連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・3
アメリカのたばこ対策と日本人の喫煙率
著者:
ホスラー晃子12
所属機関:
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
ページ範囲:P.200 - P.201
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アメリカのたばこ対策の歴史はかれこれ40年近くになる.先月号で触れたように,1964年に発表された,公衆衛生局長官の喫煙と健康に関するレポートで,たばこと肺がんとの関係が明らかにされたのが,その発端とされている.そのレポート発表後,直ちに政府機関のたばこ対策連絡委員会が設置され,アメリカ医師会はたばこを「健康有害物質」と表明,ある生命保険会社はノンスモーカーの掛け金割引を打ち出す,など各界の反応は非常に早かった.翌年には議会がたばこパッケージの健康警告文の義務化を可決,1966年にはアメリカ国内のすべての紙巻きたばこに警告文がっくようになった.さらに1971年にはやはり議会の決議により,たばこのテレビ,ラジオコマーシャルが全面的に禁止された.受動喫煙の危険に関する公衆衛生局長官のレポートは1972年に登場しており,その翌年には国内線機内での禁煙席の設置が義務化されている.ちなみにアメリカの連邦政府施設内で,初めての全面的な禁煙が実施されたのはそれから15年後の1987年,病院内での禁煙が制度化されたのは1992年だが,それでも日本よりはかなり進んでいるといえる.
州レベルの対応を比べてみるのも興味深い.公共施設での初の分煙を実行したのはアリゾナ州で,1973年のことである.1975年にはミネソタ州が室内のクリーンエア法を可決して,全米初の公共施設の分煙を制度化した.