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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生61巻7号

1997年07月発行

雑誌目次

特集 大学の公衆衛生50年

札幌医科大学公衆衛生学教室の歩み

著者: 三宅浩次

ページ範囲:P.453 - P.456

公衆衛生学講座の誕生と人事
1.北海道での衛生学開始
 北海道における大学での医学教育・研究は,北海道大学から始まる.大正15年(1926年),医学部において第一期の卒業生を輩出してから,すでに71年になる.衛生学教室設立に1926年毛利高一教授が赴任したが,翌年退官され,当時,フランス留学中であった井上善十郎教授が赴任したのは1929年のことである.

東北大学公衆衛生学教室の歩み

著者: 久道茂

ページ範囲:P.457 - P.460

初代・瀬木三雄教授時代
 東北大学医学部の公衆衛生学講座は昭和25年度に創設され,同年7月に瀬木三雄博士が初代教授に就任し,46年3月に停年退官するまで約21年間講座を主宰した.瀬木教授は数々の業績を残されたが,その主なものは次のとおりである.

群馬大学公衆衛生学教室の歩み—社会のニーズに応えて

著者: 鈴木庄亮

ページ範囲:P.461 - P.464

 群馬大学は旧七帝大医学部,旧六大学医学部に続いて,第二次大戦期に軍医養成のために創られ終戦後も存続した八医学専門学校が発展した医学部(いわゆる新八)の一つである.したがって衛生学の歴史は旧大学では百年前後だが,公衆衛生の歴史は前記のどの大学も約50年と新しい.群馬大学はこの50年にわずか3人の教授を持ったに過ぎない.50年を振り返って,以下にこの3教授の時代とその教育・研究活動を忠実に跡づけてみる.

大阪大学公衆衛生学教室の歩み

著者: 多田羅浩三

ページ範囲:P.465 - P.469

 大阪大学医学部公衆衛生学教室は,昭和22年7月15日の勅令126号をもって設置された.衛生学教室の梶原三郎教授が併任として教授に就任されたのは昭和23年10月31日である.そして初代の専任教授として関悌四郎先生が就任されたのは昭和26年9月1日である.教室の発足からすれば今年はちょうど50年目にあたる記念の年であるといえる.
 わが国の大学医学部の公衆衛生学教室は戦後,設置された部門である.基礎の他の教室に比較すれば新しい部門であるが,戦後のわが国の社会の大きな発展,変貌の中で,大学の公衆衛生学教室の歩んできた歴史は極めて起伏に満ちたものとなっている.

九州大学公衆衛生学教室の歩み—公衆衛生と疫学研究

著者: 古野純典

ページ範囲:P.470 - P.473

講座の沿革(表1)
 公衆衛生学講座の呼称は昭和29年から使われているが,講座の歴史は昭和15年12月10日付で新設された民族衛生学植民衛生学講座に始まる.初代教授は衛生学講座を担当していた水島治夫教授である.水島教授は大正12年に東京帝国大学医学部を卒業し,京城帝国大学教授(衛生学予防医学講座)を経て,昭和15年から衛生学講座(明治37年設置)を担当していた.
 二代目の倉恒匡徳教授は昭和19年九州帝国大学医学部卒業で,水島教授の指導を受けたあと,米国国立がん研究所での約5年間の研究生活を経て,水島教授の後任として昭和35年から20年あまりにわたり公衆衛生学講座を担当した.

視点

大学の公衆衛生

著者: 荒記俊一

ページ範囲:P.450 - P.452

公衆衛生の起源と学術活動
 公衆衛生(Public Health)は,産業革命期の英国で誕生し,英米を中心に発展してきた学術である1).その語源をたどると,1847年の英国における公衆衛生法(Public Health Act)の成立が歴史上のエポックになっている.
 公衆衛生の主要な専門領域として,以前より疫学,医学統計学,産業保健,環境保健,予防医学,地域保健などがあげられている.さらに最近の日本では,国際保健,社会福祉,行動医学などの新しい領域が注目されている.これらのうち,前者の伝統的な領域はすべて産業革命後期の英国にルーツをたどることができる.例えば,世界の産業保健(Occupational Health)の発展の端緒となった工場法(Factory Act)は,リーズの医師C.T.サックラーの実証研究書“The Effects of Arts, Trades, and Professions, and of Civic States and Habits of Living, on Health and Longevity”の出版が,当時の英国社会の指導的な貴族で国会議員であったシャフツベリーらを動かして立法化に至ったものである.

連載 暮らしに潜む環境問題

ダイオキシン・2

著者: 宮田秀明

ページ範囲:P.474 - P.478

6.環境汚染事例
 毛髪は生活環境や職場環境の室内空気汚染を反映する最適な指標試料である.都市ごみ焼却施設従事者の毛髪中のダイオキシン濃度は対照者に較べて,PCDDで2.7倍,PCDFで4.9倍,Co-PCBで3.7倍,総濃度で3.5倍も汚染が高い(図6)15).さらに,維持・補修のために焼却炉内で作業する従事者は運搬業務従事者よりも汚染が高く,とくにCo-PCB汚染が著しい.これらの結果は一般環境に較べて焼却施設内環境がより重度に汚染されていることを示唆する.事実,焼却施設の作業環境内の空気は一般環境よりも汚染が重度であることが,廃棄物研究財団の調査でも明らかにされている.したがって,MSW焼却施設の職場環境を調査し,その結果を基に汚染軽減のための環境改善を実施することが必要である.
 埼玉県所沢市三富地区では小規模な産業廃棄物焼却炉が稼働しており,主として廃材を焼却している.焼却残灰中のダイオキシン類濃度は6,100と2,900pgTEQ/gと極めて高い(表4)16).一方,焼却施設から100〜900mの地点における土壌中の(PCDD+PCDF)濃度は96〜220pgTEQ/gであり,焼却施設からの汚染影響が低い大阪,奈良,和歌山,福岡県下の都市域よりも顕著に汚染を受けていた.したがって,焼却施設から発生したダイオキシン類が大気経由で周辺地域を汚染していることが明らかとなった.

市町村保健活動と保健婦

<座談会>箕面市総合保健福祉センターを拠点とした保健福祉活動・2

著者: 池本恭子 ,   逢坂悟郎 ,   関口洋太郎 ,   松尾高子 ,   宮川純子 ,   多田羅浩三

ページ範囲:P.479 - P.483

職種間の連携による訪問
 多田羅 前回におうかがいしたように,箕面市の訪問指導は一定の歴史があるようですが,現在の訪問指導はどのように行われていますか.
 宮川 訪問指導で他の市町村と違っているのではないかと思う点は,初回の訪問に原則として必ず福祉のケースワーカーが同伴することで,必要ならば理学療法士あるいは作業療法士も同行していることです.ですから,初回訪問で健康状態のみでなく家庭の状況なども把握でき,どのようなサービスを提供する必要があるかなど,その後の計画を立てることもできます.

利用者のホンネ・タテマエ

すこやか地域作り活動をとおしての社会参加

著者: 舞木和弘

ページ範囲:P.484 - P.485

活動の概要
 白山地区の住民が年を取っても障害をもっても,生き生きと安心して暮らしていける地域を作ることを目的として,「白山区すこやか地域作り推進委員会」が作られたのは,平成6年4月です.その経過は大越町が国の「地域保健特別事業」を受け「すこやか地域作り事業」のプロジェクトチームが役場に作られ,その事業を白山区で行って欲しいとの話が,平成5年12月にプロジェクトチームと白山区の各種団体の役職者を集めて行われ,その後プロジェクトチームとの数回の懇談会や勉強会を得て発足しました.筆者は,当時白山青年会の会長をしていた関係でこの活動に参加しました.この活動は今までの活動とは違って人それぞれの意識を変えていこうという活動なので,すぐに結果が見えてくるものではなくとても難しく感じました.それとともにやり甲斐を感じたものでした.委員会の最初の活動は,まず自分たちが勉強をして,この活動の意義,目的を理解しようというところから始められました.そして,月1回程度の会合のほかに,住民に活動を知らせるために平成6年6月の地区のスポーツ大会時に垂れ幕を作り掲示するとともに,「いきいき白山」と名入れしたタオルを配り,7月にはポスターを作成して配布しました.住民の意識を調べるために平成6年6月にアンケート調査を実施して,その後意識の変化を見るために平成8年7月に2回目のアンケート調査を実施しました.

