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連載 西生田の杜から
専門職
著者: 足立紀子1
所属機関: 1日本女子大学社会福祉学科
ページ範囲:P.432 - P.433
文献購入ページに移動昨年の夏起きた毒入りカレー事件についてどうしても気がかりなことがある.あの日テレビのニュースで第一報を聞いた時,とっさに「小さな町でそんなに沢山の患者が一斉に発生したら,胃洗浄が的確にできるだろうか? 医療機関はいくつあるのだろうか?」という素朴な疑問を家族に話したことを思いだす.反射的なものだが「まず胃洗浄を…」という看護職の勘が言葉になったのだが.
しかし,真夜中の記者会見で当地の保健所長はキッパリと「食中毒です」を何度も繰り返していた.そしてその言葉を頼りにどの医療機関でも,抗生剤の点滴を中心とした治療を続けたというのである.直接現場にいたわけでもない者が勝手に想像してものを言ってはならないと思うが,どう考えてもあの発症の状況は食中毒の経過とは思えない.ある週刊誌によると,記者会見に居合わせた記者の何人かは「劇毒物ではないか」と食い下がったらしいが,断固として食中毒説を変えなかったという.口に入れて数分で吐いたり痙攣を起こすなどそのことだけで胃洗浄最優先の状況ではないのか? ずいぶん昔に,救急病棟と中央手術室の臨床経験しかない素人のような私でも,まさに救急のイロハという気がする.
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