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こころの健康づくりのニーズとその目標—平成12年度保健福祉動向調査から
著者: 島井哲志1
所属機関: 1神戸女学院大学人間科学部(健康心理学)
ページ範囲:P.109 - P.113
文献購入ページに移動こころの健康づくりを推進する場合に,二つの立場があると考えられる.第1は,こころの健康そのものが,その人の生活および人生の質(QOL)を左右している決定的な要因であるので,それを実現することが,当然,重要であるという立場である.この場合には,どのような状態をこころの健康と定義するのかという点や,それはどのようにQOLに寄与するのかという点が議論される必要がある。また,喫煙者がストレス解消を言い訳に使うように,こころの健康を追求することが,身体的な健康増進の方針と矛盾するという可能性も考えられる.
第2は,身体的な健康状態の阻害要因あるいは疾患の危険因子として,こころの不健康状態があるという立場である.そこでは,阻害要因あるいは危険因子を取り除くという目的のために,こころの健康づくりをするべきだとされるのである.この立場にたてば,具体的な目標は,疾病の予防やそれを通じた身体的な健康の実現であると考えられる.もちろん,この場合にも,最終的には,身体的な健康の実現を通じて,その人のQOLが高められることが目標であると考えることができるが,こころの健康の重要性は,最終的にはQOLを加味した余命を短縮するかどうかで判断することができるので,その定義を厳密に細かく議論する必要性は,第1の立場ほどにはない.
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