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連載 日本の高齢者―介護予防に向けた社会疫学的大規模調査・2
高齢者の心身健康の社会経済格差と地域格差の実態
著者: 吉井清子1 近藤克則1 平井寛2 松田亮三3 斎藤嘉孝4 「健康の不平等」研究会
所属機関: 1日本福祉大学社会福祉学部 2日本福祉大学COE推進室 3立命館大学産業社会学部 4明治学院大学社会学部
ページ範囲:P.145 - P.148
文献購入ページに移動また,近年,健康の地域間差の要因としての地域の社会経済的特徴に関する研究が注目されてきている3,4).日本でも,死亡率や自殺率の地域差研究を中心に地域の社会経済状況に着目した研究が散見される5,6)ものの,未解明な点が多い.また,これまでの健康の地域間差の研究は,死亡率などの既存統計を用いたものがほとんどであり,今回の分析で用いた主観的健康感と抑うつの2つの指標を,10を超える自治体で比較した研究は見あたらない.主観的健康感は,多くの縦断研究で死亡の予測力を持つことがほぼ確立している7~9).さらに,うつは介護予防の重点の1つにも挙げられ,自治体レベルでの対策が重視されてきている10).これらのことからも,主観的健康感とうつの地域差の分析は重要と思われる.
以上から,本稿の目的は次の2点である.第一に,地域在住高齢者のSESと主観的健康感・うつとの関連を明らかにする.第二に,住民の健康度の自治体(市町村)間格差が,どの程度存在するのかを検証する.以上の分析を,前号で紹介した大規模(約3.2万人)で市町村比較が可能な一般高齢者調査データ注)を利用して行う.
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