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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生6巻5号

1949年11月発行

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論述

世界保健機關(WHO)の第2回總會に出席して—ローマへの旅

著者: 山口正義

ページ範囲:P.253 - P.256

 世界保健機關(WHO)の第2回總會が去る6月13日から3週間,南歐の歴史の都ローマにおいて開催され,占領下にある日本を代表して連合軍總司令部公衆衞生福社局のジョンソン大佐がオブザーヴァーとして出席されたので,私はその技術顧問という資格で隨行した。
 最初は往路はアメリカ經由,歸路は印度經由の積りであつたが,出發前豫定を變更して往復共アメリカ經由空路によることになつた。

學校衞生特集

健康と教育の問題

著者: 内田早苗

ページ範囲:P.249 - P.252

 どうすればじようぶなからだになれるか,それにはどうすればよいかという問題を眞劍に考えるとともに實行するようになれば國民の衞生状態は大いに向上するにちがいない。
 最も遠廻りの樣に見えて最も早く效果の上る方法として教育が採りあげられるが,茲に健康教育至上主義が興つて來た所以もうなずける事である。

新しい學校保健計畫

著者: 風間又四郞

ページ範囲:P.257 - P.260

 日本の學校保健は歴史的には既に1881年に於て小學校教員心得の中に「身體教育は獨り體操のみならず校舍の清潔,採光,温度調節,大氣の流通に注意すること,生徒の健康を害する習癖に染まぬこと,また教員の健康保全に注意すること,體育に運動と衞生の兩面があること」等を示し1891年には學校設備準則,1894年には體育衞生に關する訓令,1897年には學校醫設置規程が公布され,やがて學校身體檢査規程,學校齒科醫設置規程,養護教論制度等が順次法規上に整備されて今日に及んでいるが實際には遺憾の點が多く明らかに過去の教育に缺陷のあつたことを語つている。過去の教育に於ては健康問題が精神的訓練の道連れとして體育扁重の一途を辿り眞實の學校保健は暗黑裡に虐待されて遂に半世紀の退歩を餘儀なくされたというべきであろう。
 戰後新らたに施行された教育基本法第1條(教育の目的)には「心身ともに健康な國民の育成を期して行われなければならない」と教育が健康に始まつて健康に終ることを示し,且つGHQから從來日本で使いなれていた學校衞生School hygieneを學校保健School healthと置きかえることが望ましいと勸告されたことは誠に意味の深いことゝ思われる。「健康」は從來の生物學的な意義を超えて新しく教育的な内容をもつて立ちなおり,それが戰後の民主的教育に嚴びしい反省と自覺とを切實に要求しているのである。

肢體不自由兒の療育

著者: 堤直溫

ページ範囲:P.261 - P.263

(1)
 肢體不自由兒とは高木憲次博士の定義によれば「四肢及び躯幹,即ち肢體の機能が不自由なだけでその智能は健全なもの」である。この定義で分かるように肢體不自由兒は智能は健全で,たゞその四肢が不自由なだけであるから,これに整形外科的治療をつくし,且つこれを適當に教育するときは生業能力を護得出來るのである。こゝに肢體不自由兒療育の根本觀念が存するのである。
 昔は不具という言葉が一般に使われ,不具は治らないとなつていて,從つて不具者は全く日蔭の生活を送る状態にあつた。然るにその後,整形外科學の進歩により,從來不治の烙印をおされていた不具者に對して幾多の新しい治療法が續々と現われ,今日に於ては不具は治療出來るという段階に到達している。それと同時に,治らないもの,悲慘なものという感じを受ける不具という言葉を廢して,高木博士の提唱によつて,今日では肢體不自由兒という言葉を使うようになつた。兒童福社法にも肢體不自由兒という言葉を用いている。

學校給食の要點

著者: 小田靜枝

ページ範囲:P.264 - P.266

目的意義
 現行學校給食の目的は,從來とりあげられてゐたように單に貧困救濟とか,虚弱兒童の養護とかの個々の觀點からではなく,これらすべての意味を包含した教育全般に役だつ施設として新しくとりあげられたものであるが,そこには二つの觀點がある。
 一つは保健的意義であり,一つは教育的意義である。

學校身體檢査成績表はどれくらい信用できるか—その1.近視發生率について

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.267 - P.269

(1)
 毎年文部省から發表される身體檢査の成績は外部のものは一般にこれを金科玉條として信奉しているが,これに直接關與している當事者たちは,あまり信をおいていないものが相當に多い。
 文部省主催の會合において某縣學校衞生技師は,これはほとんど信頼するにたらぬものであることを經驗を通して告白したことがあるという。

