icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生67巻7号

2003年07月発行

文献概要

特集 健康危機における情報ネットワーク

ハーバード公衆衛生大学院におけるクライシスマネジメント教育

著者: 浦島充佳1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学臨床研究開発室

ページ範囲:P.527 - P.530

文献購入ページに移動
リスクアセスメントからケーススタディへ

 「リスク」という言葉は経済,医療,環境など諸々のフィールドで使われている.疫学においては,ある人がある一定期間にある疾病に罹患する確率を指す.そのため疫学の領域では,喫煙により肺癌発症のリスクが10倍に上昇する,飲酒により乳癌のリスクが1.2倍になるなどといったことを検討してきた.しかし,予防ということを念頭に置いたとき,私たちはリスクという言葉を使って人々にある行動を起こさせなくてはならない.「飲酒により乳癌のリスクが1.2倍になる」ことが事実であり統計学的に有意であっても,この数値だけで女性の飲酒をやめさせることは難しいだけでなく,あまり意味のないことのように感じる.

 一方,経済の領域では,ハイリスク・ハイリターンと呼ばれるように,「リスク」という言葉は不確実性の高いものについて使われる.例えば,「日本でテロが発生するかどうか」「東海地震が3年以内に発生するかどうか」「日本でエボラ出血熱患者が発生するかどうか」といったことは,疫学的には発生するリスクは0に近いかもしれないが,経済の領域で言えば,上記のような例は極めてリスクが高いことになる.そして,発生したときは大変な事態に発展しうることから,リスクマネジメントと呼ぶよりは「クライシスマネジメント」と呼ぶべきかもしれない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら