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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生61巻8号

1997年08月発行

雑誌目次

特集 新しい地域保健体制における保健婦活動

五所川原保健所の保健婦活動

著者: 田中幸子

ページ範囲:P.532 - P.534

 ナイチンゲールの著作から「人間にとって,きれいな空気はいかに大切であるか」を学びとったのは,いつのことだったのか思い出せないが,保健所は空気や水・食品など生活の基本的なところをしっかりと守ってくれる機関である.感染症や慢性疾患をもつ人への対応や日常生活の回復,よりよい健康づくりへと施策を進めている.最近の10年間は関係機関との連携や海外交流を視野に入れた施策が伸びているように思われる.ここでは青森県の保健所保健婦の現状を管内人口約17万人の五所川原保健所で触れた部分に限って述べ,将来を展望する.

長崎ゆめの木プラン21を育てよう—住民も職員も元気の出る仕事を目指して

著者: 小林サチエ

ページ範囲:P.535 - P.536

現場は燃えている
 いよいよこの春から新しい地域保健法下での活動が始まった.東京都でも多摩地区の保健所は17保健所・14保健相談所が12保健所に統廃合され,23区では7区で統廃合・再編成が行われ,名称も保健センター,保健相談センター,保健福祉センターなどに変更,組織改正もあり,心気一新意欲的な活動を始めている.それらの一部が東京都看護協会発行の先駆的保健活動1)の中で報告されている.地域に密着したユニークで今後の発展が楽しみな報告が多いので参考にして欲しい.

豊川市における保健婦活動

著者: 井田貴子

ページ範囲:P.537 - P.539

 地域保健法の制定や母子保健法の改正に伴い豊川市では,平成9年度の母子保健事業に関する業務量は,1.6倍に増加している.また,このような状況に対応するため4月からは,市の組織も新体制を組み保健事業を推進している.

池田市の保健事業の取り組み

著者: 藤田恵子

ページ範囲:P.540 - P.543

 本市は,大阪市の都心部から北西へ約15km大阪府の北西部に位置し,面積は22.11km2で人口10万人の衛星都市である.
 現在,本市は11人の保健婦が在職し,うち9人が訪問指導,機能訓練を除く老人保健事業と母子保健事業に従事している.また残り2人は,平成8年度に設立された財団法人池田さわやか公社(保健福祉公社)に出向し在宅ケア部門(訪問指導,機能訓練,介護支援センター)を担っている.

保健事業をとおして地域づくりへ

著者: 松本恵子

ページ範囲:P.544 - P.546

 大阪市では,地域保健法実施の体制はより地域に近い保健所を目指して現在検討中であるが,政令指定都市であるため保健活動は従来とは変わらずすべてを包括する.また,どのような体制下にあっても保健婦に求められるものは,地域に立脚した幅広い視点と一歩踏み出す保健活動の実践である.
 大阪市の保健婦は,その時代のニーズに応じた保健活動に直面してきた.それは,昭和52年から保健婦が精神保健福祉相談員(当時は精神衛生相談員)として精神科医療へのかかわりや,小規模作業所発足など社会復帰への活動を精力的に展開してきた.また,高齢対策では,平成3年から保健所の枠を越えて,保健婦,福祉職員,区役所職員が一丸となって高齢者地域支援システムを構築してきたことなどがあげられる.今年4月からは,一部保健,福祉の統合による総合相談窓口を開設し,保健婦はその第一線で活動している.

住民とともに歩む健康づくりから健康なまちづくりへの取り組み—自己実現のできるまちづくりを目指して

著者: 吉田ユリ子

ページ範囲:P.547 - P.549

 地域保健法の施行に向け,大分県では平成6年度より看護協会を中心に,県下一斉に保健所単位でヘルスプロモーションの視点に立った,住民参加による保健活動を実施しており,保健婦として「健康なまちづくり」に取り組まなければという気運が高まりつつあります.
 7年度先駆的保健活動推進事業では,モデル町を庄内町に選定し,「庄内町民だれでもいきいきと住めるまちづくり」を企画し,町役場職員や住民代表とともに実際に取り組み,行動変容から新しい町づくりを進める過程を県看護協会の先駆的保健活動のモデル事業として推進,県下保健婦職能委員が参加支援し,参加した職能委員が県下の仲間への波及を図ってきました.さらに,8年度には,前年度庄内町で学んだ健康なまちづくりのノウハウを生かし,庄内町(2年目),武蔵町,安心院(あじむ)町とモデル町を拡大,住民が健康づくりを楽しみながら自らが実践し,継続できるような支援活動を展開してきました.このような取り組みにより,県下保健婦の動きも,健康なまちづくりを目指して,「じっとしてなんかいられない!」,「地域保健法を今,われわれの戦力に」と今,大きく変わろうとしています.

