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特集 エイズ対策は成功したか
成功したタイのエイズ予防対策
著者: 安田直史1 宮本英樹1
所属機関: 1国立国際医療センター国際医療協力局
ページ範囲:P.914 - P.919
文献購入ページに移動水面下の感染拡大から感染爆発へ
タイで初めて報告されたAIDS患者は1984年,外国帰りの同性愛男性(men who have sex with men,以下MSM)であった.その後感染流行を懸念した保健省は,高リスクグループを中心とした散発的かつ小規模なサーベイを数年間行ったが,MSMから少数の報告がみられた以外,静脈麻薬常用者(injecting drug user,以下IDU)や売春婦(commercial sex worker,以下CSW)の中でも陽性率はきわめて低く推移した.この間,一般人のみならず,保健政策担当者も「HIV/AIDSは限られた集団の病気で,一般には広がらないだろう」という誤った認識を持つに至った.サーベイランスとしてはAIDS発症者数の報告のみであったが,感染からAIDS発症までには5年以上の時間差があるため,5年以上前の感染状況を反映しているに過ぎないわけである.当然のことながら,初期の感染拡大の把握には全く役立たなかった(図1).
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