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特集 女性への暴力
法律家から見たドメスティック・バイオレンス
著者: 林陽子1
所属機関: 1ミネルバ法律事務所
ページ範囲:P.553 - P.557
文献購入ページに移動私が「女性に対する暴力」という言葉を身近に初めて聞いたのは,1985年に国連が開いたナイロビ女性会議(第3回世界女性会議)のNGOフォーラムに参加した時である.当時の日本の女性運動の関心対象は,雇用や教育における平等にかなり限定されていたが,ナイロビでは強姦や売買春,妻への殴打,武力紛争下での女性の人権といった,非常に広い文脈で女性の人権が語られており,ここでの議論に接したことによって,自分のその後の弁護士活動に一つの方向を与えられたと思う.
翌1986年から,私は日本キリスト教婦人矯風会がこの年に設立したシェルター「女性の家・HELP」で法律相談を受け持つようになった.HELPには東南アジア出身の女性たちの賃金未払いや売春の強要などの相談が数多く寄せられていたが,日本人男性との関係破綻に伴う相談も非常に多かった.ドメスティック・バイオレンスに関する相談を受けるようになったのはこの時からであるが,その被害がアジア女性だけではなく,日本の女性にも深く進行していることに気が付くのにはしばらく時間を要した.
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