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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生64巻4号

2000年04月発行

雑誌目次

特集 地域における生活廃棄物対策

現代の生活廃棄物対策

著者: 鈴木庄亮

ページ範囲:P.220 - P.224

廃棄物のない生活:ジャワの農村
 筆者は,1980年代にインドネシアのジャワの三つの農村に住み込んで,生活環境・行動・健康について合計約1年間フィールド調査をした.
 ジャワの農村は島嶼熱帯の,稲作を中心とする高度農耕で,2千年以上続いた文字どおり持続可能な人間生態系(sustainable human ecosystem)であり,この時点でも成熟した人間環境系の美しさをなお保持していた.

一般廃棄物焼却による有害化学物質対策とその削減

著者: 香山不二雄

ページ範囲:P.225 - P.228

 ここ数年,産業廃棄物の処理業者が集中する所沢市でダイオキシン汚染の問題が一般市民レベルでよく知られるようになった.その後,行きすぎたマスコミ報道もあったが,全国レベルでゴミ処理の過程で発生する環境汚染に対する意識の高まりが起こった.現在の一般家庭廃棄物処理では,大部分が焼却処理が行われ減量化され最終処分場で埋め立て処分がなされている.その燃焼過程でダイオキシンが産生されることが広く知られるようになった.そのため政府は,ダイオキシン対策関係閣僚会議において平成11年3月30日にダイオキシン対策推進基本方針を公表した.ダイオキシン問題は将来にわたって国民の健康を守り環境を保全するために対策をいっそう強化しなければならない問題である.これまでの廃棄物対策は,環境保全の立場から重金属の土壌汚染問題や,リサイクルの推進のため資源ゴミの分別収集などの対策がとられているのみであったが,ダイオキシン問題の出現のためにこれまでとは違った対応をしなければならない事態となった.これらの視点で現在の問題について検討してみたい.

大阪市における生活(一般)廃棄物処理の現状

著者: 福永勲

ページ範囲:P.229 - P.233

 わが国では,環境問題にかかわる基本的なことは「環境基本法」という法律で定められ,また,基本法の精神に基づいて「廃棄物の処理と清掃に関する法律」が定められ,廃棄物処理にかかわる法規制を行っている.その基本法の具体化のために制定された環境基本計画1)では,四つのキーワードの一つとして「循環」を定め,生産,流通,消費,廃棄という社会経済活動の全段階を通じて環境への負荷を少なくする循環を基調とする社会経済システムを実現することを目標としている.そのために「廃棄物」のジャンルでは,1)発生抑制,2)リユース・リサイクル,3)エネルギー回収,4)適正な最終処分の順に努力しなければならないことになっている.
 さらに,わが国では,廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分類され,法律,政令に定められた汚泥,ばいじんなど19種類の産業廃棄物は収集,運搬,中間処理から最終処分まですべてに排出者が責任を持たなければならない.それ以外の廃棄物は一般廃棄物に分類され,その収集・運搬,中間処理,最終処分は市町村にその責任があることになっている.しかし,この一般廃棄物にはオフィスのごみや繁華街の食堂ごみなど事業系廃棄物で必ずしも生活廃棄物とはいえなものも含まれており,データ的に正確な生活廃棄物のみに限ったものは必ずしも存在しない.

埼玉県所沢市の生活廃棄物処理

著者: 山本次郎

ページ範囲:P.234 - P.236

 昭和25年11月に市制を敷いた所沢市は,今秋創設50周年を迎える.近年急速に都市化が進み,平成11年11月末には面積72.0km2,人口325,467人,世帯数123,267となった.
 図の市北部,東部の産業廃棄物(以下,産廃)焼却施設,周辺7カ所の公営一般廃棄物(以下,一廃)施設などの存在と発生するダイオキシン類による環境汚染,曝露による健康影響は,市のごみ処理問題に付随する大きな課題である.平成11年2月のダイオキシン類汚染野菜騒動などの報道は,結果的に国家的な廃棄物処理施策を推進し,また,厚生省,環境庁,県・市のダイオキシン類実態調査では異常高値も測定されず,市は「みんなでなくそうダイオキシン,ゼロに向けてのまちづくり」をスローガンに掲げて,循環型社会の形成を目指し,ごみ処理問題に真剣に取り組んでいる.

三重県における一般廃棄物対策としてのRDF化構想

著者: 余谷道義

ページ範囲:P.237 - P.240

新しい硲合計画「三重の国づくり宣言」
 21世紀を目前にした平成9年11月に,三重県のこれからの進むべき方向や,目指すべき姿を明らかにした,新しい総合計画「三重の国づくり宣言」を策定しました.
 「三重の国づくり宣言」では,「環境先進県」を目指すなかで,将来にわたって発展を続けていくことのできる社会をつくるため,ごみの固形燃料(RDF:refuse derived fuel)によるエネルギー利用などの先導的な取り組みを行うとともに,地域に根差した人と自然とのかかわりを再評価し,住む人,訪れる人に魅力的な地域づくりを住民と行政が一体となって進めていくことにしています.

ダイオキシン問題における保健部局のかかわり

著者: 大原賢了

ページ範囲:P.241 - P.244

 茨城県は,県南部地域にある一般廃棄物処理施設の周辺住民の血液中から高濃度のダイオキシン類が検出されたとする研究発表を受け,平成10年12月同施設周辺住民の健康調査を行った.本稿では,この健康調査の実施経緯や結果などを紹介することにより,ダイオキシン問題における保健部局のかかわりについて述べる.

一般廃棄物処理の現状と関連するリサイクル制度の動向

著者: 泉真

ページ範囲:P.245 - P.248

 廃棄物の処理を巡っては,累次の法改正が行われてきたにもかかわらず,不法投棄の増大などの問題は解消されていないことから,適正処理を確保し,廃棄物処理に対する信頼を回復するために,所要の法改正に向けての作業が進められているところである.
 しかしながら,今回の法改正作業は,主に産業廃棄物の適正処理の確保を目指したものであり,これについては別の機会に論じられることと思われるので,本稿では,一般廃棄物の処理の現状と最近の取り組み,特に容器包装リサイクル法などリサイクル関連の動きを中心に紹介し,また今後の課題についても触れることとしたい.

循環型社会への転換とドイツの廃棄物処理

著者: 川名英之

ページ範囲:P.249 - P.254

 自民,自由,公明の3党連立政権が2000年を「循環型社会元年」と位置付け,今国会提出を目指して循環型社会への転換を図るための法案づくりを進めている.これに対し野党の民主党は「拡大生産者責任」をより徹底させた「省資源・廃棄物管理法案」(仮称)の作成を急いでいる.この二つの法案づくりで,モデルとされているのがドイツの「循環経済・廃棄物法」である.ドイツは1994年に同法を制定,1996年に施行し,これを基に世界に先駆けて循環型社会の創造へ向けて第一歩を踏み出した.そこで,ドイツの「循環経済・廃棄物法」の内容と,これによる循環型社会づくりの考え方を同法制定に至る経過を追いながら明らかにし,現状や日本が参考にすべきことなどについても報告する.

視点

専門性と公衆衛生−21世紀に向けての地域保健

著者: 大井田隆

ページ範囲:P.218 - P.219

 新聞の経済欄を見ると現在の景気を反映して,いかに日本経済を活性化させるかの記事が多い.そのひとつにベンチャー企業の育成に関心が注がれており,通産省もその支援に努めている.ベンチャー企業の反対の言葉を捜すならそれは総合商社ではないだろうか.最近,その総合商社の雲行きが怪しくなっている.「ラーメンからミサイルまで」の代名詞を持つ看板を下ろしはじめており,得意分野で効率経営をしなければ生きていけない時代になってきた.その一方で企業だけではなくサラリーマン個人にも「なんでも屋」からの脱皮を促しており,専門性・技術性のあるサラリーマンになって,リストラ時代を生き延びることを勧めている(読売新聞,1999年8月1日).しかし,このような記事がこの経済不調時に掲載されること自体,いかにわが国は専門性・技術性を評価してこなかったのかをよく表していると思われる.経済が好調時であるなら“Japan as No. 1”と言ってみたり,もう世界から学ぶものはなく,日本式のやり方が世界を制したと感じるのかもしれない.実際そうであった.
 もともと,専門性を重視する考え方は18世紀に自由主義経済思想を完成させたアダム・スミスの国富論1)の中に見られる.彼は1人の人が作るピンの生産量は分業によってさらに増大することを証明し,「分業は,労働の生産量を増進させる最大の原因である」と述べ,産業革命を支える思想的背景となった古典的経済学の基礎を築いたのである.

