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アニュアルレポート・2000
公衆衛生学の動向—健康確保のための社会的施策の展開
著者: 小澤秀樹1 三角順一1 青野裕士1 青木一雄1 斉藤功1 池辺淑子1
所属機関: 1大分医科大学医学部公衆・衛生医学(第一)講座
ページ範囲:P.268 - P.271
文献購入ページに移動1999年は1900年代の最後の年として,その締めくくりを考えたい.1995〜97年にかけて公衆衛生行政上にそれまで懸案の重要ないくつかの出来事があった.らい予防法の廃止,薬害エイズの国の責任表明,O 157大腸菌感染症の大流行,水俣病賠償訴訟の決着,地域保健法の施行である.初めの3項目は1999年4月に感染症新法の施行により締めくくりとともに,再出発となった.これまでの伝染病予防法とその他の伝染症関係の法律が廃止されて,100年ぶりに新法となったものである.水俣病は民主主義の社会となって初めての公害病であり,公害病として認定,拡大防止の遅れ,国および企業の責任,賠償など,数多くの深刻な問題を提起している.環境汚染は特定の企業の責任はもとより,国,自治体の行政対策の遅れ,国民一人一人の意識改革の不足から,環境ホルモンなどの環境有害化学物質が注目されることとなった.さらに,社会防衛の考えを基にして進められた伝染病予防対策から生活習慣病にかかわる,いわば個人の責任が大きいとされる慢性疾患に対して進められてきた施策が,高齢化の進行につれて重要な疾患となり,これまでの施策の評価と新戦略への転換を迫られる時期となっている.介護保険の2000年4月発足という具体的目標に対して,1999年は陣痛の苦しみの年であった.
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