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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生60巻6号

1996年06月発行

文献概要

特集 感染症の新たな動向

感染症の迅速診断の技術開発

著者: 高野徹1 前田育宏1 網野信行1

所属機関: 1大阪大学医学部臨床検査診断学教室

ページ範囲:P.394 - P.397

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分子生物学の進歩と感染症診断法の新しい展開
 DNA,RNAなどの核酸を取り扱う分子生物学は少し前までは特殊な技術を持った人が特殊な設備の整った施設で行うものであった.ところが最近その特殊性がしだいに薄れ,今や核酸を扱う実験系は,臨床のラボで既に行われてきた蛋白質を扱う実験系と同様なレベルでより簡便に行うことができるようになった.
 その最大の原因としてあげられるのは1985年のSaikiらによるPCR(polymerase chain reaction)の開発である.PCR法とは,数コピーのDNA断片を数時間のうちに数百万倍に増幅する技術である(図1).DNA断片を増幅するために必要なものは,断片の両端20塩基程の情報と鋳型となるDNA断片のみであるため温度のコントロールをするサーマルサイクラーさえあればだれでも数時間以内にかなりの量のコピーを手に入れることができる.また遺伝子の増幅に大腸菌を利用した遺伝子組換え操作が必要とされないため,P2実験室など特殊な設備を必要としない.PCRの実験過程は反応系が微量である(10-100μl)ことにやや難があるが,基本的には試薬を混合して機械に載せるだけであり,だれでも一回経験すればできるようになる.最近ではPCRを行うサーマルサイクラーを含むPCR関連機材の低コスト化が進み,多量の検体を処理してもさほどコストがかからなくなってきている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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