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戦争―人々の健康に対する最大の脅威
著者: 若井晋1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学
ページ範囲:P.288 - P.289
文献購入ページに移動1990年8月2日のイラクによるクウェート侵攻に対して,米国を中心とした「多国籍軍」(日本も自衛隊を派遣,総額130億ドルの資金拠出)による湾岸戦争が勃発してから,すでに12年以上が経過した.その後1998年の米・英による大規模爆撃を含め,1999年末までに米・英軍を中心に6,000回以上の出撃,1,800回以上の空爆により,450以上の目標を破壊した.
湾岸戦争は翌1991年2月27日,イラクの敗北によって終結したが,独裁者サダム・フセインによる支配と,国連の経済制裁によるイラク国内に住む人々の苦しみは終わっていない.否,むしろ経済制裁によって人々は,より苦しみを味わっている.
これまでに50万人を越える子どもたちが,ワクチン接種で予防できる病気や,治療可能な病気,栄養失調や下痢などで亡くなっている.70年代後半から湾岸戦争までは,石油資源に恵まれたイラクは,経済的にも,また健康指標の上でも,中東の先進国と言われるレベルであった.一人あたりの国民総生産は3,000ドル強であったが,今や500ドル以下となってしまった.
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