資料

勞研に於ける工業中毒の研究

著者: 久保田重孝

ページ範囲:P.270 - P.279

 勞働科學研究所に於ける職業病の研究は昭和4〜5年に紡績工業の靜脈瘤,難聽等を對象として開始され,その後,鉛中毒,珪肺,ニコチン中毒等について個別に行われて來たが,昭和13年に職業病研究室が設けられてから漸く本格化した。
 この頃,既に日本産業の情勢は,重工業,化學工業,電氣通信工業等の發展,新興によつて昭和初年の状態は一新されており,職業病の發生状況も亦著しく複雜化した。即ち,一方に於て高熱作業の熱中症,他方に於て化學工業の諸工業中毒が問題となつて來たのである。爾來,勞研の職業病研究室に於ては主に工業中毒の,衞生並びに生化學研究室に於ては高熱作業の研究が進められたのも,この樣な社會的要請に應えたものに外ならない。

腸チフス豫防注射に依る接種結核症兒童の観察/酸化エチレンガス中毒に就て

著者: 佐川一郞 ,   岩崎龍郞 ,   富田守中 ,   田村政司

ページ範囲:P.280 - P.285

諸言
 昭和21年5月兵庫懸下某國民學校に於て腸チフス豫防注射を實施したとき,注射局所に人型結核菌に依る接種結核症を多發した。その原因的考察に就ては,第22回日本結核病學會に厚生省濱野豫防局長の發表があつたが,その後我々が觀察した臨床的統計的事項の大樣を報告する。

原著

新潟縣中郷村に於ける最近の乳幼兒死亡に就いて

著者: 宇留野勝正

ページ範囲:P.286 - P.289

 著者は昭和20年11月以來新潟縣中頸城郡中郷村にある日曹二本木病院に勤務し,當村の乳幼兒に對し種々の保健指導を行いつゝ,その罹病及び死亡に就いて出來るだけ詳細な觀察をつゞけて來たのであるが,その結果に就いていささか報告しておきたい。

トラコーマの家族感染

著者: 關亮

ページ範囲:P.289 - P.291

 私は昭和23年5月より10月に亘り横濱市の小中學校5校の兒童,生徒のトラコーマ檢診を行い,更にそれに附隨してトラコーマ患者の一部家族の檢診をも行う機會を得たのでその成績を報告する。

農村衞生の母—かなえられる死の悲願

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.292 - P.300

(1)女子專門學校の設立
 今年5月26日,私は19時20分發の秋田行き急行で上野驛を發ち,奥羽本線で弘前へ向いました。
 同行は日大教授の野邊地博士と,文部省の湯淺博士の3人,かねてよく知り合いの間なので何かと話がすゝむうち,日はとつぷりくれはてゝいました。その間出入りする乘客も少く,案外すいた車内は閑靜で,たゞ單調なレールの音が久しぶりに出る私達の旅愁をそゝるのでした。

衞生行政のうごき

強制優生手術と人權,他

ページ範囲:P.301 - P.304

 厚生省公衆衞生局ではかねて,優生保護法第4條の規定による強制優生手術(精神病など惡質な遺傳を斷種する)の實施について,
(1)強制優生手術にあたり手術を受ける者が,これを拒否した場合でも,なお手術を強制することができるか?

勞働衞生のページ

物理的障害と結核性疾患—勞働衞生實態調査抄報(5)

著者: 黑田芳夫

ページ範囲:P.305 - P.306

1.難聽
調査對象:造船,製鋼等の重工業6工場(廣島)
鋲打工137,穿孔工60,製罐工58,填隙工16,板金工12,壓機工4,その他雜工249,合計536名

海外文献

アメリカ産業の衞生福祉方策—(Medical News Letter, J. A. M. A.)

ページ範囲:P.307 - P.309

 アメリカ商工業の勞働者に對する福祉方策は,近年非常に發達し政府勞働統計局,各會社,台衆國平等生活保證組合(The Equitable Life Assurance Society)等の調査で各種の報告がある。
 勞働協議會によつて健康保險,災害保除,生命保險,養老年金等を定めて,病氣に罹つた場合の醫療費や,家族の生活を保證している。通常此の費用の負擔を増額させる組合運動が活溌になつて來ている。かうした方策に極めて大きな貢献をしているLever brothers會社社長Charles Luchmanは次の如く述べている。「勞働者の福祉方策に對する會社の負擔は出來るだけ少くしたいと考えているような經營者は社會及び自己に對して不實な人間であつて,勞動者をして後顧の憂なく働かせるようにする必要がある。勞働者は單なる勞働者でなく,家庭の支柱であつて,勞働者もかうした施設の意義をわきまへておかねばならない。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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