icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生59巻6号

1995年06月発行

文献概要

連載 保健活動—心に残るこの1例

“精神障害者が地域で暮らす”ということ

著者: 錦織智恵美12

所属機関: 1広島県呉総合福祉保健センター 2広島呉保健所竹原支所

ページ範囲:P.437 - P.437

文献購入ページに移動
 28歳の精神分裂病のNさんは,高校を卒業後家を出て働いていたが,7年前酒を飲んで暴れたことがきっかけとなり警察に保護され,自宅に戻った.その後仕事もせず家でぶらぶらと過ごしていた.家族は,本人の言動がおかしいのは憑き物がついているからと思い,祈とう所に通い自分たちの力で治そうと本人の面倒を見ていた.2〜3年たつうちに,入浴もせず家の中に引きこもり人との接触を断ち,幻覚妄想による独語や暴力がひどくなった.家族としても対応しきれなくなり平成4年11月,警察に相談し保健所を紹介されたことがきっかけでかかわり始めた.保健婦の家庭訪問や専門医との訪問などを重ねていくことで平成5年4月に入院治療を開始し,半年後の9月には退院,その後通院治療を続けていた.家庭が経済的に苦しいこと,病気に対する認識が本人・両親ともに不足していることで受診の遅れや服薬の中断などもあったが,主治医と連携をとりながら病状が悪化しないように,受診勧奨や病気の理解を深めてもらうよう訪問指導を重ねていた.Nさんが治療に至るまでの症状の激しい時期には地域の中では問題とされなかったが,入院治療も終わり自宅で社会復帰に向けて通院治療を始めて,つまり幻覚や妄想も薬でおさまって回復へとむかいだして徐々に社会に出て行こうとした時に,次のような問題が地域の中で起こった.それは94年の2月のことである.Nさんの家は小学校の通学路にあり,小学生とNさんは出会えばお互いに手を振り合うという形で顔見知りになっていた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら