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アニュアルレポート・2001
産業衛生学の動向
著者: 大久保利晃1
所属機関: 1産業医科大学産業医実務研修センター
ページ範囲:P.193 - P.195
文献購入ページに移動産業衛生学の主要課題が産業や労働の変遷によって変化するのは当然である.このような観点から,最近の産業動向の特徴を見ると,情報化がますます進みつつあること,その中にあって日本は依然として不況の真っ只中にあることが指摘されよう.情報化については昨今始まったことではないが,政府特別予算枠の新設などによりさらに加速されることが予測される.
それより後者の影響は極めて大きいものがある.というのも,これは単なる不況ではなく,わが国の経済構造が根底から変わりつつあるあらわれと捉えるべきだからである.経済構造の変化は,労働者の雇用制度に大きな変化を及ぼしている.例えば,わが国の雇用慣行の特徴とされた終身雇用は崩れつつあり,リストラ,ダウンサイジング,アウトソーシングなどにより,従来のパート,アルバイトに加え,派遣労働や在宅勤務など各種の契約労働が急速に普及しつつある.このような流動的な労働力に対しては,継続雇用と固定的な労働の場を前提にして発達してきた従来の産業保健管理手法はもはや通用せず,新たなサービス提供方式の模索が産業保健の大きな課題となっている.
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