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連載 介護保険下の公衆衛生活動を考える・20
どこも悪いところはありません
著者: 関なおみ12
所属機関: 1順天堂大学医学部公衆衛生学教室大学院 2東京都豊島区中央保健福祉センター 保健医療担当係
ページ範囲:P.894 - P.896
文献購入ページに移動息子(44歳):障害者手帳2種5級,高次脳機能障害・平衡機能障害(交通事故後遺症)
セピア色の部屋
「母の介護のことで相談したい」と息子から相談され,生活保護のケースワーカーが訪問したときには,カーテンで2つに区切られた6畳の部屋はよどんだ空気に満たされ,万年床の状態だった.そしてその部屋全体――壁・天井・カーテン・本・布団にいたるまですべてが,溶けそうなセピア色に染まっていた.長年にわたって親子の吸ってきたタバコのヤニで,褐色化していたのである.母親は常にストレス性の腹痛を気にしてサービスを拒否し,息子は相談を持ちかけてきたものの無関心で,カーテンの向こうから足だけが出ている.介入に困ったケースワーカーは,保健福祉センター(以下,センター)に相談を持ちかけてきた.
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