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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生6巻1号

1949年07月発行

雑誌目次

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結核とストレプトマイシン

著者: 加藤勝治

ページ範囲:P.1 - P.3

 ストレプトマイシンは1944年Schatz,Bugie and Waksmanがグラム陽性竝びに陰性の細菌に對する抗生物質として發表したのであるが,間もなくFeldman and Hinshaw(1944)は,この藥劑を結核症に應用したので,世間一般の人々は,結核の療法にこれが特效藥であるかのような印象を與えるに至つたのである。その後多數の臨床試驗が,この抗生物質に對し行われたのであるが,主として結核性腦膜炎とか,粟粒結核とかいうような,多少死をもつて決定點と見ることが容易な症例のみが選ばれた。しかしながら,他の結核症殊に慢性の經過をとるような場合には,この特效藥の價値な判斷することが甚だ困難であり,結論的の斷言は許されないのである。
 この事状に鑑み,アメリカではハーヴアード大學の内科教授Keefer博士が,調査委員長となり,復員軍人行政團,陸海軍醫務部,合衆國衞生研究所,ツルドウ會治療委員會等の治驗例を調査したところ,約2,000名の結核患者に對し,ストレプトマイシンの效果が判定されるよう報告が得られたのである。最近日本占領軍總指令部は,これらの成續を綜説して,次のような覺書を,日本醫師會,および他の醫療機關に對し,發送した。即ち,(1)粟粒結核症患者には,ストレプトマイシンを使用することは望ましい。この種の患者では,使用中止後,約半數は生存し,また大部分の患者には,臨床的および,レ線的所見が消失する。

綜説

汚物清掃の現状と將來

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.4 - P.14

1.清潔第1
 私の恩師の戸田正三博士は,「清潔は衞生の無手勝流なり」というのが持論である。
 清潔(Sanitation)があらゆる衞生の根本であるという常識はたしかに學理のうえからもうなづかれるところである。

原著

生菌ワクチンの有効なわけの研究—變性生病毒によるデング熱の豫防接種

著者: 堀田進

ページ範囲:P.15 - P.19

 デング熱病毒はマウス腦を累代通過せしめられるとその性状に變化を來してくる。すなわちこれを人體に注射してもデング熱特有の症状を發せしめ得ないが,しかも注射後に強い免疫をのこすことができる。從つてかかる變性株を用いて有效な豫防接種を期待することができる。しかも,このような病毒をフォルマリンとか牛膽汁などを用いて不活性化すると免疫を與える力が著しくそこなわれる。これらのことはすでに報告した通りである(1)
 古くからワクチン材料として生菌を用うるのが有效であると信ぜられてきた。デング熱の場合についても一應そのような結果を示したようにみえる。何故そうであるのかという問題について1檢討を試みるため,以下の實驗を行つた。

最近の我國の人口動態

著者: 森福省一

ページ範囲:P.20 - P.28

 永い戰爭とそれにつゞく敗戰という我國の歴史的現實に影響されて,我國の人口は既に大きく變化し,さらに又變化しようとしている。敗戰の結果,國外にいた軍人邦人が故國に復員し,引揚げてきた。戰後婚姻は異常に多くなり,出生も又驚くべき數に達したが,一方死亡は大いに減少して戰後の新しい傾向を形成するにいたつた。このような人口の動きについて若干の觀察をこゝろみるものである。

腸チフス・パラチフス3種混合ワクチン豫防注射の際の注射方法と注射後のヴィダール反應との關係

著者: 倉石龍雄

ページ範囲:P.29 - P.33

 昭和22年7月川崎製鐵所に於て夏期防疫對策として,神奈川中央衞生試驗所製造にかゝわる3種混合ワクチンを全從業員に豫防注射したところ,第1回0.5 c.c.皮下注射により人によつて局所の腫脹,頭痛,發熱その他の副作用を來たし,長きは5日間以上にも及ぶ臥床を餘儀なくせられる者も見るに至つた。これは今回使用のワクチンはその菌量が從來のそれに比較して増加しているので,その副作用の多いのも止むを得ぬところであつたと思われる。
 しかしながらこのまゝ注射を續行せば,當時増産の必要に迫らるゝ當工場の生産にも影響するところ少なからずと思考され,以後試驗的に0.1 c.c.宛皮内注射による方法を行つたところ,副作用を或程度減少せしめることができたが,なお若干の副作用を訴える者も少なくなかつた。この0.1 c.c.宛皮内注射法は副作用を輕減せしめる目的で定められたものであるが(1),この實施に當つては本法と0.5 c.c.宛皮下注射法との間に注射後のヴィダール反應に幾何の差異を認め得るやを,基礎的に檢討しておくことは必要と思われるので,次の如き實驗方法によりこの點を追求し,ある程度の結果を得たのでこゝに報告する。

最近の乳兒死亡の動向

著者: 瀨木三雄

ページ範囲:P.34 - P.38

(1)乳兒死亡の動向
 昭和23年我國出生2709876にして,乳兒死亡166652,乳兒死亡率61.5(出生1000に付)である。大正8年(1919年)188.6の最高値を示した我國の乳兒死亡率は約30年間に約3分の1に低下したのであり,その減少傾向は順調である。尚昭和22年の我國出生數2,678,792にして乳兒死亡數205,360,乳兒死亡率76.7にして,昭和22年より23年にかけての減少は殊に著しい。

東京都「腸チフス」「パラチフス」罹患の統計學的研究

著者: 松田摩耶子

ページ範囲:P.38 - P.41

緒言
 關東大震災以後東京都においては,「腸チフス」「パラチフス」流行の著明な季節的異常分布が見られる。原則として夏季の流行病なる本病が,夏季のほかに冬季にも流行していることは美坂(1)が先に報告しているが,その後,山岸(2)の研究によれば此の現象が引續き認められている。かくの如き東京都に於ける「腸チフス」「パラチフス」の季節的罹患状態の異常變化が,最近如何に變化したか,或は同様な現象が作用しつつあるかを全國と比較考察した。

紹介

イギリスの社會保障制度

著者: 宮澤國丸

ページ範囲:P.42 - P.47

 英國においては,昨年7月5日以來,社會保障制度の全面的實施に這入つた。この制度は「ビヴアリッジ計畫」に基づいて立てられた所謂搖籃より墓場迄の廣汎なものであつて,その根幹をなす法律は,國民健康事業法(N.H.S.A.),國民保險法(N.I.A.),國民産業傷害法,家族手當法,國民扶助法及兒童法等であり,健康の保持増進を目的とするばかりでなく,死亡,傷病手當金,隱退,廢疾年金,寡婦手當金,失業手當金,兒童手當金等の諸制度を含むのである。その中最も注目を引いている國民健康事業法についてその概要を述べて見よう。

厚生行政のうごき

第5國會で生れた新しい厚生關係の諸法律

ページ範囲:P.48 - P.53

去る2月11日召集以來110日の長期にわたつて,波亂に波亂を重ね,4度會期を延長した末5月31日深更ようやく閉幕を告げた第5國會において,提出法案245件のうち217件が兩院を通過成立したが,このうち厚生省關係の立法は厚生省設置法をはじめ13件にのぼり,中でも優生保護法の一部改正については,再三にわたつて最も熱烈な議論や審議が鬪わされ,注目の的となつた。以下その13の新しい法律について

勞働衞生のページ

珪肺の調査—勞働衞生實態調査抄報〔2〕

著者: 黑田芳夫

ページ範囲:P.54 - P.55

1.金屬鑛山の珪肺
 金屬鑛山の珪肺は,すでに1932年以來の國際珪肺會議で取上げられた有名な職業病であるのに,我が國では全く頬かぶりで押通して來た。然し昨年遂に機熟して,國會で取上げ,勞働省がそれを引受けることになつた。これが爲に,昨年,東京,慶應,慈惠,東北の各大學に依囑して,レントゲン撮影機を持つた巡回檢診班を出し,その外鑛山にレントゲン設備を有つ所には檢診を要託し,主な鑛山52の坑内勞働者2萬以上の間接撮影と,4000枚の直接撮影を終つた。この結果はいろいろな角度から檢討され,珪肺對策協議會の名に於て正式に發表されるのも間近だから,發表後に又本誌上をかりてお知らせする。珪肺發生の病理,結核との親和性,治療又は豫防としてのAlO2微粉の吸入などの珪肺の本格的研究を目指す,國立研究所も栃木縣鬼怒川に近く開所,發足の豫定である。

海外ニユース

煙霧殊に亞硫酸ガスは結核發病の原因にならないか

著者: 松島

ページ範囲:P.56 - P.57

 日本の英字紙が北米ドノラの慘事を報じていたが,ライフ誌國際版12月6日號には其の詳細な記事が載つている。
 ドノラはペンシルバニア州の人口13,000の小さな町ではあるが,製鐵工場,亞鉛工場を有して居り,之等の工場や停車場から吐き出される黑煙とガスとで常に空は暗く,農作物や羊も煤で眞黑に染まり,亞鉛工場附近の土地には草1本も生えていない。又煙霧は低く垂れこむ爲に就寝時になつても,天井のあたりに煙の漂つているのが認められる程,煤煙の激しい地方であるという。

氣管支喘息の酸素靜注療法

ページ範囲:P.57 - P.58

 Markow氏等は最近氣管支性重症例に酸素の靜脈注入を實施して効果があつたと發表している。酸素の注入量は1乃至3階段を分ち3,000c.c.乃至22,000c.c.に上つた。發作を起すとすぐ注入を開始した。全例共5分乃至2時間に發作を輕減することが出來た。爾後少くも10日間位は發作が起らなかつた。8,000c.c.乃至22,000c.c.の酸素を注入した5例は4乃至6ケ月發作が起らずにすんだ。酸素注入は極めて徐々に行えば殆んど副作用は認められない。この爲めに200%市販酸素を含むZeigler裝置を使用し靜脈壓より僅に高い位の壓力で毎時600c.c.位の割合で2-17時間に亙り靜脈に注入するのが最もよい。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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