調査報告
在宅脳卒中後片麻痺者の自立度と介護者の負担との関係
著者:
日高正巳1
池田耕二2
武政誠一3
嶋田智明3
所属機関:
1石川病院
2武部整形外科リハビリテーション
3神戸大学医学部保健学科
ページ範囲:P.814 - P.817
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高齢化の進行に伴い,在宅での寝たきり老人の増加が問題となっている.厚生省が平成元年12月に発表した「高齢者保健福祉推進10か年戦略」いわゆるゴールドプランの中に,寝たきり老人ゼロ作戦がある.この作戦誕生の背景には,単に長生きするだけでなくいかに人間らしく生きるか,その生活の質を問題とするようになったこと,さらに保健・医療はもとより福祉対策の面からも総合的に老人の日常生活動作(以下ADLと略す)能力の維持・向上を図ることにある1).しかしながら,現在の在宅高齢障害者に対する対策は,家族を介護者として組み込んで考えているものがほとんどであり,家族の存在抜きにしては成り立たない.また,介護力の低下は,在宅高齢障害者のADLの自立を阻害する一因子である.そのため障害者に対する対策とともに,介護者に対する対策も実施しなければ,在宅介護の継続が困難となる可能性が高い2).われわれは,これまでに病院や施設を退院・退所し在宅に戻った障害者に対し,そのADL能力がどのように変化しているのか,ADLの自立を阻害しているものは何かなどについて研究を進めてきた3,4)
今回,在宅脳卒中後片麻痺者の実態を把握するとともに,介護者の負担を踏まえた援助活動を実施する参考のため,在宅脳卒中後片麻痺者を対象に訪問調査を実施した.その結果を介護者の負担を中心に分析し,介護者の負担と在宅脳卒中後片麻痺者の自立度との関係について,検討を加えたので報告する.