icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生67巻2号

2003年02月発行

文献概要

特集 公衆衛生が進めるリプロダクティブ・ヘルス/ライツ

対論―ピル問題―①[賛成派]避妊は女性にとっての悲願だった

著者: 北村邦夫1

所属機関: 1(社)日本家族計画協会クリニック

ページ範囲:P.116 - P.118

文献購入ページに移動
医学論争

 経口避妊薬(以下,ピル)の作用機序には,①排卵の抑制,②子宮頸管粘液の性状を変化させることによる精子の子宮内進入の阻止,③着床阻害,などの可能性があることが指摘されている.宗教的な立場から,受精こそ生命誕生の瞬間とするグループなどは,着床阻害を作用機序の一つとするピルを早期人工妊娠中絶薬と批判する.筆者が主導している緊急避妊ネットワークにも,同様な評価をして“刑法の堕胎罪に抵触する不当な行為”という言葉を向けてくることがある.しかし,産科学では「着床をもって妊娠の成立」と定義しており,その意味からは,ピルも緊急避妊薬もあくまでも妊娠の成立を阻止する「避妊」であって,中絶薬ではない.受精はしたものの着床に至らないで月経を迎える女性は少なくないが,これを流産とは決して言わない.

環境問題

 ピルの成分の一つであるエチニル-エストラジオール(EE)が内分泌撹乱化学物質,いわゆる「環境ホルモン」の一つとして分類されていることが事実であるとしても,筆者はピルの存在意義を否定するものではない.現在そして未来の住みやすい地球環境をつくっていくことは,私たちの大きな責任であり,豊かさの代償とも言える環境汚染に無関心でいられないのは当然のことだ.しかし,ピルはあくまでも個々の女性が選択して使う避妊薬であり,ダイオキシンのように多数の人間に無差別に影響を与える化学物質ではない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら