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文献概要
特集 飲酒の行動医学
現代社会と飲酒習慣の形成
著者: 大本美彌子1
所属機関: 1東邦大学医学部衛生学教室
ページ範囲:P.228 - P.233
文献購入ページに移動草木の果実や穀類の発酵により自然現象的にアルコールが人々に認識され,これを飲用する飲酒行動の起こりは200万年前にさかのぼる.人々の生活の中に仕事が分化され産業が起こると酒造産業も起こり,神酒であったものがだれでも飲めるようになった.その後,英国に始まる産業革命(第1次工業化),20世紀初頭の第2次工業化とそのたびごとに過酷な労働条件下にある人々の飲酒への依存がある.第二次世界大戦後の経済復興期,それに続く経済隆盛期には石油エネルギー,高分子化学,エレクトロニクス,航空機・自動車を中心とする第3次工業発展の,それぞれ社会経済急上昇を期した時期において第2次産業興隆のための人口の都市集中と,過酷な労働条件と生活環境劣悪のために,飲酒習慣も劣悪となり諸法の制定を見ることとなった.さらに情報革命やバイオテクノロジーなどの新産業の発展など,産業の急激な変貌は労働環境や生活環境上に影響をもたらし,人体の生理に適合し難く,その逃避手段として飲酒が選ばれた.酒類濃度や飲料嗜好,飲酒パターンなども影響され,その折々の飲酒の社会への影響が大であったことは警察官職務執行法,精神衛生法の制定の経緯からも理解されよう(図1).
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