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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生68巻9号

2004年09月発行

雑誌目次

特集 各方面で進む「ヘルスプロモーション」

ヘルスプロモーションは保健活動の専売特許ではない

著者: 星旦二

ページ範囲:P.672 - P.675

厚生労働省が示した「健康日本21」では,早世予防と健康寿命の延伸をヘルスプロモーションの視点から推進していくことを目指している.

 本稿では,健康が多要因で規定されることを踏まえて,今後とも質の高い健康レベルを維持増進させていくために必要となる“くらし”を重視するヘルスプロモーションの視点から,今後の展望について考察したい.

行政と市民の協働による多角的なヘルスプロモーションの展開

著者: 宮北隆志

ページ範囲:P.676 - P.679

「持続可能なくまもと」の実現に向けた市民参画と協働の芽生え

 だれもが自分らしく暮らすことができる,ふくらみのある豊かな生活を実現できる,そして,そのことを将来の世代にも保障できる「持続可能なくまもと」をめざす取り組みが着実に前進している.熊本市環境企画課,健康福祉政策課,農政企画課にそれぞれ事務局を置くパートナーシップ型の組織としての「環境パートナーシップくまもと市民会議」,「健康くまもと21推進市民会議」,「熊本市民食農応援団」に代表される市民参画と協働の取り組みが,熊本市役所内の他の部局にも拡がろうとしている(図1).

 これまでの「行政おまかせ」スタイルではなく,暮らしの中から地域に潜む様々な課題を見いだし,その課題を自らの問題としてとらえ,行政や地域の事業者との協働で問題解決を図ろうとする「市民」がその原動力である.また,そんな市民の思いを真摯に受けとめようとする若手・中堅の行政職員が,「生活者参画型」コミュニティへの転換に向けた環境づくりのために奮闘している.この過程は,ヘルスプロモーションの理念としてオタワ憲章(1986年)に謳われている「個人を取り巻く環境を健康にプラスになるように改善し,対処することができるようにするプロセス」であり,サンドバール宣言(1991年)が,行政担当者と地域のすべての構成員に求める「社会的,政治的,経済的,物理的側面における支援的環境づくり」の視点と一致するものである.

「いわて自然健康院」構想―健康をキーワードとする地域づくり

著者: 伊勢貴

ページ範囲:P.680 - P.684

 岩手県では平成11年8月に策定した「岩手県総合計画」1)における戦略プロジェクトの1つとして,「いわて健康院構想」(図)を盛り込んだ.

 これは当時,(社)東北経済連合会が提唱していた「健康院」構想巻末注)にヒントを得,岩手県なりの視点を加えて素案を作成したものである.

国土交通省が進める「柏まちづくりサロン事業」

著者: 熊谷道子 ,   横内猛 ,   荒巻麻衣子 ,   鹿野史子 ,   高木絹代 ,   中村素美

ページ範囲:P.685 - P.688

多様な主体の参加と連携による活力ある地域づくり

 国土交通省では,平成12年度から「多様な主体の参加と連携による活力ある地域づくりモデル事業」を実施しています.本事業は,各地域の創意工夫に基づく主体的な取り組みを,行政,地域住民,ボランティア団体,民間企業等の多様な主体が,参加と連携による新たな地域づくり活動の促進を目指しています.地域の実情や要望に応じたモデル的支援を実施することにより,これら地域の自主的な活動の「きっかけづくり」とすると共に,他地域の今後の参考となることを期待されているものです.

 これまで

 柏市注1)では,少子高齢社会から生まれる様々な課題への対応策として,平成10年から「柏市健康文化都市プラン」を推進しています(図1).同プランは,「33万市民すべてが健康で安心して暮らせるまちづくり」を掲げて,市民と行政との協働で推進していますが,過去5年間の事業展開の中で,多くの反省点と共に,ノウハウも積み上げてきました.

ヘルスプロモーションとIT

著者: 石原謙

ページ範囲:P.689 - P.692

 電子カルテを活用したり,地域医療情報ネットワークが発達すると,ヘルスプロモーションができるか? もちろん否である.ツールとしての電子カルテや電子的健康データベースに十分な量の標準化された,つまり二次利用できるデータが蓄積されなければ何も始まらない.そしてそれらの情報が信頼できる医療情報ネットワークを通じ,医療関係者や時には患者自身により利用され,情報によって医療人や患者自身をエンパワメントしなければ,むしろ入力に手間がかかり,高価な初期導入費用と保守管理のための人件費のみが負担となってのしかかってくる.

