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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生68巻6号

2004年06月発行

雑誌目次

特集 転換期のリーダーシップ

自治体行政のリーダーシップ―さあ,地方が国を動かす時代が来た

著者: 堂本暁子

ページ範囲:P.416 - P.420

 私は,2001年4月に千葉県知事に就任した.最初に決裁を求められたのが,平成13年(2001年度)から10年間の健康づくりに関する基本的方針と,施策の展開を決める「健康ちば21」だった.生活習慣等を改善するため,栄養・食生活,身体活動・運動,アルコール,糖尿病,たばこ,がん,母子保健など11の分野について,実践的な数値目標を定め,さらにライフステージに応じた健康づくりを推進するというものである.

 すでに完成稿で,印刷に出すばかりだったが,私は2つの視点を加えての修正を求めた.第一に,地域や学校など集団を対象とするのではなく,個人単位の健康づくり施策に徹底すること.つまり,個人が主体的に取り組める健康づくりメニューを用意するよう求めた.第二に,女性の特性を踏まえた健康づくりと医療を推進すること.つまり,性差医療(gender-specific medicine)の視点から,生涯を通じた女性の健康づくりへの取り組みを明確に書き込むことである.

保健所長のマネジメント

著者: 小倉敬一

ページ範囲:P.421 - P.424

保健所長の資格要件

 まず,主題を語るにあたって大前提がある.昨年3月に設定され現在進行中の「保健所長の職務の在り方に関する検討会」(2004年1月28日に第8回目開催)の結論である.後述するごとく保健所のレーゾン・デートル(存在理由)から見て,所長は医師以外の職種は考えられないが,規制緩和,地方分権,行政改革の大合唱の下に,非医師の所長がもし誕生すれば,この拙文を書く意義もなくなるし,わが国の公衆衛生行政は崩壊の道を歩み始めることは想像に難くない.

 保健所長の医師資格要件の撤廃は古くて新しい問題であり,昭和30年代から保健所の医師不足や,行政機関の統廃合,再編等が進められるたびに持ち上がっており,その都度議論が尽くされ,最終的には平成9年に結論が出たものと思っていた.

保健所長に必要なリーダーシップ―第一線の保健所長30人が期待するもの

著者: 小窪和博

ページ範囲:P.425 - P.428

地域保健法施行後6年が経過し,保健所は,様々な事業推進や機能強化に取り組んできたが,同時に進められた機構改革とも相まって,現在大きな転換期を迎えている.

 さらに「保健所長の職務の在り方に関する検討会」においては,保健所長の医師資格要件の見直しが検討されている.

 以上のような状況から明らかなとおり,保健所長に必要なリーダーシップの内容が,今ほど問われている時はない.

 本稿では,保健所長に期待されるリーダーシップに関して,実務者の立場から,第一線で働く保健所長の意見集約を柱に,上記「検討会」の議論等にも触れながら検討していく.

[インタビュー]保健師とリーダーシップ―保健師魂を磨け!

著者: 若木茂子

ページ範囲:P.429 - P.433

保健師としてリーダーシップを発揮し,自己実現できる秘訣

 本誌 若木さんは2003年にリタイアされましたが,現役時代終盤は十和田保健所次長,青森県看護協会会長などをつとめられ,保健師のリーダーとして活躍されてきました.

 保健師さんは素晴らしい働きをしてくださっている,私たち住民の健康の守り手ですが,行政という枠組の中で,自分の思いを実現するのがなかなか難しい職種ではないかと想像しています.しかし若木さんはそこを越えて,常に住民の味方となりながら,自由に,大らかに,保健師活動を築き上げてこられました.

NPOの地域活動―その運動と実践

著者: 石川左門

ページ範囲:P.434 - P.437

疾病運動からの出発

 筆者の長男が小児型筋ジストロフィー症(以下,筋ジス)であったことから,筋ジスの患者運動に参加したのは,全国組織と東京組織とが同時に発足した,1964年の秋のことであった.当時私は,全国組織の役員と東京組織の代表を兼ねていた.

 ところが就任早々に,専門施設と遺伝という2つの問題について,全国組織から厳しい批判を受けることになった.

