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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生68巻1号

2004年01月発行

雑誌目次

特集 公衆衛生の構造改革

保健所の組織実態について

著者: 野崎直彦

ページ範囲:P.8 - P.11

 保健所は設置以来,大きな歴史の流れの中で,一貫して地域の保健衛生において重要な役割を担ってきた.保健所のあり方は今までも議論され,注目されてきたが,近年,急速に組織統合が進められ,保健所は大きく変わりつつある.

 平成15年1月に厚生労働省健康局総務課地域保健室が都道府県,保健所設置市および特別区に対して実施した保健所等の実態調査(以下,保健所等実態調査)をもとに,本稿では主に保健所の内部組織,統合組織における保健所の位置付けについて述べる.

欧米諸国の衛生行政組織

著者: 武村真治 ,   林謙治

ページ範囲:P.12 - P.15

 諸外国においても,公衆衛生上の様々な問題に取り組む衛生行政組織が,国レベル,地方自治体レベルで設置されているはずである.しかし諸外国の保健医療システムに関するこれまでの報告は主に医療保障制度に焦点を当てていたため,健康危機管理,環境衛生,ヘルスプロモーションなどを所管する行政組織の実態はあまり知られていない.諸外国の衛生行政組織の長所と短所を明らかにすることは,わが国の衛生行政組織の目指すべき方向性を検討する上で有用であると考えられる.

 本稿では,アメリカ,イギリス,フランスの衛生行政組織,その中でも特に,わが国の保健所に相当する衛生行政の第一線組織の実態を報告するとともに,諸外国との比較において,わが国の保健所のあり方を考察する.

健康ニーズのPerception Gap

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.16 - P.18

 某テレビ局のプロデューサーによる,視聴率調査機関のモニター家庭への不当な働きかけが問題になりましたが,本来高い視聴率を得るためには,視聴者のニーズに答えた番組を制作しなければならないはずで,結果として高視聴率が維持できる番組はカスタマーズサティスファクション(顧客満足度)が高いと言えるでしょう.番組制作サイドが視聴者のニーズを測る参考として視聴率を利用するのがもともとの趣旨でしょうが,今回の事件はそれが行き過ぎてしまったと思われます.

 筆者は行政機関に身をおいていますが,公衆衛生の分野における各種の業務が果たして顧客(住民)の満足を得ているかについて,視聴率のような客観的指標によって判断したような経験はありません.私たちはよく「住民のニーズに沿って」というような表現を使います.しかし住民のニーズがどのようなものかについて,確固たる情報があることは稀です.また多様な住民のニーズを一元的に表わせるかどうかについても,はなはだ疑問があります.

保健行政組織の見直し

著者: 高鳥毛敏雄

ページ範囲:P.19 - P.22

 19世紀の産業化,都市化の中で,社会の中の個人の努力だけで克服できない深刻な健康問題に対処するために,公衆衛生制度が誕生した.現在は社会生活の中で死の不安が遠のき,「地域住民の健康の保持及び増進」(地域保健法,健康増進法)が保健行政の目標になっている.また地方分権推進法が施行され地方自治体の役割が大きくなり,健康問題は自治体固有の行政課題になっている.都道府県,指定都市の多くで,保健所組織は,生活福祉行政と保健行政の整合性を図るとの意図から地方行政組織に統合され,地方自治体行政の保健福祉の対人サービス行政効率は高くなっている.しかし,市に移管される保健所が多くなるにつれ,保健所は自治体の固有性が大きくなり,わかりにくい組織になりつつある.

 一方,近年社会から期待されるようになってきた感染症,健康の危機管理対策などの公衆衛生的課題に対しては,問題発生時に迅速な判断と対応,さらに周辺自治体との統一的な対応,さらに危機管理行政である警察組織や消防組織との連携を図ることが求められ,わかりやすい組織であることが必要となっている.

健康危機と地域における公衆衛生第一線機関の協働

著者: 上木隆人

ページ範囲:P.23 - P.26

地域の公衆衛生第一線機関の基盤

 地域の公衆衛生第一線機関と言えば,保健所(保健センター),地方衛生研究所,医療機関が挙げられる.これらの機関で対応する地域課題には,いわゆる公衆衛生業務全般があり,その中に健康危機対応もある.健康危機事例への対応については,国,都道府県,市町村それぞれのレベルで検討が進んでおり,また分野ごとの訓練やシミュレーションも行われてきているが,国際的な問題発生に対応する国都道府県レベルと,日常業務の中で構築する地域体制のレベルとがあり,これからは後者を課題としていく必要性が出ている.

 一方,保健医療福祉の連携が高齢化社会を迎えた昭和60年頃から叫ばれ始めて久しい.その後に介護保険法が発足し,その体制づくりは少しずつ進んでいるが,現状はまだまだである.その他には母子,老人など各分野の公衆衛生課題があり,ここにも地域単位で考えなくてはいけない体制づくりがある.地域における健康危機対応の体制構築は,これら保健医療福祉の連携体制と無関係ではない.

地域保健におけるこれからの民間機関,NPOの役割

著者: 岩室紳也

ページ範囲:P.27 - P.30

 地域保健,公衆衛生の分野でも,時代のニーズに対応すべく様々な形で構造改革が進められている.

 特に平成9年の地域保健法の施行がその最たるものであった.地域保健法の施行で,従来都道府県が担ってきた直接的な住民サービスのほとんどを市町村に移管し,都道府県型の保健所はより専門的,広域的に対応できる,企画調整機能をも有する機関へと変貌することができるという,画期的なものであった.しかし,この改革は成功したとは言えない.それは,地域保健法が行政組織内だけの構造改革を目指し,新たな時代の関係者の連携像を描けないまま,社会全体を巻き込んだ新たな枠組み作りに発展しなかったためではないか.

 その後,地域保健関連で制定された健康増進法や次世代育成支援対策法は,関係機関との連携を謳い,さらなる枠組みの変革を求めている.

リーダーシップの養成―英米との対比から

著者: 林謙治

ページ範囲:P.31 - P.34

 リーダーシップとは,組織目的を達成するための一手段であると定義される.なぜならばリーダーシップを発揮することによって組織パフォーマンスが高まり,その結果組織の目的が達成されると期待されるからである.欧米で言うリーダーシップは,個人に焦点を当てた議論であるが,日本をはじめアジア諸国ではむしろ,集団の機能として論じることが多いと指摘されている1)

 1990年にバブル経済が崩壊して以降,長期にわたる景気低迷が続き,それを克服すべく過程の中ですさまじいリストラが行われ,この中で特に大企業におけるリーダーシップのあり方が問われ,議論されてきた.

視点

まちぐるみ 心とからだの 健康づくり

著者: 鈴木公平

ページ範囲:P.2 - P.3

 豊田市は,全国第2位の製造品出荷額等を誇る「クルマのまち」としてその名を知られている.また,農地や山林が6割以上を占め,工業都市でありながら,豊かな自然に恵まれた環境を有している.昭和26年に市制を施行して50年余り,現在は人口35万人の中核市(平成10年4月に愛知県で初めて中核市に移行)として,地方分権の一翼を担っている.

 21世紀は「変革の時代」とも言われており,急速に進む少子高齢化をはじめ情報化や国際化の進展,環境問題の深刻化,価値観・ライフスタイルの変化,地方分権の進展など,私たちがこれまで経験したことのない変化が,市民生活や地域経済にさまざまな影響を及ぼすものと考えられる.

特別記事

【新春対談】少子化社会を拓くもの―「受け止められ」体験をどうつくるか

著者: 芹沢俊介 ,   三砂ちづる

ページ範囲:P.35 - P.41

 少子化が進んでいます.「健やか親子21」が打ち出され,「少子化社会対策基本法」も施行されましたが,さて,私たちはこれで本当に,産む人の心に沿い,生まれる人を大切にできる社会をつくっていかれるのでしょうか.日本の社会を見ると,母と子にかかわるところの閉塞状況が,広がっているようにさえ見えます.

 『母という暴力』(春秋社),『「新しい家族」のつくりかた』(晶文社)などの著者・芹沢俊介氏(評論家)と,出産状況とその後の母子の健康等について研究している三砂ちづる氏(国立保健医療科学院疫学部)が,少子化社会を拓いていくための本質に迫りました.

特別寄稿

「がんばらない」けど「あきらめない」―日本とチェルノブイリで命に寄りそって

著者: 鎌田實

ページ範囲:P.42 - P.45

本文献は都合により閲覧が許可されていません

SARSの臨床ウイルス学的考察

著者: 藤井毅 ,   岩本愛吉

ページ範囲:P.46 - P.50

 近年,様々な病原微生物による新興感染症(Emerging Infectious Diseases)が出現し,社会的な問題となっているが,昨春,突如世界的なアウトブレイクを起こしたSARS(severe acute respiratory syndrome:重症急性呼吸器症候群)は,社会にこれまで以上に大きな衝撃を与えた.その理由は,本疾患がヒト-ヒト間で容易に感染を起こして,現代の国際化社会の中で一気に世界各地に広がったことと,約10%という高い死亡率にあると思われる.

 2003年7月5日に世界保健機関(WHO)は,世界中でSARSの集団発生が封じ込められたことを宣言した.11月現在,新たな流行は見られていないが,今後再び流行する可能性は高いと考えられており,引き続いて十分注意が必要である.SARSに関する疫学的および公衆衛生学的な詳細については,本誌2003年11月号(特集/検証「SARS」)にて記載されているため,本稿では特に,臨床ウイルス学的な観点よりSARSについて概説する.

調査報告

インド・デリー市スラム地区における妊婦健診受診者のエイズの認知状況と保健情報源に関する調査

著者: 福田英輝 ,   多田羅浩三 ,  

ページ範囲:P.75 - P.79

 インド・デリー市の人口は1,378万人と報告されており(2001年国勢調査),1991年の人口と比較して約1.5倍の増加がみられた.急激な人口増加の結果,多くのスラム地区が形成されることになり,デリー市民の約19%がスラム地区住民であるとされている1)(同国勢調査).さらに,スラム地区住民の識字率は非常に低いことが示されている(同様).デリー市住民の識字率は男性が87%,女性が75%であったが,デリー市内のスラム地区住民の識字率は男性が63%,女性が48%であり,スラム地区に在住する女性の約半数は読み書きができない.スラム地区在住の住民を対象にした保健サービスにおいては,文字情報に依拠した実施方法のみでは不十分であり,多様な方法について検討や工夫が必要である.

 スラム地区住民における学歴の現状,経済状態,エイズという病名の認知の程度,保健情報の入手先の現状,および各状況の関連などを明らかにすることにより,今後の検討に資する知見を示すことを目的として,デリー市のシャダラ北部ゾーンのスラム地区にあるゴクルプリ・アーバン・ヘルスセンター(Gokulpuri Urban Health Center)の協力を得て,当施設において実施されている妊婦健診の初回受診者を対象に調査を行ったので,本稿にて報告する.

連載 医学ジャーナルで世界を読む・13

日本対がん協会の米国視察旅行

著者: 坪野吉孝

ページ範囲:P.4 - P.5

 2003年10月26日から11月2日にかけて,財団法人日本対がん協会が企画した米国視察旅行に,講師兼通訳として同行した.一行は15人で,協会の東京本部の職員,地方支部の医師・保健師・事務職員などだった.男性が9人,年齢の範囲は28~63歳で,60歳以上が5人という構成だった.

 がんに関連する施設として,3カ所を訪問した.ニューヨーク市のMemorial Sloan Kettering Cancer Center(がん専門病院),ワシントンDCのNational Cancer Institute(NCI,国立がん研究所),アトランタのAmerican Cancer Society(ACS,民間対がん団体)だ.

New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・1

生物・医学モデルを超えて

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.51 - P.55

 「New Public Health(新しい公衆衛生)」を創造し実践するためには,パラダイムやモデルの転換が必要である.本連載の目的は,人々の健康をとらえる新しいパラダイムあるいはモデルを,その科学的根拠とともに示すことにある.

 パラダイムあるいはモデルとは何か

  ここでいうパラダイムやモデルとは,物事をとらえる枠組みやパターンのことである.それを科学的に実証する根拠が乏しい段階では,仮説あるいは理論と呼ばれることもある.人は,物事を観察したり働きかけたりする時,無意識だがその人が持っているパラダイムやモデルを使っている.そして,パラダイムやモデルに合わない事実には気づかない.あるいは見えていても認識できず見落としたり,無視したりしてしまう.つまりパラダイムやモデルは,とても大切なものである.

全国いきいき事例ファイル・6

滝沢村の保健計画―ヘルスプロモーションに基づく保健計画策定と村の行政改革

著者: 田沢光正

ページ範囲:P.56 - P.59

 岩手県滝沢村は,平成16年度の公表に向けて,15年度に新しい総合計画策定に着手した.その作業は,庁内プロジェクト立ち上げ→グループインタビュー(住民・職員)→住民ニーズ調査将来ビジョンの検討→重点施策と社会指標の検討と進む.あるべき姿を描き,その実現に向けて何が必要か,これを住民の声を中心に評価ができるように策定していく.これはまさに,平成8年度の母子保健計画を始めとし,これまで保健分野で保健専門職が中心となって策定してきた,各種の保健計画を策定するときのプロセスである.

 7年以上にわたり,保健計画策定に関与してきた保健専門職は,今,村の行政改革にはなくてはならない存在となっており,新しい総合計画策定にも彼女たちのもつヘルスプロモーションの考え方と,計画策定の技術・経験が活かされようとしている.保健計画策定に数多くかかわってきた保健師は,「村の行政改革,総合計画策定の考え方,手法は,ヘルスプロモーションの考え方,保健計画策定の手法に重なる.感無量です」と語っている.

案内・水俣病の表現・11[最終回]

水俣病から学ぶために―「水俣病の表現」を考える

著者: 実川悠太

ページ範囲:P.60 - P.61

 昨年の「水俣から学ぶ」シリーズにあわせて,約1年間にわたり水俣病事件に関する表現をご紹介した(本誌68巻2~11号).振り返ってみると,「文学」「写真」「絵画」「映画」「演劇」「音楽」「展示」「産物」「テレビ」「研究」の10分野67作品を取り上げている.

 ●被害者自身による豊かな表現

 この小文執筆のために改めてさまざまな表現について調べ驚いたのは,現在でも鑑賞可能な優れた作品が非常に多いことである.もちろん,他の公害,環境汚染事件で,このように多くの優れた作品を生み出した事件はない.なぜ,「水俣」から,かくも多くの表現が生まれたのだろうか.

介護保険下の公衆衛生活動を考える・22

奇跡の人

著者: 関なおみ

ページ範囲:P.63 - P.65

長女(48歳):結核性髄膜炎後遺症・水頭症による視聴覚重複障害

父(78歳):肺ガン(化学療法中),未申請

母(76歳):肺機能障害(結核後遺症),要介護1

3人は2階建て木造一軒家で同居

(次女,三女はそれぞれ結婚し,独立)

 お風呂の介助

 家族の中で一番はじめに保健福祉センター(以下,センターと略)にやってきたのは,母親だった.「娘が障害者なのでお風呂に入るときに介助してくれる人がほしい.今まで来てくれていた人が年をとってやめてしまった」とのことだった.娘は目が見えず,耳も悪いということなので,職員が状況を把握するため訪問しようと,後日確認の電話をしたところ,「シルバー人材センターから人が来てくれることになったので,結構です」とあっさり断られてしまった.その1カ月後,再び「シルバー人材センターから来ていた人がやめてしまったので,やはり誰かお願いしたい」という連絡があり,やっと障害者在宅支援係のケースワーカーとヘルパーが,本人に面会できることになった.

インタビュー・住民VOICE・10

公衆衛生の課題としての「事故予防」

著者: 今井博之 ,   反町吉秀

ページ範囲:P.66 - P.67

反町 今井さんは,小児科医としての忙しい日常診療にもかかわらず,交通事故の防止や公園の遊具関連の事故防止など,子どもの事故予防活動に取り組まれています.これまでに取り組んでこられた予防活動をご紹介いただけませんか.

