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介護保険の実施を目前にして市町村ではその事業計画づくりに大わらわの状況となっている.厚生省は介護保険事業計画と併行して「高齢者保健福祉計画」の策定を行うよう通達しているが,筆者の印象では介護保険一色で保健福祉計画には手が回らないというのが実情のようである.ここで保健福祉計画策定の状況を取り上げるのは,介護保険一色の世情の中で,保健のあり方が真剣な論議もされないままに見過ごされている感があるからである.こうした傾向は,地域保健法改正を受けて各地で行われた「地域保健のあり方」に関する検討に始まっている.筆者は当時ある自治体のこの種の委員会に参加していたが,論議の的は「保健所の統廃合」と,地域保健として高齢者福祉分野に対してどのように協力連携をなすべきかの2点であった.つまり自治体レベルでの地域保健のあり方とは,高齢者福祉の支え手としてどうあるべきかの論議が主体で,正面から地域保健そのものをとらえ直すということにはならなかったように思う.元来は,医療・保健・福祉という表現があるように,それぞれに独自の領域と相互に連携すべき領域とが公平に論議されるべきであることは明らかである.たしかに整備の遅れている高齢者福祉がいま最も検討されるべき事情はあるとはいえ,保健福祉計画という保健と福祉の合体すべき計画においても,保健はほんの申しわけ程度の記載しかされていないという印象は筆者一人のみのものではないだろうと思う.
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