国立保健医療科学院におけるリーダーシップ養成

著者: 曽根智史

ページ範囲:P.438 - P.442

 国立保健医療科学院(以下,科学院)が実施している専門課程Ⅰ「保健福祉行政管理分野」は,公衆衛生,保健福祉医療分野におけるリーダーとなるために必要な,高度な能力を養うことを目的として,保健所長等への就任を予定して地方公共団体から派遣される医師,または将来保健所医師として就職を希望する者を対象に開講されている課程である.

 本課程には,大きく分けて,「本科(1年)」と「分割前期(基礎)・分割後期(応用)」の2つの履修方式がある.前者は,通年で必修科目,選択科目,特別研究論文等を履修し,1年間で35単位を取得する.後者は,4~7月の3カ月間でまず12単位の必修科目を履修し(分割前期),職場に戻ってから5年以内に,再び科学院で特別研究論文を含む残りの単位を修めるか(分割後期履修方式A),あるいは遠隔教育や科学院短期課程の諸コース,国等が主催する各種研修会などを受講し,特別研究論文を含む残りの単位を修めることによって(分割後期履修方式B),本科と同等の修了資格を得るものである.本科4~7月の必修科目と分割前期(基礎)は同一内容である.本科および分割後期(応用)修了後には,MPH(Master of Public Health)が授与される.

リーダーシップ養成における大学教育の役割

著者: 川口毅

ページ範囲:P.443 - P.446

医学教育の変革

 医学教育は現在,大きな変革の時期を迎えている.その1つはコアカリキュラムの導入であり,もう1つは臨床研修の義務化に伴う医局制度の見直しである.

 コアカリキュラムはこれまで,医学教育では講義等による知識の伝達に主力が置かれてきたが,これからの医学教育に求められるものは,自ら考え判断し,行動できる医師を養成することにある.わが国の医師は医科大学に入学の時点においては成績も優秀な人材が入ってくるにもかかわらず,卒業して研究をしたり臨床の現場に臨むと,世界の医師レベルから見てかなり低いことが問題となったことに端を発している.質の高いレベルにある医師とは,自らの診療や研究能力だけでなく,医療の専門家として医師以外の医療関係職種との連携や,リーダーシップ力を持っていることを前提としている.

[インタビュー]転換期のリーダーシップ

著者: ジョージ・フィールズ ,   林謙治

ページ範囲:P.447 - P.453

林 昨年からSARSや鳥インフルエンザなど国民の健康危機に直面するケースが多くなってきて,そのような場合に,国民の健康と生活を守る立場にあるわれわれには,いわゆるリーダーシップが求められています.

 本日は他分野におけるリーダーシップ論から学ぼうという趣旨で,世界経済界の動向に詳しいジョージ・フィールズさんにお越しいただきました.まずはフィールズさんのお考えになるリーダーシップと組織について,お話しいただきたいと思います.

視点

福祉は,弱者救済から生活支援へ

著者: 三浦大助

ページ範囲:P.410 - P.411

介護保険法の成否は痴呆対策にある―在宅介護から施設介護へ

 昭和26年,「社会福祉事業法」という法律が施行された.この時わが国の法律の中に,“福祉”という活字が初めて登場した.今から53年も前のことである.そしてその目指すところは「弱者救済」で,当時としては画期的な法律であったであろうことは想像できる.

 当時,日本人の平均寿命は男性60歳,女性65歳に達していた.その頃の職場の定年は55歳であったから,平均的には老後は5年ということであった.さらに,それから50年,わが国の平均寿命は世界のトップレベルに到達し,男性78歳,女性85歳という「人生80年時代」を迎えている.そして,今や定年は60歳で,90歳くらいまでは長生きできるという長寿社会を迎え,老後は30年ということになった.

トピックス

がん検診に関する検討会の中間報告について

著者: 西村泰人

ページ範囲:P.454 - P.455

 厚生労働省老健局においては「がん検診に関する検討会」を開催し,市町村で実施されているがん検診のうち,特に検診の精度や対象年齢などに問題が指摘されていた乳がん検診と子宮がん検診について検討を行ったところである.2004年3月には,乳がん検診と子宮がん検診の見直しについて中間報告がとりまとめられた.

