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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生69巻11号

2005年11月発行

文献概要

特集 感染症情報

HIV感染予防対策と情報―性生活習慣病予防対策における「施策評価」「リスクコミュニケーション」ツールとしての情報活用

著者: 橘とも子1

所属機関: 1国立保健医療科学院人材育成部

ページ範囲:P.895 - P.899

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はじめに

 1. HIV感染予防対策推進における自発的HIV検査相談事業の重要性

 1981年にエイズ(後天性免疫不全症候群)患者が米国で初めて報告されて以来,日本において実施されてきたHIV予防対策は,①開始導入期,②エイズ予防法(後天性免疫不全症候群の予防に関する法律)期,③感染症新法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律:平成11年施行)期,という3期に大別できる.①,②期においては,HIV/AIDSに対する差別・偏見対策が前面に立った社会予防的観点,言うなれば「管理」から対策が開始され,基盤が整備された.次いで③期に入った今日では,HIV感染はHAART(=highly active antiretroviral therapy)の普及等により,もはやすでに死に至る病ではなく,慢性性感染症の一つとして位置づけられるようになり,人権の尊重や感染早期発見・発症予防手段の出現を背景として,個人が主体となって行う予防行動を,専門家等が「支援」する法的体系が整えられたと言える.

 検査相談施策は,検査相談サービスの利用者にとってカウンセリングや医療への架け橋となる等,さまざまなケアや支援につながる入り口(gateway)となる点からも,重要なHIV感染予防施策1)と位置づけられている.現在,保健所等を拠点に全国提供される自発的HIV検査・相談(=以下「HIV-VCT: Voluntary counseling and testing」)事業の提供窓口は,2003年10月現在,653か所設置済みである.しかしながら,HIV感染者・AIDS発症患者とも増加しているにもかかわらず,検査総数は1996年以降横ばいと報告されており2),また新規AIDS患者の80%は感染を知らなかった(2000年)3)との指摘から,HIV-VCT推進策が求められている.

参考文献

1) WHO: Rapid HIV Tests. Guidelines for use in HIV testing and counseling services in resource-constrained settings. Geneva, 2004
2) 中瀬克己, 嶋貴子, 今井光信:保健所での検査・予防活動. The Journal of AIDS Research6(3):118-122, 2004
3) 木村哲(主任研究者):エイズ診療拠点病院における日和見感染症・エイズ指標疾患の動向. 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「日和見感染症の治療に関する研究」平成14年度研究報告書. pp2-11, 2003
4) 岩室紳也:HIV対策とリスクコミュニケーション. 「性生活習慣病」という概念の必要性. 公衆衛生68: 529-533, 2004
5) 橘とも子・他:定点医療・検査機関におけるサーベイランス. 平成10年度厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV感染症の疫学研究」平成10年度研究報告書. pp193-199, 1999
6) エイズ・性感染症予防指針取り組み状況調査報告. 保健所の対応不足明らかに. 週刊保健衛生ニュース1315: 38-39, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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