21世紀を担う保健婦(士)像

著者: 平山朝子

ページ範囲:P.550 - P.553

 保健婦(士)は,保健・福祉の行政サービスを直接的に担う看護専門職である.地域保健法により,この実施責任が市町村に移行し,保健婦(士)の配置の重点は,市町村におかれた.また,市町村では,福祉関係各法の改訂によって保健・福祉行政サービスの拡充が迫られている.したがって,市町村保健婦(士)の活動の形も多彩となり,小規模町村では,保健婦(士)が一つの部署で総合的に対応しているが,規模が大きい自治体では,保健行政部門に加えて福祉施設や福祉行政部門など多様な部署に配置されている.このように,市町村内部においても,保健婦(士)の働く場の様態は,現実的に大きく変わってきている.しかも,一方では住民の生活要求は多様化・個性化し,提供するヘルスケアサービスは,官民双方を含め多様な選択肢で対応する高度なものが求められている.
 本稿の課題は,21世紀を担う保健婦(士)像を追究することにある.保健婦(士)というのは,基本的には看護専門職であり,保健・福祉行政サービスの枠組みの中で,その専門機能が国民生活に不可欠な役割をどれだけ果たし得るかということが重要な課題となる.したがって,課題に迫るには,保健福祉行政サービスが21世紀の住民の健康と福祉を支えるために,何をしなくてはならないのかという点と,もう一つは看護専門職というのはいかなる専門性をもって住民の健康と福祉に貢献できるのかという点を明らかにしなくてはならない.

保健婦活動における専門性

著者: 金川克子

ページ範囲:P.554 - P.557

 地域保健法の平成9年度からの全面施行に向けて保健所や市町村に所属する保健婦の活動にもそれなりの変化が必要になってきている.
 改めて,地域保健法への改正の基本的考え方をみると1),・急激な人口の高齢化と出生率の低下,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,地域住民のニーズの多様化,食品の安全性・ごみ・地球環境などの生活環境問題への住民意識の高まりなどに対応し,サービスの受け手である生活者の立場を重視した地域保健の新たな体系を構築する.

保健所保健婦と市町村保健婦の連携

著者: 宮崎準子

ページ範囲:P.558 - P.562

 地域保健をめぐる環境の変化に対し,21世紀を展望した地域保健法が制定され,本年4月完全実施となった.
 地域保健の主体が保健所から市町村へと移り,保健所は抜本的に改正されることになる.保健所現場にいる保健婦は,永年培ってきた保健所における保健婦活動から抜けきれず,新たな方向性も見いだせずに困惑しているのが現状である.

新しい地域保健体制と保健婦への期待

著者: 平野かよ子

ページ範囲:P.563 - P.570

新しい地域保健体制下での保健所,市町村
 平成6年に制定された「地域保健法」が今年の4月1日から全面施行され本格的に新しい地域保健体制に入っています.
 これからの健康問題は住民に身近なところでの対応が必要になるため,市町村の役割が非常に重視され,行政の責任で行う保健サービスの実施主体という方向で整理されました.そしてその機能が十分に発揮できるように,都道府県レベルの保健所は専門的・広域的・技術的な拠点になることが地域保健法の特徴です.

視点

新しい保健婦像

著者: 望月弘子

ページ範囲:P.530 - P.531

 平成9年4月地域保健法の完全実施,また平成8年4月厚生省から「看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会中間報告書」が公表された.このことは,保健婦に求められている力量がより明確に打ち出され,保健婦としてのより高い資質が求められていることを示唆している.
 これは,国民のニーズが少子高齢社会のなかで大きく変化し,また多岐にわたっていることが反映された結果である.地域保健行政の基本は,住民の健康を守るために,地域のサービス供給資源を可能なかぎり有効活用しながら,システムを構築し住民主体の組織的な問題解決をはかることにある.保健婦は,地域保健の一翼を担う専門職であり,地域住民全体を対象にとらえながらライフサイクルにおける総合的な健康獲得のために専門性を発揮する看護職である.

連載 トピックス

水道水によるクリプトスポリジウムの集団感染—塩素耐性原虫にどう対応するか

著者: 井関基弘

ページ範囲:P.573 - P.577

 昨年6月,埼玉県越生(おごせ)町の町営水道がクリプトスポリジウムという原虫で汚染され,約1カ月間に町の人口の約70%という大規模な集団感染が発生した.英国や米国でも水道水による集団感染が1980年代の半ばから相次いで報告されている.とくに,1993年に米国のミルウォーキーで起こった事例では,下痢患者数は3週間で40万3千人,入院患者数は2,400人に達した.エイズ患者などの免疫不全患者も汚染されたため,1995年末までに約400人が死亡したという.
 通常の浄水処理や下水処理過程で使用される塩素消毒ではクリプトスポリジウムのオーシストを殺滅することは全く不可能なので,浄水が何らかの原因で汚染されると短期間に大規模な集団感染が起こることになる.また,本症に有効な治療薬がまだ開発されていないので,健常人は自己の免疫力による自然治癒を待つしかないし,エイズ患者などが感染した場合は激しい水様下痢がいつまでも持続し,しばしば致命的になる.