 乳がん検診については,視触診単独では,検診による乳がんの死亡率減少効果がないとする相応の根拠があることから,検診としての効果が期待できないため廃止とし,マンモグラフィによる乳がん検診の対象を40歳以上とすることとした.わが国では,2000年度から50歳以上を対象にマンモグラフィが導入されているが,2002年度の実績で乳がん検診の対象者の約2%の実施にとどまっており,その普及が課題である.

風疹の地域流行と予防

著者: 宮崎千明

ページ範囲:P.456 - P.456

 風疹が地域流行している.平成16年第16週時点で,沖縄県,鹿児島県,大分県,福岡県,滋賀県,神奈川県,埼玉県,群馬県,栃木県,宮城県などで週間定点あたり0.10以上の報告が上がっている.群馬県では33名(定点あたり0.54)を示した.平成14年には福岡県,岡山県,青森県,京都府など,平成15年は岡山県で小流行し,先天性風疹症候群児も報告されている.4~6月に流行のピークが見られるのが従来のパターンである.

 急性ウイルス性発疹症としての風疹は比較的軽症に推移するが,血小板減少性紫斑病を3,000人に1人,脳炎を6,000人に1人に合併し,成人では重症化する.

特別寄稿

香港・北京・ベトナムのSARS・鳥インフルエンザ対策に学ぶ(公衆衛生編)

著者: 緒方剛

ページ範囲:P.458 - P.460

 SARS,高病原性鳥インフルエンザ等の新興感染症の対策について,公衆衛生関係者は厚生労働省の通知だけでなく,感染症情報センター,WHO(世界保健機関),国立保健医療科学院健康危機管理支援情報システム等のサイトを通じて,多くの情報を得ることができるようになった.しかし,公衆衛生の現場にいる者としては,これらのガイドラインやQ&Aでは語られないような具体的,実際的な対応が知りたくなる.「実際に患者が発生している国ではどのように対処しているのか.(中略)保健所ではどのような対応をとっていたのか(本誌68巻3号,p220,小竹氏)」と.

 この度機会を得て,香港・北京・ベトナムの保健所等を視察し,また当保健所で招聘講演を行ったので,主として公衆衛生部門の対応をご報告する.

「家族間暴力」における最近の動向

著者: 遠藤優子

ページ範囲:P.461 - P.464

 一昔前までは,「家族間暴力」と言えば思春期の少年が親に対して行う,青春期対親暴力のことであった.これは,今でもなくなっているわけではない.筆者は全予約制の有料カウンセリングルームである「遠藤嗜癖問題相談室」(以下E相)を開業している.そこにもこの問題に関するカウンセリングを求めてくるケースは,この12年間常になくなるということはない.しかし最近では,こうしたケースの報道はあまり目にすることは少ないようである.

 これに変わって毎日のように報道を賑わしているのは,親による児童虐待の悲惨な事件である.また家族内の介護者による要介護高齢者虐待や,夫婦間暴力(以下DV)についても,法整備の問題もあって専門家の関心を引いている.

特別記事

[座談会]日本の疫学と公衆衛生の未来を考える③―若手疫学者たち,未来の疫学を大いに語る

著者: 小橋元 ,   神田秀幸 ,   山根逸郎 ,   大谷哲也 ,   齋藤京子 ,   嶋根卓也

ページ範囲:P.465 - P.472

小橋(司会) 日本疫学会の「疫学の未来を語る若手の集い」(以下,「若手の会」)から始まったこの暴れん坊的な座談会(笑)も,今回で3回目,最終回を迎えました.1回目で「若手の会」の歴史を振り返り,2回目で疫学と公衆衛生の現状を語り,過去,現在と来たので,最後は未来を語ります.獣医学,薬学,社会科学と様々なバックグラウンドを持つ若手疫学者にお集まりいただきました.若手と言っても,身体年齢もさることながら,未来に向けて志が大きいという意味での,要するにこれからひと暴れもふた暴れもしようという方々です(笑).どうぞよろしくお願いします.

 疫学者は良きオーガナイザー(まとめ役)でありたい!

 小橋 疫学の未来と言えば,昨年,「若手の会」のメーリングリストで「疫学の未来に必要なものは何か」というアンケート調査をしました.そうしたら,専門性の確立とか他分野との相互交流というキーワードが挙がってきました(『Journal of Epidemiology』印刷中).まずはその辺りも含めて,これからの日本の疫学に必要だと思うことを具体的に挙げてもらえますか.

連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・3

ポリオ根絶に対する取り組み(1)

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.412 - P.413

前回はWHOへの赴任が決まった話をしたが,今回はその後の話である.

 WHO西太平洋地域事務局(以下WPRO)行きが決まった直後,厚生省(当時)の医系人事を担当していた谷修一厚生科学課長から呼ばれて,次のことを聞かれた.「WPROには2つのポストがある.1つは課長級でWHO西太平洋地域事務局長(RD)の秘書的役割をするポスト,もう1つは課長補佐級で,ポリオ根絶を担当するポスト.選択しなさい」と.当然その場では判断が難しいので,「少し考えさせて下さい」と言うと,「今すぐに」との指示.課長級のほうは確かに偉そうで魅力はあったが,ポリオ根絶のほうがやりがいがありそうだと勝手に思い込み,「ポリオをやらせて下さい!」と答え,その場で私のポリオ担当が決定されたのである.

 1990年9月,フィリピン・マニラにあるWPROに着任後まもなく,同僚2人とともに,当時のRD(地域事務局長),Dr.Hanの執務室に呼ばれた.雲の上の人に初めて呼ばれたことで,ガチガチに緊張して執務室に向かうと,Dr.Hanから「西太平洋地域におけるポリオ根絶を2000年までに達成するため,すべてに優先して取り組みなさい.尾身は1991年4月までに専門家会議を東京で開催しなさい」との厳命を受けた[後から判明したのだが,Dr.HanはRDに就任後,1期目(1期は5年)の途中であり,ポリオ根絶に向けた取り組みは2期目の再選に向け,最も優先順位の高い課題の一つだったのである].

公衆衛生ドキュメント 「生きる」とは何か・3

ナパーム弾で被災した少年

著者: 桑原史成

ページ範囲:P.414 - P.414

 1968年の1月末に,ベトナムでは南北の戦争(ベトナム戦争)で,北ベトナムと北を支持する南ベトナムの民族解放戦線は,南ベトナムで全土一勢の蜂起を行った.いわゆるテト攻勢である.テトは旧正月のことで,ここから世界に「テト」が知られるようになった.

 共産軍側からの攻撃を受けて,アメリカ軍(約50万人)は反撃に出た.南ベトナムの戦場で,アメリカ空軍は敵陣に重油性のナパーム弾を投下していた.この弾は人命の殺傷で,やけどの被災を与える性能があった.

Rapid Review & Topics・3

グローバリゼーションと健康

著者: 若井晋

ページ範囲:P.473 - P.476

 グローバル化が人々の健康に与える影響については,すでに様々な角度から論じられている.本稿では世界の4大週刊医学雑誌である,『BMJ(英国医師会雑誌)』,『Lancet』,『JAMA(米国医師会雑誌)』,『New England Journal of Medicine』の最近9年間(ただし1996~1998年はその後に比べて数が少ない)記事のうち「グローバル化が人々の健康に及ぼす影響」について取り上げた論文や記事を「グローバリゼーション」(globalization)と「健康」の2つのキーワードで検索し,レヴューした.上記の雑誌のうち,『Lancet』が最もヒットが多く,次いで『BMJ』であった.両誌とも英国の雑誌であり,米国の2誌のヒット数は少なかった.人々の健康を社会,経済,政治的側面から総合的に取り組もうとする,国の姿勢の反映と言えよう.

 本稿では『BMJ』と『Lancet』を中心にレヴューする.これらのすべてを記述するにはあまりに膨大な量なので,筆者が重要と考えた文献に絞ってのものである(表1).

New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・6

主観的・心理的因子・認知―社会と身体的健康をつなぐもの(2)

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.477 - P.482

 人間は,感情や思い,心を持つ動物である.しかし,同じく人間を対象にしていても,生物医学と臨床医学,そして社会疫学とでは,人間への光の当て方が違い,浮かび上がってくる人間の姿も違って見える.

 生物医学(bio-medical)モデルでは,患者の思いや主観的な評価は,どちらかと言えばあやふやなものであり,客観的に示されるデータに比べて“価値が低い”と見なされてきた.

「PRECEDE-PROCEEDモデル」の道しるべ・3

疫学・行動・環境アセスメント

著者: 神馬征峰

ページ範囲:P.483 - P.487

どこから読み始めるか?

 「PRECEDE-PROCEEDモデル」のテキスト2)をどこから読むか?

 前号で予告したとおり,まず,疫学・行動・環境アセスメントから読み始めることをお薦めする.理由は前回も述べたとおり,「PRECEDE-PROCEEDモデル」の大きな特徴がここにあるからである.

 どこから読むかは,どのアセスメントから始めるか,ともかかわってくる.社会アセスメントから始めるのが理想ではある.しかし,理想は理想,実用的とは限らない.

全国いきいき事例ファイル・11

保健と福祉が一つになった職場で東京都中野区の取り組み

著者: 城所敏英

ページ範囲:P.488 - P.490

地域の概況

 東京都中野区は,東京都特別区23区の西のほうに位置し,面積は15.59km2あり,23区中14番目の広さである.総人口は297,189人,人口密度は1km2あたり19,063人で,23区中1位である.人口の推移は,昭和20年から30年代にかけて爆発的に増加し,昭和45年には378,723人に達した.昭和47年以後は,人口は減少し始め,現在もわずかずつであるが減少している.中野区の性別年代別の人口構成は,男女とも20代の人口が多く,総人口の約20.5%を占めている.これは,都心に近く,交通の便が良いという地理的条件から,学生や若いサラリーマンなどが住んでいるためである.また一方,65歳以上の人が占める高齢化率も18.2%(平成15年1月1日現在)と,23区平均16.8%(平成14年1月1日現在)を上回り,年々増加する傾向にある.

 中野区の保健福祉行政

 中野区は,昭和50年に東京都から保健所が移管された.平成13年に保健衛生部と福祉部が統合され保健福祉部ができた.そのとき,保健所の対人サービス部門に福祉の機能が付加された保健福祉センター(当初は保健福祉相談所と称した)が生まれた.ここには,保健師等の保健分野の専門職の他,ケースワーカー,介護指導職といった福祉分野の職員も配置されている.

世界を見て,日本を見る.Public Health Opinion・6

感染症危機管理チーム(FETP)とその国際的ネットワーク(TEPHINET)

著者: 大山卓昭

ページ範囲:P.491 - P.492

 国立感染症研究所で感染症危機管理を担当している筆者が,各国での感染症危機管理チームとそのネットワークであるTEPHINET(training of epidemiology and public health intervention network),さらに1999年に誕生した日本の感染症危機管理チームである実地疫学専門家養成コース(field epidemiology training program: 以下FETP)について書かせていただきます.

 EUのEPIET

 最初に,筆者が日本のFETPを立ち上げるために派遣されていたヨーロッパ連合(EU)の感染症危機管理チーム(european programme for intervention epidemiology training: 以下EPIET)について述べます.EPIETとは,EU加盟国が自国の感染症危機管理システムを強化,加盟国間のネットワークを確立し,ヨーロッパ地域の公衆衛生の向上を目指して,1995年に誕生したシステムです.参加・協力施設はEU加盟国以外にも拡大し,筆者も日本から参加することができました.

フォーラム

健康の評価とその概念の検討

著者: 倉林しのぶ

ページ範囲:P.493 - P.495

 時代を問わず「健康」とは,人類の希求概念である.現代社会の中で,人々はやみくもに「健康」を追いかける.しかしながら,「健康とは何か」と問われた時,それに明確な回答を持つ人はそれほど多くはないだろう.人々は何を基準に「健康」を規定するのか.「健康」の概念をたどりつつ,「健康」とは何かについて再考してみたい.

 WHOにおける「健康」の定義

 現在,「健康」の概念として最も一般的なものは,1946年,世界保健憲章において提示されたものである.「健康とは,単に疾病がないとか虚弱でないとかいうばかりでなく,肉体的,精神的,社会的に完全に良好な状態である」.WHO(世界保健機関)におけるこの一文は保健・医療・福祉領域のスタート地点であり,前提とも言うべきものである.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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