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アニュアルレポート・2002
公衆衛生学の動向
著者: 實成文彦1
所属機関: 1香川医科大学人間環境医学講座衛生・公衆衛生学
ページ範囲:P.180 - P.183
文献購入ページに移動21世紀の公衆衛生の幕開は国の省庁再編(1月6日,厚生労働省,文部科学省,環境省など)から始まった.その後,荒れる成人式,えひめ丸事件と続き,やがて小泉内閣の誕生と構造改革路線がスタートした.ハンセン病訴訟の和解と国によるお詫びという歴史的出来事がある一方で,大阪教育大学附属池田小学校の児童殺傷事件や幼児虐待などの痛ましい事件が続き,地球温暖化防止のための京都議定書からの米国の離脱問題に地球環境の未来を憂えている中,9月11日に米国での同時多発テロ事件が勃発した.その後の炭疽菌事件やアルカイダ・タリバン攻撃の中で日本中が緊張する中,国内で初のBSE(牛海綿状脳症,狂牛病)発生の確認がなされ,緊張と不安がよりいっそう高まった中,第60回日本公衆衛生学会が香川県高松市で開催された(10月31日〜11月2日,学会長:實成文彦).その後も各種の経済不安と失業率の上昇が続き,自殺の増加が報じられる中で幕を閉じた.21世紀の幕開の年は,今世紀の社会と公衆衛生の多難さを予感させるに十分であったように思う.特に人の心と行動に起因する様々の事象や,社会・環境を介してもたらされる健康問題や健康危機など,様々な場面での危機管理の重要性が強調された1年であったように思う.
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