特集 性の公衆衛生
性の健康
著者:
池上清子1
所属機関:
1国際家族計画連盟(IPPF)
ページ範囲:P.175 - P.180
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1994年に開かれた国際人口開発会議(ICPD-International Conference on Population and Development)は,マクロの人口問題に取り組むにあたり,ミクロレベルの個人の性の健康とそれを自ら選択・決定する権利という新たな視点を提示した.リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖の健康)とリプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)である.馴染みにくい言葉ではあるが,基本的な概念は性と生殖の健康を「統合的」にプライマリ・ヘルス・ケアを通して推進することにあると言えよう(図).採択された「行動計画」は2015年までにすべての人に対するリプロダクティブ・ヘルス・ケア(注1)の提供を目標と定め,各国政府にその実施を求めている.また,このパラダイムシフトは単に身体的な健康のみならず,これを保障する社会的な側面(女性のエンパワーメント,性暴力や性に関する個人の自己決定権など)にも光を当てることになった.
昨年には「行動計画」の実施状況を見直す会議がICPDプラス5として国連主催により開催された.ここではどのように若者を巻き込みながら彼らに対して効果的にリプロダクティブ・ヘルスを提供できるかに議論が集中した.ユースの問題が焦点となったのである.ユースが次世代として重要な役割を担っていることに加えて,各国がユースへの取り組みに苦慮していることをうかがわせる場面でもあった.