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特集 地方分権の推進について考える
地方分権の推進
著者: 橋本勇1
所属機関: 1東京平河法律事務所
ページ範囲:P.612 - P.615
文献購入ページに移動地方分権というのは,当該事案の発生している場所の近くで,それにかかわる諸問題を処理する仕組みのことである.この意味では,その処理の主体が誰であるかは問われず,それが国の出先機関であろうと,地方公共団体であろうとかまわないことになる.ここでは,権限や権力の集中を排除し,それを分散すること自体に意義があるとされるのである.この考え方は,「権力は腐敗する.絶対的権力は絶対的に腐敗する」という政治格言に凝縮されている.
国の省庁再編の一環として,建設省,農林水産省および国土庁を統合することが考えられているようであるが,その権限が強大になりすぎるという批判に対して,出先機関に権限を大幅に委譲するという言い訳がなされているのは,国の出先機関による地方分権の1例である.そして,ここでは,その権限を行使する者がどのようにして選ばれ,誰に対して責任を負うのかの議論は意識して避けられている.単に,権力や権限の分散ということだけに着目すれば,江戸時代の幕藩体制の方が現在よりも数段上であり,これも立派な地方分権制度だということになるが,住民との関係においては,この幕藩体制における藩(大名)における権限の行使と国の出先機関における権限の行使との違いは必ずしも明確ではない.
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