icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生67巻3号

2003年03月発行

雑誌目次

特集 地域から取り組むリプロダクティブ・ヘルス―新しい出産像を求めて

地域における出産―EBMの視点から

著者: 三砂ちづる

ページ範囲:P.174 - P.178

地域の出産の場から

 いくつかの地域に根ざした助産所をはじめとする,規模の小さな出産の場には,いつも賑わいの中の静謐といった雰囲気が満ちていて,足を踏み入れるだけでうれしい.出産した女性がとても元気で,穏やかで,赤ちゃんの表情がいい.出産後の母子が助産院の畳の部屋で幸せそうな表情をして一緒に横になっているのを見ると,「至福の時」とはこういうことなのだなと思う.「母子保健の推進」という言葉に,一つのかたちが見えるような気がする.

 先日は家庭内暴力で悩んでいた女性が出産したそうである.彼女は夫と別れることを考えてはいても,生活や上の子どものことを考えると,どうしても別れることができない.助産婦さんにそんな思いを口にしながらの妊娠・出産だったという.その助産院の『お産の感想ノート』1)には,「あるがままを受け止められていました」「それでいいのよ,それでいいのよ,と励ましてもらったことがなによりうれしかった」「上手上手,とほめてもらったから乗りきれた.私もこうやって子どもをほめて育てていこう」といった,自らのあるがままを受け止められて出産に臨んだ女性たちの言葉が並んでいる.そういう,助産院なのである.この女性も,家庭内暴力に関する自らの気持ちは,出産に向けて,十分に助産婦さんに受け止められていたようである.

紀南地域における出産の実態調査

著者: 山下成人

ページ範囲:P.179 - P.183

 紀南管内は紀伊半島南端近くに位置する過疎地域であり,少子高齢化が進んでいる.僻地ということで,従来から医師確保に苦慮してきたが,特に近年,産婦人科医,小児科医の確保が問題となっている.平成12年度,出産は年間344,大半は地域に唯一の拠点病院での出産である.拠点病院のスタッフは産婦人科医師2名,小児科医師1名,助産師6名である.また,母子医療センターのような3次救急病院が救急車で3時間かかる僻地である.ここ5年(平成8~12年度)の母子保健指標は,平成11年の日本の平均と比べ乳児死亡率1.73倍(新生児死亡率1.78倍)であり,平成13年2月現在,療育手帳A(最重度,重度)交付児は18歳未満人口の0.56%で,三重県の2.7倍である.地域の母子保健医療環境の維持・改善のためには,現状を把握して,医師・助産師等スタッフの確保,その上での質の向上,環境整備などの対策が求められている.

 平成13年度,紀南地域の健康実態調査として,出産体験が育児における母子関係の確立・メンタルヘルスに重要な影響を与えるという仮説のもと,出産後2年以内の母親に最近の出産・授乳状況に関してインタビュー調査を行い,出産体験の現状を把握することにした.調査結果をもとに,出生数が少ないという地域の特性を生かし,全出生に対して,継続的にケアできる母子保健・医療・福祉体制を構築することを県・市町村,拠点病院,大学等からなる「紀南母子保健医療推進協議会」で決定し,取り組んでいる.

母の出産・子の出生を考える

著者: 久靖男

ページ範囲:P.184 - P.186

 日本の少子化に歯止めがかからない.戦後50年の短期間にあまりにも大きい日本社会の構造上の変化,価値観の多様性など出産にかかわる変化があり,子を産み育てることが,かつてのように女性にとっての喜び,満足,楽しみと感じることができなくなったためである.出生率の低下と反比例して,児童虐待,学級崩壊,いじめ,不登校,青少年犯罪,自殺などは増加の一途をたどり,子どもを取り巻く環境は危機的な情況で,特に教育現場の荒廃は眼を覆うばかりである.これらの情況を産み出している種々の要因の中で,出産における母と子の体験が大きな影響力をもつとすれば,一刻も早く周産期の医療を変革し,母子の環境をより良い方向に改善する必要がある.

