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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生69巻5号

2005年05月発行

文献概要

特集 こころの健康問題への挑戦

地域における「うつ対策」の実践と保健所の役割

著者: 宇田英典1

所属機関: 1鹿児島県川薩保健所

ページ範囲:P.367 - P.371

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厚生労働省においては,平成16年1月に作成した「うつ対応マニュアル」の中で,地域保健でうつ対策に取り組む理由として,自殺の重大な背景要因の1つにうつ病が存在していること,しかもうつ・うつ病は頻度が高く増加傾向にあること,公衆衛生上見逃せない重要な病気であること,地域住民が相談・受診しやすい環境づくりを進めるためには地域ぐるみの取り組みが必要であること,これまで新潟県や岩手県などいくつかの自治体で実績が上がりつつあること等を挙げ,行政の積極的な取り組みを求めている1)

 しかしながら,自殺やうつという表現により,地域のイメージ悪化が懸念される,市町村合併を控えてゆとりがない,ノウハウがない,指導者や相談できる体制が整っていないといった様々な理由から,自殺対策やうつ対策に関して地域行政の位置づけは高くなく,うつ対策に取り組む自治体の数はいまだに少ない.

 このように,ニーズはありながら事業が進まない,展開に困難が伴う分野において,専門的・技術的拠点として保健所の果たす役割は大きい.

 本稿では筆者が鹿児島県伊集院保健所や川薩保健所において,管内市町と協働で平成13年からうつ対策に取り組んできた経験や,全国の先進的取り組み事例を参考にしながら,保健所が担うべき役割や機能等について検討してみたい.

参考文献

1) 厚生労働省「地域におけるうつ対策検討会」:うつ対応マニュアル―保健医療従事者のために. 平成16(2004)年1月
2) 今田寛睦(主任研究者):行政担当者のための自殺予防マニュアル―「自殺と防止対策の実態に関する研究」をもとに. 平成16(2004)年4月
3) 厚生労働省「地域におけるうつ対策検討会」:うつ対策推進マニュアル―都道府県・市町村職員のために. 平成16(2004)年1月
4) 鹿児島県伊集院保健所:地域におけるこころの健康づくり対策マニュアル―自殺防止対策を展開するために. 2003年3月
5) 大野裕(主任研究者):うつ状態のスクリーニングとその転帰としての自殺の予防システム構築に関する研究, 総合研究報告書. 平成11~12年度 厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究事業, pp3-24, 2002年3月
6) 川上憲人(主任研究者):心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究. 宇田英典, 中俣和幸・他:自殺と防止対策の実態に関する研究, 平成14年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)研究協力報告書, pp93-125, 2003年

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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