福祉部門で働く医師からの手紙

介護職・看護職のメンタリティ

著者: 牧上久仁子

ページ範囲:P.486 - P.488

 わたしの職場の保健婦さんたちが取り組んでいるテーマのひとつに「老人虐待」があります.
 まだあまり表面化していない問題ですが,彼女たちが訪問看護婦さんやヘルパーさんから「痴呆のおばあちゃんの手足に転んだりぶつけたりしたにしてはおかしいアザを見つけたんだけど,どう思う?」というような相談を受けたことがきっかけで始まりました.虐待を疑われた個々のケースとかかわる中から,共通にみられる家族間の人間関係の複雑さ(彼女たちは“家族の風通しの悪さ”と表現することが多いのですが…)に気づき,家族を一つのシステムととらえて介入していらっしゃる遠藤嗜癖研究室の遠藤優子先生を講師にお迎えして事例検討を中心とした継続的な研修を行ってきました.

精神保健福祉—意欲を事業に反映するために

地域資源のアセスメント—戦力分析・1

著者: 後藤雅博

ページ範囲:P.514 - P.517

 平成7年に精神保健法が改正され「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に変わった.昭和62年の改正以来の地域精神医療促進の方向性は変わらず,福祉領域も加わったことでなおその方向性は加速されている.また精神保健においても地域保健法の成立により精神保健の領域に市町村の役割がより明確に規定されることとなった.そのため,以前にも増して今後の精神保健福祉の有効な発展のために地域評価の実際的方法が必要とされてきている.
 これから2回にわたって地域評価つまり効果的な地域プランづくりのための精神保健福祉の戦力分析について述べて行きたい.1回目は主として評価の視点について,2回目は実際の評価と今後の試案について述べる予定である.

活動レポート

「健康教室」10年間の総括—公開講座を継続させる工夫

著者: 池田耕二 ,   武部恭一 ,   武政誠一 ,   岩本雅浩

ページ範囲:P.495 - P.499

 患者自身の病態に関する理解度の低さや,様々な不安などが原因で,治療を中途半端にしたり,転医を繰り返すケースは少なくない.その結果症状を悪化させたり,慢性化に至るケースも意外と多い.そのため,患者自身が自分の疾患の原因や,病態,治療内容を十分理解することは重要である.われわれも日ごろより,院内に健康や病気に関する新聞,雑誌の切り抜き記事を掲示したり,ビデオ放送で医学情報を提供するように努めている.
 また,われわれは公開講座として「健康教室」を“患者自身に自分の疾患に対する正しい知識を身につけてもらうためと,地域住民の健康に寄与する”という目的で10年間にわたり,実施してきた.

学校保健と連携した地域保健活動・3

ライフステージを通じた健康づくりの推進に果たす保健所の役割

著者: 津田芳見 ,   東郷絹江 ,   桑原優子 ,   井上和臣

ページ範囲:P.489 - P.493

 平成9年4月より地域保健法の実施に伴い,母子保健,栄養改善は市町村に委譲され,母子保健と老人保健については一貫した施策がより生活者に身近なところで展開されることになった.
 しかし,わが国の保健行政の組織は地域保健行政,学校保健行政,産業保健行政を担当する省(国)や部局(都道府県)が異なるという,いわゆる“縦割り行政”であり,各行政相互の連携はほとんどない(図1).

調査報告

自治体職員の健康管理の実態と問題点

著者: 福田吉治

ページ範囲:P.500 - P.502

 平成3年事業場統計調査(総務庁)によると本邦の従業者約6,000万人のうち,(他に分類されない)公務に従事する者は約178万人,地方公務に従事する者は約123万人にのぼる.また,経営組織別(11分類)にみた場合,国・地方公共団体が経営組織となる事業所の従業者は約500万人(うち地方公共団体は約375万人)である.しかしながら,労働者の多くを占める公務員の健康問題について,産業保健と地域保健の両者からも論議される機会は非常に少ない.ここでは,若干のデータをもとに公務員,とくに自治体職員の健康管理について,法的な側面を中心にして検討した.