 子どもの健やかな成長には母と子の健全な愛着関係(絆)の形成が不可欠であり,出産を契機に,女性から母親への変容――豊かな母性の成熟が必要である.この2つは表裏一体のものであるが,今回このやや難解なテーマについて,限られた誌面の中で私見を述べてみたい.

出産を通して地域社会を支える

著者: 関根憲 ,   関根憲治

ページ範囲:P.187 - P.190

 子孫を残すことは,生命にとって基本的には何よりも優先されるべきことではあるが,いわゆる価値観,人生観,人間観といったものが大きく変貌してきた社会の流れの中で,1974年以来,出生率の低下が続いている.未婚化,晩婚化の進展が主な原因であるといわれているが,その背後には女性の生き方の急激な変化がある.

 かつては,母になることが女性の理想の姿であるという考えが主であったが,現代社会では,女性は妻であり,母親であるだけでなく,社会人であり,一人の女性であり,「母親であること」は選択肢のひとつにすぎない.このような意識の変化とともに,子育ては,多くの困難を伴い,骨が折れて時には汚れ仕事で,様々な危険さえも伴う大きなストレスとなり,それに耐えられない女性も増加している.

[鼎談]地域と向き合う出産文化

著者: 林謙治 ,   左古かず子 ,   瀧澤和子

ページ範囲:P.191 - P.196

林(司会) 本日は,地域の中でリプロダクティブ・ヘルスを実践しているお2人の開業助産婦さんにご参加いただきました.お2人とも病院ではなく地域に根づきながら,地域の人々に人間らしいお産ケアを提供し,その後のサポートもされていると伺っております.

 現在ほとんどの出産が病院や産科診療所で行われている中で,あえて助産院オープンを決心された経緯について,まず左古さんのほうから伺いたいと思います.

妊娠,出産に対する市町村支援策の変遷と今後の展開

著者: 福島富士子

ページ範囲:P.197 - P.201

 わが国の母子保健対策の中で,妊娠,出産に対する母親側への支援策の歴史は戦前にさかのぼるが,実際に活発になるのは,母子保健法が制定された昭和40年頃からである.

 母子保健法は,母性の保護も含めた,母子両方の健康について,一貫した体系が必要であるとの判断から策定されたが,住民に身近な市町村において妊娠,出産,育児や乳幼児保健についてのサービス提供を図るという観点から,平成6年に法改正が行われた.健康診査,訪問指導の実施主体が都道府県から市町村に一元化され,平成9年度から施行,ここから市町村における実際の展開が始まったと言える.

育児をめぐる新しい体系づくりを考える

著者: 関千春 ,   鳥居央子 ,   飯田恭子

ページ範囲:P.202 - P.204

 育児をする親たちの不安感,困難感が増大している.「子育ては,楽しみや生きがいである」という質問に対する回答で「とてもそう思う」は,米国77.2%に対し,日本44.2%と大きな差が出ており,海外先進諸国との比較においても問題視されている1).本稿においては,日本における育児を取り巻く環境の現状を考察し,支援や体制のあり方について考えていきたい.

育児を取り巻く環境の変化

 日本においては,育児の経済的側面を社会で支えるという考え方が従来から欠如していたが,コミュニティが機能していた時代には,経済に換算できない「ご近所によるサポート」等が存在していた.現在,その両方が欠乏していると言われ,育児には困難が生じている.

公衆衛生の視点から見た妊娠と出産

著者: マースデン・ワグナー

ページ範囲:P.205 - P.209

 公衆衛生の研究の目的は,人々の健康を守り,促進させることです.今まで公衆衛生の研究は,そのほとんどが感染症と環境衛生が中心とされてきました.

 近年私たちは,医師や看護婦・助産婦などのヘルスサービスというものが,人々の健康を増進させるだけではなく,実はマイナスに作用することもあるのだと理解するようになってきました.