トピックス

鼎談「介護保険時代」における市町村保健婦の役割・2

著者: 岩室紳也 ,   藤内修二 ,   中川昭生

ページ範囲:P.255 - P.260

専門職と連携手腕
(64巻3号よりつづく)
 岩室 専門職の一つの問題点は自分たちが学んできたことだけに固執して,そこから広がらない.地域の住民が一所懸命地域づくりをやっていますが,今のところ専門職がなかなか主導的な役割を果たせない.つまり,地域づくりをまとめていく場合には,話し合いや根回しも必要でしょうし,自分たちで一定の方向性を持ち,そこを目指したいのだということを説明し,それが理解され連携がとれたとき,システムづくりがうまくいくのだと思うのです.専門職はそのあたりがちょっと弱いような気がしています.

アニュアルレポート・2000

衛生学の動向

著者: 能川浩二

ページ範囲:P.261 - P.263

 日本衛生学会は,会員3,000人を擁し70年の歴史を誇る伝統ある学会である.主要な会員は大学関係者であるが,行政や民間の研究部門に所属する研究者も参加している.研究分野は,地域保健,職域保健,健康管理・増進・教育,環境,食品,衛生行政・統計,有害物質など広範囲にわたっており,社会医学的視点からの研究が進められている.現代は,疾病の予防,健康増進,環境汚染の防止とより良い環境を求める環境問題の解明についての社会的要求が極めて強く,衛生学を学ぶ者にとってやりがいのある時代となっている.しかし,そのような人材を養成し,また研究をする重要な場である医科系大学では,公衆衛生学と衛生学講座の統合が行われ,2講座から1講座への流れが見えつつある.遺伝学がすべての疾病の鍵であるという研究の流れのなかで,社会医学的発想を持つ学問は,大学内の評価(論文数とインパクトファクター)に適さずに,このままの状況では,専門分化のいっそうの進行の下で弱体化するおそれがある.衛生学会では,今後の衛生学の発展のための方策を検討している.衛生学雑誌での各研究者の意見の発表,衛生学公衆衛生学教育協議会の活動,学会の活性化のための学会賞の設定などの方策である.いずれにせよ,社会の必要性に応じた研究,教育を進展することが衛生学の発展につながるであろう.第69回を迎えた衛生学会総会の内容を要約して伝えることにより,衛生学の現在の状況と課題を展望したい.

産業衛生学の動向

著者: 櫻井治彦

ページ範囲:P.264 - P.267

 産業衛生学は社会医学の一つであり,社会・経済状況の動向によって大きく影響を受ける.近年の労働者を巡る環境の変化は極めて急激なものがあり,産業衛生学も研究の量と質の急速な向上を示しつつ,21世紀に向けての変革の途上にあるといえる.この項では日本産業衛生学会の最近までの推移,昨年5月に筆者が学会長を務めた第72回日本産業衛生学会の内容,および今後の労働衛生研究のあるべき姿を検討している「21世紀の労働衛生研究戦略協議会」の検討経過について紹介したい.

