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連載 暮らしに潜む環境問題
松枯れ対策としての農薬散布
著者: 中根周歩1
所属機関: 1広島大学総合科学部
ページ範囲:P.46 - P.49
文献購入ページに移動林野庁をはじめとする行政サイドでは,松枯れはマツクイムシ(マツノマダラカミキリが運ぶマツノザイセンチュウ)が枯らすと説明してきました.ですから,ザイセンチュウを運ぶマダラカミキリを農薬で駆除すれば松枯れは止まる,と断言してきました.とくに,「松くい虫被害対策特別措置法」を1977年に最初に国会で成立させるにあたって,当時の林野庁長官は「5年もあれば松枯れは終息できる」と言い切ったほどです.しかし,その後3回にわたる「松くい虫法」の延長,すなわち,この20年間の大量の農薬散布にもかかわらず,松枯れは終息するどころか拡大し,その後も高い被害率(被害材積)が継続していったわけです(図1).
さて,ザイセンチュウが松枯れの原因とする根拠は,多い場合で約半数の枯れた松から,ザイセンチュウが検出される.そして,健全な松でもザイセンチュウを接種すれば,かなりの頻度で松が枯れる,という実験結果です.
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