 しかし,この問題点を最初から認識し,電子カルテや地域医療ネットワークを何のためにどう使うのかという目的を具体的に明確化している地域や組織体の場合には,ITの活用は地域住民のヘルスプロモーションに実に有用となる.筆者の知る限りでは,自治体でこれを10年前という早期から実現し,現在実効あるモデルとなっているのは,兵庫県加古川市である.当市の「保険医療情報システム」は検査情報の共有を主体としているが,すでに数万枚のICカードを発行して日常診療に活用しているなど,着実な進歩を遂げていることも特筆すべきであろう.その概要は,ホームページ(http://www.kakogawa.or.jp/)などから知ることができる.

ノーマライゼーションとヘルスプロモーション―特殊教育から特別支援教育へ

著者: 西牧謙吾

ページ範囲:P.693 - P.694

今どきの子育て・子育ちの結果は?

 厚生労働省発表の2003年日本の合計特殊出生率は1.29と,少子化に歯止めがきかない.平成14年度に児童相談所が処理した養護相談のうち虐待相談の処理件数は23,738件で,10年間で10倍の伸びとなっている.

 文部科学省調査によると,平成13年度の不登校による長期欠席者は,小学校で275人に1人(0.36%),中学校では36人に1人(2.81%).通常学校に在籍する児童生徒の約6%が,LD(Learning Disabilities:学習障害),ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠陥多動性障害),高機能自閉症の可能性がある.引きこもりは推定100万人以上.フリーターは2001年で417万人,同世代の学生や主婦を除く若者の20%にあたる.

学校現場が推進するヘルスプロモーション

著者: 大川真弓

ページ範囲:P.695 - P.697

 現在,子どもたちを取り巻く生活環境は複雑であり,子どもたちが抱える悩みや不安,疾病などの健康問題も多様化している.一方,地域社会では,地域の問題を地域のすべての住民で解決しようとするヘルスプロモーションの理念に基づいたまちづくりが推進されている.

 このような現状の中,本校では「一人の健康はみんなで守ろう」という学校保健目標を設定し,学校・家庭・地域とが連携し,共に学び合える健康教育を展開していくことによって,あらゆる生活の場で子どもたちの健康を支援していきたいと考えた.

警察が取り組むヘルスプロモーション

著者: 平岡敏夫

ページ範囲:P.698 - P.699

 警察というと,一般的に事件・事故捜査というイメージが強いのですが,事件・事故の“防止”にも力を入れています.本県では,高齢者の交通事故,転倒・骨折事故等の防止を図り,健康で生きがいのある長寿社会を目指すことを目的に,県健康福祉部と県警察本部が連携し,ギブアンドテイクによる「交通安全・健康声かけ活動」を展開し,高齢者の交通事故防止に成果を上げていますので,本稿にてご紹介します.

 高齢化の実態と交通情勢

 本県では,過疎・少子高齢化の進展が深刻化しており,高齢化率は26.4%(平成15年推計人口),高齢者の運転免許人口比率は16.5%と,いずれも全国1位であり,交通情勢にも大きな影響を及ぼしています.

日本ヘルスプロモーション学会の展望

著者: 島内憲夫

ページ範囲:P.700 - P.702

学会設立の目的

 日本ヘルスプロモーション学会は,2002年8月3日に誕生したばかりである.日本ヘルスプロモーション学会の目的は,「21世紀を生きる人々の健康を創造するための科学的でかつ人間的な知識と技術を開発すると共に,健康に価値を置く人々のハートを育て,健康で幸せな社会を構築すること」にある.

 本学会設立のねらいは,学会が開発するヘルスプロモーション・プログラムへの参加を国民に働きかけ,これにより個人・グループ・家族・学校・職場・地域そして政策決定者の健康推進活動へのエンパワメントを高め,個人のコントロールを超えた健康づくりへの各界・各層における運動を展開することにある.その理由は,ヘルスプロモーションが保健・医療・福祉の分野にとらわれない新たなパラダイムを備えた分野であり,常に最上位の概念だからである.また,本学会は単なる研究発表の場としてだけでなく,行動する学会を目指している.