今井 子どもの安全ネットワーク・ジャパン(SKNJ)は1997年に設立された非営利組織で,主にチャイルドシート(以下CRSと略)着用の啓発活動を行ってきました.現在は医師や看護師など保健医療関係者を中心に,約130名の会員がいます.設立のきっかけは,まず米国で長らく研究された新田文輝教授(吉備国際大学)が,米国では常識となっているCRSが日本ではほとんど着用されていない現状に驚いて,啓発活動を提唱し始めたのですね.米国では20年以上も前からCRS着用が法的に義務付けられ,出産して退院する新生児にはチャイルドシートを着用しないと退院させないというシステム(First -Ride Safe -Ride)ができあがっています.京都で産婦人科医院を開業している伊藤将史医師は,このシステムの実践を自らの病院で開始したのですが,これは画期的なことでした.私は,子どもの事故予防に関心があり,世界では常識になっているCRS着用がなぜ日本では20年以上も無視され続けているか,という問題意識で,「CRS着用は子どもの事故防止にとって重要な課題である」という論文を1996年に小児科の雑誌に書いていました.後にSKNJを知り,一緒に活動をしています.

世界の公衆衛生に貢献した日本人先駆者たち―次世代へのメッセージ・10

ヨード欠乏症対策と私(下)

著者: 入江實

ページ範囲:P.68 - P.71

世界のヨード欠乏症対策に対する日本の対応

  ヨード欠乏症国際対策機構(ICCIDD)は,WHOやユニセフなどと協力して,ヨード欠乏症対策を世界規模で実施してきました.1990年,ニューヨークで行われた「子どものための世界サミット」には,日本からも当時の海部首相が出席され,ヨード欠乏を含む微量栄養素欠乏に対する対策を重要課題とする方針がとられました.また1996年の橋本-クリントン会談でも,日米コモンアジェンダの1つとして微量栄養素の問題が取り上げられ,その中でも特に「ヨード欠乏症対策のために日米が協力していく」という方針が立てられました.最近では,2000年に開催された沖縄サミットでも,微量栄養素欠乏症は重要課題の1つとされました

 このような時代の流れに即して,一番早く動いてくれたのは,厚生省(当時)でした.厚生省の関係機関である国際厚生事業団(JICWELS)が,ヨード欠乏症対策ワークショップを3回行いました.私が会議内容のアドバイザーとなり,1997年に第1回,99年に第2回,2000年に第3回目のワークショップを東京で開催しました.このワークショップの対象となったのは,合計16カ国.各国より1名ずつの専門家を招き,それぞれ3日間の会合を行いました.ワークショップでは解決への医学的アプローチ,ヨード欠乏症対策の方法論,各国のヨード欠乏症の現状,援助の仕組みなど,広範囲なテーマを取り上げました.その結果,日本と世界各国の間で,ヨード欠乏症を介した交流も進み,いくつかの国における具体的なヨード欠乏症対策にもつながっていきました.

世界を見て,日本を見る.Public Health Opinion・1

Johns Hopkins Bloomberg School of Public Healthでの教育の現状と今後の日本での公衆衛生教育への提言

著者: 五味晴美

ページ範囲:P.72 - P.74

 筆者は,2002年7月から2003年5月まで,米国東海岸ボルチモアにある公衆衛生大学院(The Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health,以下JHSPH)にて,Master of Public Health(MPH)の11カ月のコースを受講した.その経験をもとに,本稿では米国における最新の“Public Health”教育の現状につきその教育方法(Teaching Style)を中心に報告し,今後の日本の“Public Health”教育への提言を行いたい.

 JHSPHは,US News and World Report社の最新の全米公衆衛生大学院ランキングで継続して第1位を誇り,米国の公衆衛生教育のメッカとも言える,1).現在,JHSPHには,10の独立したDepartmentが存在する(図1).教育,研究などにあたるスタッフの数も非常に多い(研究などで短期,非常勤で勤務するスタッフも含めると,正確な数字を把握するのは困難である).

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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