文献詳細
視点
がん検診の意義について考える
著者: 多田羅浩三12
所属機関: 1厚生省医療保険福祉審議会老人保健福祉部 2大阪大学医学部公衆衛生学教室
ページ範囲:P.394 - P.395
文献概要
わが国は,昭和36年に国民健康保険体制が達成されて以来,すべての国民はなんらかの保険制度によってカバーされている.このような医療保険制度の高い普及率が,わが国が世界一の平均寿命を達成している最も大きな要因となっていることは明らかである.この医療保険制度は便利な制度ではあるけれども,なんらかの症状があって医療機関を訪れるというところからすべての対応が始まるという,特性を有している.医療機関を訪れ,医師から初めて疾病の存在を指摘されたとき,こんなことならなぜもう少し早く診察を受けなかったのかと,思う人は決して少なくないはずである.
この点の認識に立って,わが国の国民健康保険制度では,戦後の早い時期から,「予防にまさる治療はない」とのキャッチフレーズのもとに,保健施設活動という仕組みのなかで保健婦を設置したり,住民の健康診査を行って,住民の疾病の早期発見の機会をつくるための事業を実施してきた.それらの地域保健活動の貴重な実績をもとに,昭和57年の老人保健法のなかに保健事業の実施が規定されることになったのである.
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