公衆衛生学の動向—健康確保のための社会的施策の展開

著者: 小澤秀樹 ,   三角順一 ,   青野裕士 ,   青木一雄 ,   斉藤功 ,   池辺淑子

ページ範囲:P.268 - P.271

1900年代の締めくくりの年
 1999年は1900年代の最後の年として,その締めくくりを考えたい.1995〜97年にかけて公衆衛生行政上にそれまで懸案の重要ないくつかの出来事があった.らい予防法の廃止,薬害エイズの国の責任表明,O 157大腸菌感染症の大流行,水俣病賠償訴訟の決着,地域保健法の施行である.初めの3項目は1999年4月に感染症新法の施行により締めくくりとともに,再出発となった.これまでの伝染病予防法とその他の伝染症関係の法律が廃止されて,100年ぶりに新法となったものである.水俣病は民主主義の社会となって初めての公害病であり,公害病として認定,拡大防止の遅れ,国および企業の責任,賠償など,数多くの深刻な問題を提起している.環境汚染は特定の企業の責任はもとより,国,自治体の行政対策の遅れ,国民一人一人の意識改革の不足から,環境ホルモンなどの環境有害化学物質が注目されることとなった.さらに,社会防衛の考えを基にして進められた伝染病予防対策から生活習慣病にかかわる,いわば個人の責任が大きいとされる慢性疾患に対して進められてきた施策が,高齢化の進行につれて重要な疾患となり,これまでの施策の評価と新戦略への転換を迫られる時期となっている.介護保険の2000年4月発足という具体的目標に対して,1999年は陣痛の苦しみの年であった.

連載 あなたにもできる調査研究—事例をもとに・1【新連載】

現場における調査研究の意義

著者: 多田羅浩三

ページ範囲:P.272 - P.278

 平均寿命世界一の社会は,最も多様な健康状態の人たちの生活を包摂している社会である.公衆衛生の実践は日々の生活の中にある人々の多様な健康状態を基盤とし,対象としてすすめられる.そのような人々の現実の生活,現場から出発するという伝統の中で公衆衛生は育ち,発展してきた.人々の現実の生活,現場に学ぶことが公衆衛生のすべてであるといっても過言ではない.その「学ぶ」という作業が,「調査研究」と呼ばれているのではないだろうか.そうであるとすれば公衆衛生の実践はまさに,現場における「調査研究」によって支えられているといえよう.
 わが国では昭和26年には新しい結核予防法が施行され,この年には昭和10年以来,わが国の死因の第1位を続けてきた結核が第2位となり,脳血管疾患が第1位となった。以降,結核による死亡率は減少を続け,脳血管疾患は昭和55年まで1位であったが,人々の生活スタイルの改善,あるいは降圧剤の普及などがあってようやく昭和56年に2位となり,がんが1位となった.一方,乳児死亡率は,昭和22年には76.7(出生千対)であったが,昭和55年にはほぼ10分の1の7.5となり,世界のトップグループに入った.

疫学 もう一度基礎から・4

疾病頻度の測定(3)—相対危険と寄与危険

著者: 中村好一

ページ範囲:P.279 - P.282

■ポイント■
1.曝露と疾病発生の関連の大きさは曝露群と非曝露群の疾病頻度の比である相対危険で観察
2.寄与危険は曝露群において真に曝露によって増加した疾病頻度

「健康日本21」と自治体・1【新連載】

「健康日本21」の基本的な考え方

著者: 佐栁進

ページ範囲:P.283 - P.285

 「21世紀における国民健康づくり運動」,いわゆる「健康日本21計画」は,一昨年の10月に公衆衛生審議会の承認のもとに,「健康日本21企画検討会」および「健康日本21計画策定検討会」が設置されて以来,昨年8月に計画の総論(案),11月に各論(案)がそれぞれ公表され,その後の各界各層から種々の意見を勘案しつつ,本年3月中を目途に計画策定が進められている.

公衆衛生院からの発信・4

看護職のための研修—専攻課程看護コース

著者: 鳩野洋子

ページ範囲:P.286 - P.287

 もっとできる保健婦(助産婦)になりたい,解決したい公衆衛生上の問題があるけれど,どうしたらいいかわからない,活動を計画する際,筋道だてて考えられるようになりたい,皆で働くことが今ひとつ苦手である,たぶん私は将来婦長あるいは課長・係長になるだろう,もっと他の自治体の人や研究者との人脈をつくりたい.
 公衆衛生院の専攻課程看護コースは,こんな気持ちを持つ保健婦・助産婦の方のために開設されたコースです.