報告

英国における循環器疾患予防のための栄養摂取に関する指針の変遷—1984年と1994年の指針の比較検討

著者: 大村栄 ,   桑守豊美 ,   鏡森定信

ページ範囲:P.503 - P.509

 成人病は遺伝的要因に加えて加齢現象および環境要因が複雑に絡んだ結果である.それが発症する過程において,長期にわたる各人の生活習慣,すなわち環境要因が大きく影響する疾患である.成人の主な循環器疾患である脳血管疾患や虚血性心疾患についてもこのことは例外ではない.Forsdahl1)は,青年期の生活状況がその後の成人期の虚血性心疾患の発症に強く関連することから,危険因子について過去にさかのぼって論ずる必要があることを強調している.
 英国では,すでに1974年に虚血性心疾患の予防を目的に,小児から成人に至る健康者を対象とした栄養に関する指針が発行されている.その後,10年ごとにこの主旨の報告書が発行され現在に至っている.われわれは,すでに1974年と1984年の指針の比較検討を行い報告した2).1994年には,その後の循環器疾患と栄養に関する研究の成果をふまえた指針があらたに発行された.疾病構造,人種などの違いのために英国の栄養指針をそのままわが国に当てはめることはできないが,その内容は今後のわが国の循環器疾患予防にとっても有益なものと考えられる.また,10年の間隔をおいて発行された栄養指針の内容を比較検討することは,今後のわが国の栄養指導を展望するに際しても資するところが少なくないものと思われる.

弘前市内幼稚園ならびに保育園の砂場のToxocara属線虫卵汚染状況

著者: 中村秀雄 ,   三田禮造 ,   尾崎俊寛 ,   神谷晴夫

ページ範囲:P.510 - P.513

 本来はヒトを固有宿主としない寄生蠕虫類の幼虫が人体内に取り込まれた場合,幼虫のまま人体内を移行・寄生し,高度の好酸球増加や場合によっては思いもかけない強い臓器障害が引き起こされることがある1).これが幼虫移行症(Larva migrans)といわれるもので,特別な治療法のないものが多く,発症には免疫学的機序も関与しているとされている2).幼虫移行症を引き起こす線虫類には数種類が知られているが3),それらの中でも,犬蛔虫Toxocara Canisまたは猫蛔虫Toxocara catiによるヒトのトキソカラ症は,症例数が少ないとはいえ4),十分な注意を払う必要のある人畜共通寄生虫症である.
 最近,犬・猫蛔虫による幼虫移行症の感染源の一つとして公園内の砂場における虫卵汚染が問題になり,注目を集めている4〜6).公園の砂場は,とくに幼・小児の遊び場所としてかけがえのないものであるが,しばしばイヌやネコの糞便によって汚染されており,感染能力のある犬・猫蛔虫卵を含んでいる可能性がある.また,砂場は不特定多数の幅広い年齢層の人々が使用する憩いの場でもあるので,寄生虫や細菌,その他の微生物などに対する衛生面での配慮は重要な問題である.今回,筆者らは弘前市内の幼稚園,保育園の砂場の犬・猫蛔虫による汚染状況を知る目的で調査した.それと同時に,これらの施設関係者が犬・猫蛔虫を含めた砂場の衛生・予防について,どの程度関心を持っているのかについてもアンケート調査を実施したので,その結果も集計した.

追悼

丸山博先生のこと

著者: 佐々木直亮

ページ範囲:P.518 - P.518

 本誌公衆衛生(60巻2号)に「21世紀へのメッセージ」として「私の遺言書」を書かれた丸山博先生が本当に亡くなられてしまった.
 新聞には元大阪大学医学部教授の丸山博(まるやま・ひろし)氏が平成8年10月10日86歳で病院で亡くなられていたと15日になって小さく報道されただけだったが,衛生学にとって惜しい方を送ってしまった.

保健行政スコープ

健康危機管理の実施要領

著者: 厚生省大臣官房厚生科学課

ページ範囲:P.519 - P.524

「厚生省健康危機管理基本指針」の策定及び「厚生省健康危機管理調整会議」の設置について(平成9年4月3日)
1.背景
 「医薬品による健康被害の再発防止策について(報告書)」(平成8年7月1日)及び「医薬品健康被害再発防止策及びエイズ治療研究等の推進状況」(平成8年9月17日)において,基本方針の策定及び危機管理調整会議の設置の方針が示された.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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