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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生69巻11号

2005年11月発行

文献概要

連載 日本の高齢者―介護予防に向けた社会疫学的大規模調査・11

ソーシャル・キャピタルと健康

著者: 市田行信1 吉川郷主1 松田亮三2 近藤克則3 平井寛4 斎藤嘉孝5 村田千代栄6 竹田徳則7 石井加代子8 中出美代9 「健康の不平等」研究会

所属機関: 1京都大学地球環境学大学院 2立命館大学産業社会学部 3日本福祉大学社会福祉学部 4日本福祉大学COE推進室 5国際医療福祉大学 6浜松医科大学医学部健康社会医学講座 7星城大学リハビリテーション学部 8慶應義塾大学大学院商学研究科 9愛知学泉短期大学食料栄養学科

ページ範囲:P.914 - P.919

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多くの公衆衛生関係者は,ヘルスプロモーションなどの住民・職員を巻き込んだ運動が,進みやすい地域・職域と,そうでないところがあると感じているのではないだろうか.それを決める要因には様々なものが考えられるが,人々のまとまりの良さは重要な要素であると思われる.一般的に,お互いを信頼することができ,困ったときには助けあう関係があり,そして,ふだんから積極的な交流のあるほうが,住民間での協力的な行動につながりやすい.こうした要素がソーシャル・キャピタル注1)と呼ばれ,多くの分野で注目されている.

 ソーシャル・キャピタルとは,簡潔に表せば「人々の自発的協力を促す要素」を指し,これが豊かなところほど,社会の様々な側面で良い結果を導くという考えである.公衆衛生の分野でもソーシャル・キャピタルが豊かな地域で死亡率が低いこと1,2),日本の都道府県レベルでもソーシャル・キャピタルが豊かなところで,65歳以上女性の平均余命が長く,合計特殊出生率が高いこと3),などが報告されている4)

参考文献

1) Kawachi I, Kennedy BP, et al: Social capital, income inequality, and mortality. Am J Public Health 87(9): 1491-1498, 1997
2) Veenstra G: Social capital and health (plus wealth, income inequality and regional health governance). Soc Sci Med 54(6): 849-868, 2002
3) 内閣府国民生活局:ソーシャル・キャピタル;豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて. 内閣府, 2003(http://www.npo-homepage.go.jp/report/h14/sc/1.pdf)
4) 近藤克則:New Public Healthのパラダイム―社会疫学への誘い・9 社会のありようと健康(2)―ソーシャル・キャピタル. 公衆衛生 68: 721-727, 2004
5) Portes A: Social capital; Its origins and applications in modern sociology. Annual Review of Sociology 24: 19, 1998
6) Putnam R: Making Democracy Work; Civic Traditions in Modern Italy. New Jersey, Princeton University Press, 1993[河田潤一(訳):哲学する民主主義 伝統と改革の市民的構造. NTT出版, 2001]
7) Szreter S, Woolcock M: Health by association? Social capital, social theory, and the political economy of public health. Int J Epidemiol 33(4): 650-667, 2004
8) 近藤克則, 平井 寛・他:調査目的と調査対象者・地域の特徴. 連載「日本の高齢者―介護予防に向けた社会疫学的大規模調査」. 公衆衛生69(1): 69-72, 2005
9) Subramanian SV: Multilevel methods for public health research. Kawachi I, Berkman LF: Neighborhoods and Health. pp65-111. New York, Oxford University Press, 2003
10) Subramanian SV, Kawachi I: Does the state you live in make a difference? Multilevel analysis of self-rated health in the US. Soc Sci Med 53: 9-19, 2001
11) Ichida Y, Kondo K, Hirai H, et al: Income distribution, social capital, individual socioeconomic status, and self-rated health of the aged in Chita peninsula, Japan; A multilevel analysis. The XVIIth IEA World Congress of Epidemiology, 2005 (http://www.nihonfukushi-u.jp/coe/report/index.html)
12) Kawachi I: Social cohesion, social capital, and health. Berkman LF, Kawachi I: Social epidemiology. pp174-190. New York, Oxford University Press, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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