海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・4

肥満対策とサイズアクセプタンス運動

著者: ホスラー晃子

ページ範囲:P.288 - P.289

 昨年10月にJAMA(アメリカ医師会機関誌)は肥満研究を特集し,その中でCDC(疾病管理予防センター)の研究者が発表した「合衆国における肥満の蔓延,1991-1998」という論文を掲載した.これによるとアメリカにおける成人の肥満率は1991年には12%であったのが,1998年には約18%に達し,肥満は男女,人種,教育程度などの別を問わずアメリカ中にじわじわと広がっていると報告している.ニューヨーク州は幸い肥満率,肥満率の伸びともに全国平均をかなり下回っていてひと安心だが,それでも楽観は許されない状態である.ところでこの論文でいう肥満とは,アメリカ国立衛生研究所(NIH)が任命した専門家パネルによる,成人の肥満に関するガイドラインの定義に基づいている.すなわち18歳以上の成人においては,BMI(body mass index)値が30またはそれ以上を肥満(obesity)と定義する,ということである.BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割った指数で,数値が高いほど肥満度が高くなる.このBMI値30というのは,例えば身長155cmの人であると72kg,175cmの人だと92kgという体重に相当するので,日本人にとってはかなり太め,という感覚になる.筆者の概算では,この定義を用いると日本人成人で肥満とされるのは約2%のみである.この定義の他にも,同じくBMIを用いたものに,成人の男性はBMI値27.8以上,女性はBMI値27.3以上が肥満という定義がある.

全国の事例や活動に学ぶ 今月の事例 山形県村山保健所

保健所における喫煙対策の取り組み・2—職場の喫煙対策は身近から

著者: 山田敬子 ,   小窪和博

ページ範囲:P.290 - P.291

 前号で,意気揚々と喫煙対策の推進について述べた筆者であるが,保健所に移って2年目,早くも大きな壁にぶつかってしまった.

公衆衛生のControversy 資格外就労外国人に適切な医療を受けられるように公的制度をつくるべきか

国際的視野でルールづくりを/一刻も早い受け皿の整備を

著者: 林謙治

ページ範囲:P.292 - P.293

論点
 本テーマに設定された論点は三つある.第1に資格外就労外国人についてどう考えるべきかということ.第2に適切な医療とはどの程度の範囲を指すのかということ.第3に公的制度として成り立つのかどうかということである.この三つの次元に対する考え方は立場によりそれぞれ主張があるところであり,いずれの側面を重視するかによって議論の方向性が異なってくると思われる.

レポート

ドイツの二つのメッセ見学記—家庭看護98と老人看護99

著者: 華表宏有

ページ範囲:P.294 - P.296

 ドイツ連邦共和国(以下,ドイツ)は,わが国と同じ「少子高齢社会」の様々な課題に直面しており,1995年から「介護保険制度」を実施していることは,よく知られている.
 ここ2,3年来筆者は,フランス留学時代(1970〜71年)の見聞を踏まえて,その後30年ほどの欧州諸国の社会状況の変化が,その国の地域保健活動にどんな進展をもたらしているのか,その途中経過と背景に大変興味を持つことになった.2年前に筆者の職務が医学教育から看護教育に移ったことを契機として,欧州連合加盟国におけるその後の看護教育改革の過程を対象とする新たな課題に心をひかれるようになり,この3年間(1997〜99年)に4回ほどドイツとフランスの関連施設を対象とした現地調査の旅に出かけた.

報告

栃木県における3歳児の両親を対象としたスギ花粉症に関する調査

著者: 大木いずみ ,   谷原真一 ,   尾島俊之 ,   中村好一 ,   柳川洋

ページ範囲:P.297 - P.302

 近年,アレルギー疾患への関心は非常に高く,その発症頻度も増加しているといわれている.スギ花粉症は,毎年スギ花粉の季節に症状に悩まされ日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼしかねない.同じスギ花粉に曝露していてもスギ花粉症を発症する人とそうでない人がおり,それらの発症には遺伝的素因,環境因子など様々な要因が関与していると考えられる.
 本研究は定義された地域住民を対象に,1)スギ花粉症の有症者の割合(地域差,性差,年齢差)を明らかにすること,2)スギ花粉症の主要症状の出現頻度,月別,時間帯別,日常生活場面別出現頻度を明らかにすること,3)重症度(生活に及ぼす影響)および症状を軽快するための手段を明らかにすることを目的とした.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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