献概要

特集 少子化時代への対応

子育ては文化である

著者: 松岡悦子1

所属機関: 1旭川医科大学社会学教室

ページ範囲:P.403 - P.406

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 子育てについて書くとなると,どうしても自分の最初の子育てを思い出してしまう.それほど初めての母親にとって,最初の子どもの出現はショッキングで「だまされた思い」すらしたものだ.隣にいる生まれたばかりの子どもを見て「この人どこから来たんだろう」,「これを今から育てていくの?」,「私はとんでもないものを産んでしまったんじゃないかしら」と感じた出産直後の違和感.本に書かれてある「産後はゆっくり休養しましょう」という言葉を信じて,産後は寝て暮らそうと期待していた私は,赤ん坊が夜中にも起きると知って,まさかと思った.それなら,「産後はゆっくり寝られません」と書いて欲しかった.妊娠・出産までは生き物であれば放っておいてもできてしまうが,その後の育児は放っておくわけにはいかない,とても文化的なできごとである.なぜなら人はその社会・文化のなかで育ち,その文化を担う人になるのであり,育てるほうにしてもまわりと同じように,あるいは昔からやってきたように育てるからだ.女性は産めばたちどころに母性本能が芽生えて,赤ん坊を見ればたちどころに扱えるようになるのなら,育児不安やノイローゼは起こらないはずだが,現実には私も含めて最初の子育ては加減のわからないことだらけである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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