暮らしに潜む環境問題

自動車排出ガス汚染

著者: 前田和甫

ページ範囲:P.578 - P.581

1.自動車排出ガスの主な物質と人への影響
 この問題は環境白書にいう「大都市圏等への負荷の集積による問題への対策」に該当する.大都市周辺に人・物が集積し交通,物流の需要が増大・集中した結果である.問題の内容について個条的に述べ,その対策,解決の方向にも触れていきたい.
 現在国内の道路を走る車はガソリン車とヂーゼル車が主体である.いずれも石油系の燃料によって走るので大量のCO2を発生する.CO2は今日の地球環境問題上の温室効果ガスの主体とされているもので,最近の推計によると,人為的な発生源の大半は化石燃料(石炭,石油,燃料ガス)の使用によるもので,わが国ではその中の20%が運輸部門,さらにその85%程度(すなわち全体の17%程度)が自動車からの寄与によるとされている.

福祉部門で働く医師からの手紙

老人保健施設はこんなところ—老人保健施設の実地指導から

著者: 松下彰宏

ページ範囲:P.582 - P.584

 老人保健施設は,皆さんご存じのように,病状安定期にある老人などに対し,医療ケアと日常生活サービスを提供することによって,老人の自立を支援し,家庭復帰を目指すことを目的として,昭和61年の老人保健法の一部改正により創設された施設です.入院治療不要な寝たきり老人や痴呆性老人が必要な介護・看護やリハビリテーションを提供してもらっています.
 制度ができてからまだ日は浅いのですが,ゴールドプランの達成年次に向かって多くの地域ではその整備のピークを迎えています.量的に整備されてくると,次は質的な問題が問われるようになります.

市町村保健活動と保健婦

<座談会>箕面市総合保健福祉センターを拠点とした保健福祉活動・3

著者: 池本恭子 ,   逢坂悟郎 ,   関口洋太郎 ,   松尾高子 ,   宮川純子 ,   多田羅浩三

ページ範囲:P.586 - P.589

 多田羅 市町村の公衆衛生の場で私がいつも強調していることは,予防も含めてヘルス事業をどう展開するかということです.
 これまでの2回で,総合保健福祉センターの総合相談窓口,老人保健施設やリハビリセンターの状況,および地域に出向く活動などについておうかがいしました.

研究ノート 在宅高齢者の地域支援システム

ケアプランの効果の研究—平成8年度厚生科学研究高齢者在宅ケア地域総合支援システム研究事業

著者: 貞本晃一

ページ範囲:P.590 - P.596

 平成6年度からの3年間にわたって,北海道内の6保健所ではMDS-HC/CAPs(Minimum Data Set-Home Care/Client Assessment Protocols)を用いた在宅高齢者などのアセスメントやケアプランの作成で保健の現場での具体的課題に関して検討を重ねてきました.その間には地域保健法の基本指針の中の「ケアコーディネーション」の機能や公的介護保険法案などが示され,地域ケアにおける市町村や保健所,そして保健婦のあり方が大きな節目にさしかかっていることを実感させられるような時代の動きが起こっています.このような中で,保健所・市町村の保健婦など,地域保健の担当者は積極的に高齢者などの在宅ケアに関与すべきであり,さらに個々のケースのケアプランから見いだされたケアニーズに関する情報の蓄積により,地域に不足する在宅ケアサービスやケア資源などを明らかにして地域プランにつなげる,いわゆる在宅ケアの総合的支援システムの確立に積極的に取り組むべきだと思います.そのための方法論としてMDS-HC/CAPsは有用な道具となり得ることを3年間の研究で確信しました.最終年度である8年度の研究を終えるに当たり,その研究の概略について報告するとともに,MDS-HC/CAPsが市町村や保健所の地域保健の現場で活用されることを願ってやみません.

精神保健福祉—意欲を事業に反映するために

地域資源のアセスメント—戦力分析・2

著者: 後藤雅博

ページ範囲:P.602 - P.605

 前回は近年の精神保健福祉対策の変化を背景に,地域の戦力分析を行うための基本的な方向性と大まかな全国レベルでの地域差を理解する必要性を述べた.
 今回は市町村の精神障害者保健福祉対策の活動レベルを一定の指標を通して評価することを実際に新潟県を対象として行い地域の差を把握する方法を検討するとともに,諸条件,活動状況などに違いのある他県の結果と比較し,指標の有効性と,さらに検討すべき点について考察する.

活動レポート 住民参加型の保健活動・7

静岡県竜洋町の保健活動(その1)

著者: 黒田裕子 ,   塩沢京子 ,   岩永俊博

ページ範囲:P.597 - P.600

 地域住民の健康なあるべき姿を描き,その姿を実現するための条件を考える方法で住民とともに町の保健計画を策定し,計画に基づく実践も住民とともに行っている竜洋町の保健活動を紹介する.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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