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特集 食品の安全について考える
食品衛生—疫学的アプローチ
著者: 渡邊昌1 君羅満1 羽場亮太1
所属機関: 1東京農業大学応用生物科学部栄養科学科
ページ範囲:P.393 - P.397
文献購入ページに移動近時,狂牛病の発生や雪印食品の食肉生産地の不正表示等,食品の安全性に関して消費者の懸念が強くなっている.食事によって起きる疾病は,細菌やウイルス汚染によりひき起こされる感染症としての食中毒のみならず,食物連鎖を通じて濃縮される化学物質や重金属中毒など,悲惨な例が繰り返されてきた.大勢の患者が発生し,長期間の疫学調査が行われた例として,有機水銀による水俣病,鉱山の排水に含まれていたカドミウムによるイタイイタイ病,森永砒素ミルク事件,カネミ油症等がある1〜4).
食中毒の定義は,厚生省(現厚生労働省)で食品保健と感染症対策に別れていたため,わかりにくい面がある.一応「飲食物を介して体内に侵入した食中毒原因菌や有毒・有害な化学物質などによっておきる健康障害」と定義される.従来コレラ,赤痢,腸チフスのような伝染病は食中毒としては扱われなかったが,平成11年12月の食品衛生法施行規則の改正によって,飲食に起因することが疑われる疾病が発生した場合には,病因物質の種別にかかわらず,食中毒として原因究明,被害の拡大防止がなされることになった.表1に,食品衛生法により届け出が必要な「食中毒事件票」に記載される病因物質の種別を示す.
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