公衆衛生66巻7号

2002年07月発行

特集 改めて問う，保健事業はどれだけの成果をあげてきたか

基本健康診査の20年の歩み

著者： 福田英輝¹

所属機関： ¹大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座

ページ範囲：P.478 - P.483

文献概要

はじめに
　老人保健法（老健法）による保健事業は，昭和58年から市町村を実施主体としてすすめられてきた．老健法は，健康づくりの基本的な単位が地域住民に最も身近な自治体である市町村であることを明確に位置づけた初めての法律であった．老健法が開始された当時は，創意工夫に満ちた保健活動を実施している市町村はわずかであったが，全国の市町村は，このような先進的な市町村をいわば「お手本」にして，それぞれの地域特性に則したユニークな保健事業を工夫してきた^1〜4）．
　老健法の保健事業の1つである基本健康診査（基本健診）については，全国の市町村は基本健診受診率の向上を目的として様々な取り組みを展開してきた．その結果，基本健診の受診者数は1千万人を超え，平成10年度では1,089万人（受診率39.4％），老健法がスタートした昭和58年度の受診者数（617万人）の約1.8倍に増加した．また，基本健診の内容については，HDLコレステロール，γ-GTP，ヘモグロビンA_1c検査などの項目が順次追加されるなど，質的な充実も図られてきた．基本健診は，その規模と質において，市町村が行う保健事業の中で，最も充実したものとして成長した．