文献詳細
文献概要
特集 こころの健康問題への挑戦
自殺予防運動の実践とその評価
著者: 本橋豊1
所属機関: 1秋田大学医学部社会環境医学講座健康増進医学分野
ページ範囲:P.358 - P.362
文献購入ページに移動自殺予防の問題が公衆衛生学の課題として社会的に論じられるようになったのは,決して古いことではない.わが国で本格的に自殺予防が国のプログラムとして認められたのは,2000年に開始された健康日本21においてである.その後,秋田県,青森県,岩手県,鹿児島県などで,メンタルヘルスの観点から地域の自殺予防活動が活発に展開されるようになった.このことは,わが国において,公衆衛生活動としての自殺予防対策が動き始めたと言うことができる.
一方,2004年9月にWHOは次のようなメッセージを世界に向けて発信した1).「自殺は大きな,しかしその大半が予防可能な公衆衛生上の問題である.自殺は暴力による死の約半分を占め,毎年約100万人以上の死亡原因となっており,何十億ドルもの経済的損失をもたらしている」.心の問題は個人の問題であり,行政が介入すべきでないというような意見が唱えられやすいのであるが,WHOは明快に自殺を「公衆衛生学の問題である」と断言したのである.21世紀における公衆衛生学的課題としての自殺予防対策が,国際的にも十分に認知されたと言うことができる2).
参考文献
掲載誌情報