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越境する公衆衛生
[対談]「幸福」ってなんだ?―進歩・グローバリゼーション・平和のゆくえ
著者: 関野吉晴1 長倉洋海
所属機関: 1武蔵野美術大学
ページ範囲:P.385 - P.393
文献購入ページに移動競争社会とスピードの関係
関野 今日の対談は,“「幸福」ってなんだ?”という大きなテーマですね.最初に競争社会とスピードについて話しますか.
僕が「グレートジャーニー」の旅をしながら,「スピード」ということで一番印象的なのはアマゾンです.だいたいどこかの村に入る時は,いつも「泊めてください.食べさせてください.何でもしますから」と言って入っていきます.最初にアマゾンの先住民に会った時も,僕は「食べさせてください」と言って世話になりました.彼らは,僕がパパイヤが好きだと知ると優先的にくれたり,とても親切にしてくれます.しかし「何でもしますから」と言うものの僕は何もできなくて,森に入っても大人の足手纏いになるだけで,負い目を感じるしかないんですよ.でも1つだけ,それを感じなくてすむことがあった.狩りや魚取りに一緒に行き,陽が傾いてくると暗くなるから帰ろうということになる.彼らは太陽の動きで時間を見ているのです.ところが雲が厚い時,雨の時は時間がわからない.すると僕のところにやってきて「太陽はどこにあるか」と聞く.僕は自分の腕時計を見て「太陽はここだ」と言うと「よくわかるな」と(笑).太陽は彼らにとって,光,エネルギーとしても大切なのですが,時計としての役割も持っている.また1年という時間の感覚などは,雨季が終わって次の雨季が終わったから1年が経ったと自然にわかるわけです.
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