視点

公衆衛生の人づくり―教育機関,学会の役割

著者: 安村誠司

ページ範囲:P.168 - P.169

 疾病の予防と健康の保持・増進を図るという公衆衛生の理念・目的を考えると,保健・医療・福祉等の専門職のみならず,関連分野の職種も,極めて大きな役割を担っていることは自明である.さらに,国民全体が公衆衛生の知識,態度・習慣,技能を有するという状態を理想とすると,国民全体が「公衆衛生の人づくり」の対象であるとも言える.しかし,国民全体では筆者の力量をはるかに超えるので,ここでは専門職に限定する.

医師における人づくり

 地域,職域,学校など,どの分野・場であろうが,公衆衛生と臨床医とは多くのかかわりがあり,臨床医の役割は大きく,医学部における卒前教育の重要性が自ずとわかる.

アニュアルレポート

公衆衛生学の動向

著者: 北川定謙

ページ範囲:P.210 - P.213

 平成14年を振り返ってみると,日本はなお,経済困難から抜け出すことができない状態で,閉塞感に包まれたままで新しい年を迎えることになった.しかし,その中で10月に発表されたノーベル賞において,物理と化学の分野で2人の研究者がダブル受賞されたことは,日本国民に自信と明るさをもたらすニュースであった.

公衆衛生分野での出来事

 われわれが直接責任をもつ公衆衛生の分野について,平成14年を振り返ってみる(順不同).

衛生学の動向

著者: 山内徹

ページ範囲:P.214 - P.216

2002年のことども

 21世紀に入って2年が経過した.比較的平穏に20世紀が終わり,穏やかに迎えるはずだった21世紀は,多発テロで不穏なスタートであった.2002年に入っても続いたテロ的事件とその対策は,アフガニスタン空爆のように「テロ撲滅のためならすべてが正義」という新たな価値観を世界に持ち込んだ.テロ自体も最大の恐怖であるが,体制に対する抵抗や民族の独立運動もテロと一束に括ってしまう乱暴な論理もある種の「危険」を感じさせる.また,炭疽菌テロの発生に伴い「生物化学兵器のテロ対策」のために,大学研究室の薬品や保存微生物の管理の徹底強化が通達されるなど,テロが「身近な危険としての存在」であることを感じさせられた.一方,国内での狂牛病(牛海綿状脳症:BSE)の発生は,それ自体が日常の食生活に「恐怖」を与え,同時に行政のBSE対策を悪用した食肉業界の度重なる不正が,「食品への不信感」を国民に植え付けた.国民の生命と健康の源たる「食」を揺るがす「大きな危険」であった.

 衛生学は,Mc von Pettenkoffer 以来,人々の健康を環境要因との関連の視点から追求してきた.衣食住を基本とした生活環境要因から,地域社会の環境,さらには地球環境と,関心の所在や問題性の軽重は時代と共に変化しても,常に各レベルの環境要因と健康の関連が衛生学の研究課題の中心であった.21世紀初頭の上記の諸々の事件は,さらに衛生学の課題に「環境危機管理」の視点の必要性を物語っている.

産業衛生学の動向

著者: 西尾久英

ページ範囲:P.217 - P.220

 本稿では,まず,わが国の産業保健の実情を直接的に反映してきた日本産業衛生学会の歴史を紐解き,次に,昨年神戸市で開催された第75回日本産業衛生学会学術集会(以下,75回産衛学会と略)の内容を振り返って,わが国の産業衛生学の動向を概説したい.

日本産業衛生学会のあゆみ

 1929年,日本産業衛生学会の前身である「産業衛生協議会」が設立された.設立の趣旨は「産業衛生学及びその実際的応用に関係のある諸方面に於いて活動する専門的研究者,医師,官公吏,工場管理者等が互いに相共同して,我が国の産業衛生学とその実際的応用の推進を図る」ことにあった.1932年,産業衛生協議会は「日本産業衛生協会」と改称された.日本産業衛生協会は,第二次世界大戦の最中にも,ほぼ毎年1回の総会ないしは学術報告会を開催し,珪肺などの研究や作業能力の増強に関する活動を続けた.

