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シンポジウム 第17期日本学術会議環境保健学研連主催公開シンポジウム 「内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の影響はどこまでわかっているか」
内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)問題の現状と課題
著者: 森田昌敏1
所属機関: 1国立環境研究所地域環境研究グループ
ページ範囲:P.908 - P.911
文献購入ページに移動環境ホルモンとは環境中に存在して(すなわち外因性の)ホルモン様の作用を示す物質のことである.このような物質として女性ホルモン(エストロジェン)作用を示すものが,かなり以前より知られており,環境エストロジェンとか,植物エストロジェンというものが報告されている.前者の代表的な物質が,農薬DDTの代謝物であるDDE,後者の代表例は豆科の植物に多いイソフラボン類である.一方,私たちの体においてエストロジェンばかりでなく,非常に多くのホルモン類が,生体の維持に用いられているので,その対象をエストロジェンから,ホルモン全体に広げて,環境ホルモンという言葉(概念)が生まれたわけである.この言葉に対して,内分泌学を専門とする学者からは,内因性の物質であるホルモンという言葉の定義を混乱させるものであるという批判があるが,言葉として日本の社会に定着しつつあることもあり,ここではあえて環境ホルモンという言葉を使うことにする.
ある種の化学物質が内分泌系に作用して生殖への悪影響を及ぼしていることに関しては,野生生物の世界ではかなり古くから指摘されてきた.1960年代までに多用されたDDTによって,はげわしの卵殻がうすくなり,ふ化率が低下したというのはそのような例である.その後,この種の知見が集積し,そのような影響例と指摘されているものに表のようなものがある.
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