視点

大阪市における公衆衛生行政の展開

著者: 關淳一

ページ範囲:P.666 - P.667

 大阪市は,古くから人・もの・情報の交流拠点として発展し,江戸時代には「天下の台所」とも言われ,近世・近代を通じて,日本の産業経済の発展に大きな役割を果たしてきました.また,自由で進取の気象に富み,特色ある学術・文化・芸能を育んできた伝統が今も生きる都市でもあります.近年は,魅力ある国際集客都市としてのまちづくりが進み,内外から多くの観光客を迎えてにぎわう,新しい顔も持つようになりました.

 このような都市の活動と市民生活を支える都市行政の一環として,公衆衛生の分野においても,健康寿命の延伸や新興感染症への対応等の新しいニーズに対応した施策が,ますます求められています.本稿では,これらの問題に対する大阪市の先進的な3つの取り組みについてご紹介したいと思います.

特別記事

[インタビュー]李WHO事務局長が語る,公衆衛生のビジョン

著者: 李鐘郁 ,   篠崎英夫

ページ範囲:P.703 - P.705

篠崎 ようこそおいでくださいました.お久しぶりです.WHO(世界保健機関)事務局長としての初の日本公式訪問ですね.今回は中国・日本・オーストラリア・シンガポールを回るということで,中国も初めての訪問でしたか?

 李 はい,中国では胡錦濤中国共産党総書記・国家主席や,温家宝首相ともお会いしました.近年中国では台湾問題やSARS・鳥インフルエンザ問題など,WHOとしても課題が多くあります.

 篠崎 記者発表を拝聴しましたが,鳥インフルエンザのワクチンができそうなのですね.

 李 はい,今年の11~12月頃に.今ワクチン会社と話を進めています.マーケティングが大切なので,様々な国と連携して,パンデミック・ワクチンを研究しています.H5N1ワクチンで,鳥用ではなく,ヒト用のものです.

特別寄稿

「伊豆高原アートフェスティバル」で地域づくりを楽しむ

著者: 宮迫千鶴

ページ範囲:P.707 - P.710

 年1回,5月のさわやかな緑の風の中で行ってきた「伊豆高原アートフェスティバル」は,2004年の今年で,第12回目を迎えた.伊豆高原の別荘地という特殊な条件の町で,おもに「ホームギャラリー」と名づけた自宅を開放して自由な展覧会をするという試みだが,今年は地元の小・中・高校を含めて86カ所のギャラリーができた.

 参加資格はアマチュアとプロの区別なく,ジャンルは自由,「5点以上の展示作品」があればよいというものだ.あちこちで行われているアートフェスティバルのほとんどはプロの作家たちの発表の場であるが,伊豆高原アートフェスティバルはその大半がアマチュアの人たちであり,現在の日本でもめずらしい活動になっている.

食品のリスクをどう考えるか―BSE対策に見る日米比較

著者: 岩﨑賢一

ページ範囲:P.711 - P.716

 日本と米国の牛肉は,いったいどちらが「安全」なのか.昨年12月23日,米国ワシントン州の乳用種の高齢牛が牛海綿状脳症(BSE)の疑いがあるとベネマン農務長官が発表して約7カ月(2004年7月末時点).日本政府は,米国産牛肉や牛由来の食品などの輸入停止措置を続けている.日米間で4月から専門家と厚生労働省や農林水産省などの実務者による3回の協議を経て,「夏めどの合意を目指す」ための作業が続けられてきた.日本では,食肉処理の実情や科学的考察を差し置いて,政治家,マスコミ,消費者を含め,「検査=(イコール)安全」という考えが非常に強い.

 本稿が『公衆衛生』誌に掲載される頃には,米国産牛肉の輸入再開問題は,ある程度の道筋が示されていると思われる.BSE問題をテーマに,日本と米国を比較しながら,何が食品の安全かを考えてみる.

連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・6

ポリオ根絶に対する取り組み(4)

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.668 - P.669

 前号では,何とかポリオワクチン購入に必要な資金調達に目途がついたことを書いて終わったが,実はさらに乗り越えなければならない大きな課題があった.

 中国のポリオ感染の疫学情報としては,山東省に派遣されていたJICAの専門家(千葉氏など)の活動により,同省においてはポリオ患者の8~9割が第2子以降の小児であることがわかっていた.さらに,その後のWHOの調査でも,この特徴が山東省に限らず,中国全体に見られることがわかった.理由は明瞭で,中国の「一人っ子政策」が原因だった.この政策のため,中国では,第2子以降の子どもは予防接種台帳に登録されていなかった.したがって,予防接種は第1子のみで,第2子以降は受けないことになる.

公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・6

ベトナム戦争中の売春宿

著者: 桑原史成

ページ範囲:P.670 - P.670

 ベトナム戦争は,1975年4月30日の南ベトナムの首都・サイゴン(現ホーチミン・シティ)の陥落で終息した.東西の冷戦で最も激しく衝突した現場は,ベトナムの戦場であると言っても過言ではない.

 戦争の中期(1968~1973年)にアメリカ軍は約50万人余の将兵を派遣していた.この頃の南ベトナムの夜の街や酒場は,ひときわ繁栄していたことは言うまでもない.

Rapid Review & Topics

最近の子育て支援プログラムとその評価に関する内外の動向

著者: 加藤則子

ページ範囲:P.717 - P.720

 近年,社会情勢の変化に伴って子育てはますます難しいものになってきている.幼少期の体験がその人の人格を大きく左右するということは,科学的に明らかになりつつある.現在,少年事件が社会を震撼させ,キレる子どもたちが学校では大きな問題になっているが,児童虐待や早期知育教育などの幼少期の不適切なかかわりは,キレる子をつくるということが証明されている1).それと同時に,小さい子どもとの接触経験の少なさ,子育て家庭の孤立化,「子育てでの負担感」や「イライラ感」,育児不安を訴える母親の急増等,育児環境が悪化していることが危惧されている2)

 このような中で,育児プログラムを提供して育児支援に資することの必要性が強調されてきている2).本稿においては,国内外における育児プログラムに関する文献を,最近5年間を目安にレビューしたい.報告されている文献は,わが国のものは育児プログラムの内容紹介に類するものが多い3~8).わが国の育児プログラムに関しては,その評価も含めて報告されているものはあまり見られず,文献をレビューしながら評価を加えているもの9)が散見される.一方,海外の報告を見ると,育児プログラムを実践した上での評価が主となっている10~20)

New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・9

社会のありようと健康(2)―ソーシャル・キャピタル

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.721 - P.727

誰にでも仕事がしやすいとか,居心地がよいとか感じる帰属集団や職場,地域(以下,これらを束ねて“コミュニティ”とする)と,そうでないコミュニティとがあるだろう.一般に周りの人々を信頼することができ,困った時にはお互いに助け合う関係(互酬性)があるコミュニティのほうが,働きやすく住みやすい.そして,積極的な交流のあるコミュニティのほうが,問題の共有や解決のためのアイデアが生まれ,共に問題解決のための行動に移すことにつながる.その結果,いっそう連帯感や信頼感が高まるという良循環が生まれる.

 コミュニティにおいて,構成員が持っているこのような信頼感や互酬・互助意識,ネットワークへの積極的参加などが“ソーシャル・キャピタル”と呼ばれるものである.共通利益のために協力する社会的能力1),組織文化や組織の底力2),ご近所の底力や共同体の効力感(collective efficacy3)),社会統合・結合(social integration/cohesion4))などと表現されるものと重なり合う概念である.

「PRECEDE-PROCEEDモデル」の道しるべ・6

社会アセスメント

著者: 神馬征峰

ページ範囲:P.728 - P.732

健康からQOLへ

 “Health is, therefore, seen as a resource for everyday life, not the objective of living”「……だから,健康というのは日々の暮らしの資源の一つであり,人生の目的ではない」.

 オタワ憲章はこう明記している1).重い病気に悩まされている人たちは,健康こそ人生の目的と言い張るかもしれない.そういう見方があってもよい.しかし,多くの人にとって,このオタワ憲章の健康のとらえ方は福音の響きを持っているのではあるまいか?

衛生行政キーワード・1【新連載】

ヒト胚の取扱い最終報告書―(総合科学技術会議)

著者: 迫井正深

ページ範囲:P.733 - P.735

概 要

 人クローン胚を含めたヒト胚の研究における取扱いを検討してきた総合科学技術会議・生命倫理調査会が平成16年7月13日,ヒト受精胚と人クローン胚について,それぞれ研究目的等を厳しく限定した上で,その研究のあり方を示す最終報告書をまとめた(表).報告書は,ヒト胚の作成・利用に関する初の包括的な見解であり,厳しい条件付きながら初めて人クローン胚の作成・利用に道を開くことや,報告書とりまとめ方針について採決が行われたこと等から,社会の大きな関心を集めた.

赤いコートの女・1【新連載】

女性ホームレス

著者: 宮下忠子

ページ範囲:P.736 - P.738

 「人ってどんどん堕ちていく」.波さんは,ラーメンの汁をすすり終わり一息つくと,ポツリと言った.私は,はっとしながら「じゃあね,登るしかないでしょう」と,波さんの上気した顔を見つめて言った.

 「そう,底なのよ.登るしかないか」.穏やかな眼差しだった.私は内心驚いていた.

 女性ホームレスの波さんと知り合って数カ月が経過していた.いつもうまく意思の疎通が図れない関係が続いていた.波さんの本音が今やっと聞けたと感じた.そして,都会の片隅の公園で出会った波さんと,この時からとことん付き合うことになってしまった.それは私自身を見つめ直すことの始まりでもあった.

世界を見て,日本を見る.Public Health Opinion・9

フランスにおける公衆衛生教育

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.739 - P.740

 筆者は1991年度フランス政府給費留学生として,フランス国立公衆衛生大学校(Ecole Nationale de la Santȇ Publique: 以下ENSP)に留学した.本稿ではENSPにおける公衆衛生教育について紹介してみたい.

 まず,フランスの公衆衛生学教育であるが,大学における卒前教育では医学部の第2,第3学年時に公衆衛生学と産業医学(法医学の一部門),あるいは臨床系における関連教育(例:小児科における小児保健)として行われている.公衆衛生学の標準的な教科書であるSante´ Publiqueから,その主な項目を例挙すると次のようになっている.保健医療組織(医療保険制度,社会福祉制度),疫学,公衆衛生活動(保健医療計画,予防,健康教育,保健医療分野における協働,評価方法),環境科学,薬物中毒,事故(交通事故,屋内における事故,労働災害),予防医学(感染症,がん,循環器疾患,糖尿病,精神保健),社会医療活動(母子保健,高齢者,障害者,貧困と公衆衛生),栄養と公衆衛生(世界の食糧問題,食品衛生),発展途上国における公衆衛生.

報告

老人保健法に基づく機能訓練事業の意義と保健師の役割の再検討―参加者の自己評価より

著者: 山田典子 ,   佐藤玲子 ,   半田祐二朗 ,   真船拓子 ,   杉山克己

ページ範囲:P.741 - P.744

 老人保健法に基づいて各自治体で行われている機能訓練事業は,介護保険法の施行と並行し,閉じこもり・孤立などの社会的障害の回復,予防に重点を置くこととなった.同時にその対象者も,介護保険認定外の虚弱老人が中心になる方向へと移行した.

 これらが追い風になったのか,それぞれの自治体政策決定側と直接運営に携わる保健師から,「機能訓練事業の効果を評価したい」という要求が高まっていった.例えば,佐藤らは経験的に感じていた心理社会面での改善の評価を試みている1).また,島田らはQUIKを用いて機能訓練事業のQOL改善の効果を述べており2),横塚らはQUIKの下位尺度の分析から,機能訓練事業は利用者に自信を持たせ障害受容促進に効果があるとした3).また,黒田は関係者も交えた評価を試み,家族や民生委員などの期待が高い一方で,これらの協力のないところでは自力歩行できないと参加継続が難しいことを示した4).さらに,河野らは機能訓練事業への参加群と非参加群を前向きコホート法で比較検討しており,その結果,機能訓練事業は認知機能や抑うつの悪化予防に効果があり,閉じこもり予防や介護予防を期待できるとした5)

資料

問診票による学校結核健診の地域差―保健所情報の活用とその効果の検討

著者: 財津裕一 ,   松原智子

ページ範囲:P.745 - P.751

平成15年度から開始された問診票による対象者絞り込みと重点的検査を行う学校結核健診を機能させるためには,問診票による情報の精度確保や保健所情報の活用など,いくつかの検討課題がある.

 福岡県田川地区においては,保健所,学校,医療などの関係者でこれらの課題について協議し,保健所情報を活用しての健診を行った.本稿では他地区との比較を交えながらその結果を報告し,あわせて福岡県下の地域差の検討を行う.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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