連載 医学ジャーナルで世界を読む・3

医療事故と交通事故の疫学研究

著者: 坪野吉孝

ページ範囲:P.170 - P.171

 東北大学医学部では,臨床講義が終わって病棟実習に入る直前の4年生を対象とする「EBMワークショップ」を,今年度から始めた.この1~2月にかけて,週1日,全5回で行っている.毎回,次のようなテーマを設けている.

 第1回 エビデンスとは(臨床問題の定式化と文献検索)

 第2回 よい研究,わるい研究(研究デザイン)

 第3回 よいRCT,わるいRCT(RCTの吟味とメタアナリシス)

 第4回 よい検査,わるい検査(検査に関する研究の吟味)

 第5回 よい予防,わるい予防(観察研究と介入研究)

 朝から夕方まで1日かけて,全体講義,ワークシートを使った自習,15名程度の小グループに分かれての討論を行う.教材の作成や全体講義は公衆衛生学教室の教官らが行い,グループ討論には教室の大学院生や研究生もチューターとして参加する.今年度からの新しい取り組みのため,試行錯誤をしながら進めている.何をどこまでどのように教えるか,スタッフ間で激しい議論になることも多い.学生の反応はおおむね良いようだ.ただし,「寝坊しました」と昼過ぎに堂々と現れる大胆な輩も,いないわけではない.

水俣病から学ぶ・3

保健所はどう動いたか

著者: 土井陸雄

ページ範囲:P.221 - P.225

 保健所法(昭22年9月5日)第一条に,「保健所は,地方における公衆衛生の向上及び増進を図るため,都道府県又は政令で定める市が,これを設置する」とあり,第二条は,保健所が「指導及びこれに必要な事業を行う」事項として,「1. 衛生思想の普及及び向上,3. 栄養の改善及び飲食物の衛生,4. 住宅,水道,下水道,汚物掃除その他の環境の衛生,7. 母性及び乳幼児の衛生,9. 衛生上の試験及び検査,10. 結核,性病,伝染病その他の疾病の予防,11. その他地方における公衆衛生の向上及び増進」(一部略)を挙げている14).保健所法は平成6年に改正されて地域保健法第三章に組み込まれ,事業として医事および薬事,精神保健,エイズなどが加わった.さらに「企画,調整,指導及びこれらに必要な事業を行う」と,事業の「企画,調整」は,地域の自治に大きく委ねられることになった15)

 しかし,水俣病が社会に登場した昭和31年当時,保健所の基本的な役割分担は,「衛生思想の普及及び向上」を「指導及びこれに必要な事業」の第一に掲げているように,「地域住民の健康を守り,増進する」ことが大きかったと考えてよいであろう.

 では,水俣病事件において,保健所はどのような事業を行い,「地域住民の健康を守り,増進する」ためにどのように貢献した,あるいはしなかったのだろうか?

地方分権による保健医療福祉活動の展開・15【最終回】

[座談会]地方分権と地方自治・2―住民自治から評価の時代へ

著者: 塩飽邦憲 ,   山崎史郎 ,   森貞述 ,   佐谷けい子

ページ範囲:P.226 - P.229

地方自治から住民自治へ

塩飽 住民は,政策の立案や実施の過程で,地域参加しながら多くを学んでいます.佐谷さん,コミュニティでの住民参加の動きについてお話しいただけますか.

佐谷 今,コミュニティの中で子育て支援の大きなうねりがあります.15~16年前に高齢者福祉が地域に下りてきた時には,町内会,老人会,防災会など,行政に都合のいいような団体しかありませんでした.住民が住民を支えるような考え方は,中野区の高齢者福祉ではなかったのですね.それが,寝たきりゼロ作戦,ゴールドプランを経て,地域にいろいろな受皿ができた.住民が中心になった会食会,ミニデイケア,配食サービス,在宅の家族会などのグループです.何もないところに「この指とまれ」方式で自発的に住民グループをつくったのです.

