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連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・7
ポリオ根絶に対する取り組み(5)
著者: 尾身茂1
所属機関: 1WHO西太平洋地域事務局
ページ範囲:P.756 - P.757
文献購入ページに移動“ゼロ”を証明するためには,まず,サーベイランスの質の確保が大前提である.サーベイランスが信頼できなければ,いかに「“ゼロ”になりました」と主張しても始まらない.以前,68巻7号の本欄で書いたように,急性弛緩性麻痺(AFP)のサーベイランスシステムは「システムそのものの中にシステムの機能を評価する仕組み」があり,どんな地域や国であっても,15歳以下の10万人に対し,毎年最低1人の割合でAFP(ポリオであろうがなかろうが)が発生することがわかっていた.つまり,報告されたAFPがその基準より少ない場合は,サーベイランス自体が機能していないことを意味した.われわれがポリオ根絶事業を開始した1990年頃は(68巻6号参照),サーベイランスの質がきわめて不十分であったため,ポリオの日常的な流行にもかかわらず,この10万人に1人という基準を満たしていなかった.当時は,ごく一部の症例しか報告されなかったし,仮に報告されたとしても,発症から報告まで1年以上かかることも稀ではなかった.しかし,ただ単に医療機関従事者からの報告を待つだけではなく,保健関係者が医療機関に赴いて,カルテをチェックするいわゆるアクティブサーベイランスを行うなど,関係者の長く懸命な努力の結果,次第にサーベイランスの質が向上し,1995年頃になると,ポリオ患者が減少しているにもかかわらず,AFP報告は上述の基準を満たし(図),まずは,前提条件が確保されるようになった.
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