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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生69巻5号

2005年05月発行

文献概要

連載 日本の高齢者―介護予防に向けた社会疫学的大規模調査・5

地域在住高齢者の趣味活動と社会経済的地位

著者: 竹田徳則1 近藤克則2 平井寛3 斎藤嘉孝4 吉井清子2 村田千代栄5 松田亮三6 「健康の不平等」研究会

所属機関: 1茨城県立医療大学保健医療学部 2日本福祉大学社会福祉学部 3日本福祉大学COE推進室 4明治学院大学社会学部 5名古屋大学医学系研究科公衆衛生学 6立命館大学産業社会学部

ページ範囲:P.406 - P.410

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高齢者は,仕事や家事,社会活動など,従来から担ってきた活動からの引退で自由な時間が増える.その時間をどのように過ごすかが,高齢者のQOL(Quality of Life)だけでなく,介護予防においても重要である.なぜならば,趣味や余暇活動(以下趣味活動)とそれを通じて期待される知的活動や社会的ネットワークの多寡が,閉じこもりや痴呆発症の因子の1つとして近年注目されているからである1~5).欧米では,趣味活動と生活満足度や幸福感とは関連し,老後の不安や無力感を緩衝する可能性が報告されている6~9).わが国でも横断調査において,身体機能やQOLの維持・向上,社会参加の促進などとの関連が報告されている10~12).また,人間関係と健康との関連も指摘されている13)

 高齢者が近所の人たちと交流する方法としての趣味活動の割合は,日本では25.4%,韓国では24.1%,ドイツでは18.5%,米国では18.1%,スウェーデンでは15.3%で,国や地域による違いも大きい14).わが国で複数の自治体に在住する高齢者を対象として,趣味活動の実態や心理・社会的側面との関連,社会経済的地位(Socioeconomic Status: SES)との関連を報告したものは未だ少ない.

 そこで本連載5回目の目的は,次の3点とする.第一に,地域在住の高齢者の趣味活動の実態を明らかにする.第二に,趣味活動と心理・社会的側面の関連を検討する.第三に,趣味活動と社会経済的地位との関連を明らかにすることである.なお,用いたAGES[Aichi Gerontological Evaluation Study(愛知老年学的評価研究)project]データの調査方法,分析対象者,分析で用いた社会経済的地位などの詳細は,既出論文を参照されたい15)

参考文献

1) Wilson RS, et al: Participation in cognitively stimulating activities and risk of incident Alzheimer disease. JAMA 287: 742-748, 2002
2) Verghese J, et al: Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med 348: 2508-2516, 2003
3) Scarmeas N, et al: Influence of leisure activity on the incidence of Alzheimers disease. Neurology 57: 2236-2242, 2001
4) Colette F, et al: Social and leisure activities and risk of dementia; A prospective longitudinal study. JAGS 43: 485-490, 1995
5) Wang HX, et al: Late-life engagement in social and leisure activities is associated with a decreased risk of dementia; A longitudinal study from the Kungsholmen Project. Am J Epidemiol 155: 1081-1087, 2002
6) Kelly JR, et al: Later-life satisfaction; Does leisure contribute? Leisure Sciences 9: 189-200, 1987
7) Wynne RJ, et al: Life span approach to understanding coping styles of elderly. Education 115: 448-455, 1995
8) Herzog AR, et al: Activities and well-being in old age; Effects of self-concept and educational attainment. Psychology and Aging 13: 179-185, 1998
9) Ragheb MG: Leisure and perceived wellness; A field investigation. Leisure Sciences 15: 13-24, 1993
10) 佐藤秀紀・他:地域高齢者の社会活動への参加状況. 日本の地域福祉14: 81-89, 2000
11) 片岡優子・他:地域在住高齢者の身体機能維持と趣味活動の関連に関する研究. 日本保健福祉学会誌5: 35-40, 1998
12) 中村好一・他:在宅高齢者の主観的健康感と関連する因子. 日本公衛誌49: 409-415, 2002
13) 近藤克則:New Public Healthのパラダイム 社会疫学への誘い3 人間関係と健康. 公衆衛生68: 224-228, 2004
14) 内閣府(監修):高齢者の生活と意識―第5回国際比較調査結果報告. ぎょうせい, 2002
15) 近藤克則・他:日本の高齢者―介護予防に向けた社会疫学的大規模調査① 調査目的と調査対象者・地域の特性. 公衆衛生69: 69-72, 2005
16) 竹田徳則・他:居宅高齢者の趣味生きがい 作業療法士による介護予防への手がかりとして. 総合リハ(印刷中)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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