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60巻記念シリーズ・21世紀へのメッセージ
核兵器廃絶への願い
著者: 大平昌彦1
所属機関: 1岡山大学・衛生学
ページ範囲:P.154 - P.155
文献購入ページに移動20世紀は二度の世界大戦を経験した.特に第二次大戦は次のような事実によって特徴的であったといえよう.すなわちわが国は大東亜戦争という名の許に,アジア各地に植民地支配的軍事行動を展開,多くの非戦争員に多大の被害を与えた.南京の人民大虐殺などはその典型である.またナチのユダヤ人集団虐殺は常識では考え及ぼない非人道的行為であった.さらに原爆という新しい爆弾によって,広島・長崎では二十数万の非戦闘住民が一挙に抹殺された.これらの事実は,広く一般住民を巻き込んだという意味で,戦争というイメージを全く変えていったといってよい.
さて,核兵器論争については,その犯罪性と正当性について日米両国民に大きな隔りがある.私は妻とともに1988年(以下'88とする)第3回国連軍縮総会(SSD Ⅲ)に参加したが,その折,国連前から五番街を通り,セントラル・パークまでのデモ行進に参加した.われわれが横断幕を掲げて「核戦争反対」と叫ぶと,沿道の弥次馬から返ってくる言葉は“Remember Pearl Harbor”であった.この度のスミソニアン博物館のエノラ・ゲイ問題でも同様であり,国民的感情が先に走り,核兵器の本質論には至らないのである.
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