介護保険下の公衆衛生活動を考える・12

犬屋敷

著者: 関なおみ

ページ範囲:P.230 - P.231

父(94歳):直腸がんターミナル,要介護3

息子(60歳):統合失調症の疑い,離婚

孫(23歳):閉じこもり

動物を巡る第2弾

 「そういえば先生」,前号の「猫屋敷」騒動にかかわっていた保健師が言った.「犬屋敷もあるんです」.

 今回の「犬屋敷」の相談は,民間ヘルパーから「派遣されている家の犬の背中がひどくただれているので心配だ」と持ち込まれた.その家はかつてかなり繁盛していたすし屋で,措置制度の頃,年老いた母親に対して保健福祉センター(以下,センター)がかかわっていた.息子は以前から統合失調症の疑いがあり,孫は引きこもりで,保健所でもかかわっていたようだった.

米国の知的障害者サービスと脱施設化に学ぶ わが国の痴呆性高齢者対策への警鐘・6

米国の脱施設化の軌跡(下)

著者: 武田則昭 ,   八巻純 ,   ,   ,   末光茂 ,   江草安彦

ページ範囲:P.233 - P.236

 前号の(上)編では米国が「各州に可能な限りの自治権を認め,個々の州では対応できない国家レベルの事柄に関してのみ連邦政府が裁量権を持つ」という連邦制度をとっていることから,知的障害者サービスについても州の裁量権の範囲に属する事柄として取り扱われ,国の中央政府に当たる連邦政府の関与は限られたものとなっていることについて説明した.また,こうした州中心の制度は,各州の知的障害者サービスに様々な差異を生んでおり,州ごとに異なる知的障害者サービスの例として,ニューハンプシャー,ミシガン,ニューヨークの3州を選び,ニューハンプシャー州における特徴ある取り組みについて紹介した.
 前号にひき続き,本号では,残りのミシガン,ニューヨーク州について紹介,考察を行う.

厚生行政ホントの話・3

「混合診療」の議論に見る公衆衛生の論点

著者: 迫井正深

ページ範囲:P.245 - P.245

 最近,医療保険制度改革や規制緩和の議論で,いわゆる「混合診療」の是非が熱く展開されている.

 「混合診療」とは,保険診療と保険外診療の混在だが,現行の医療保険制度はこれを認めていない.つまり,保険を適用するなら,すべて保険診療で完結することを求めており,裏返しの表現として,公定された負担金以外に患者の支払いはあり得ないことを保障している.この規制を緩和し,混合診療を認めて保険外の部分について患者負担を上乗せすることにより,患者の選択肢を広げるべきだというのである.

資料

保健医療計画策定の現状と課題について

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.237 - P.244

 現在,各自治体では「健康日本21」の市町村計画の策定が行われている.これからの少子高齢社会において活力を維持するために,国民の健康水準の維持・向上は重要な課題である.特に今後高齢化に伴い社会保障支出が増大していくことを考えると,高齢者の健康水準を維持・向上することは,医療保険財政および介護保険財政を安定化するためにも重要である.また,少子高齢社会においては,高齢者は貴重な労働力であり,高齢者が希望する限りにおいてそれまでに習得した経験や技術を活かしながら,雇用され続ける仕組みを作ることも必要である.これまでの高齢者労働の調査結果によると,高齢者が職を持ち続けることができる条件として,専門的な知識・技術とともに健康であることが挙げられている1).したがって,高齢者の社会参加の継続が可能になるためにも,健康政策の推進が重要なのである.また,働き続ける高齢者が増加することは,年金財政の健全化にも貢献するであろう.すなわち,「健康日本21」の推進は国民のQOLの向上のみならず,社会保障財政の健全化の視点からも重要な事業であると考えられる.

 しかしながら,わが国におけるこれまでの保健に関連した計画策定およびその展開のあり方を前提としたとき,「健康日本21」の地方計画は,果たして,政府の目的どおりの効果を上げ得るのであろうか.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら