文献詳細
特集 自然災害と公衆衛生活動
文献概要
国連は1990年から10年間を「国際防災の10年」と定めて,自然災害に対する予防面での取り組み強化を図ってきたが,その成果を継承発展させるために,2000年に国際防災戦略(ISDR)プログラムを設立した.国際防災戦略は,現代社会における災害対応力の強いコミュニティの形成,災害後の対応中心から災害前の予防・管理への進化,を主たる目的とし,活動の4つの柱として,①現代社会における災害リスクについての普及・啓発,②災害防止に対する公的機関の主体的参画の促進,③災害に強いコミュニティ形成に向けた地域住民の参画の促進,④社会経済的損失の減少に向けた取り組みの強化,を掲げている.
災害は「被災地の外部から多大な支援を必要とするような規模の損壊,生態系の破壊,人命喪失,人々の健康および保健医療の悪化をもたらす出来事」と定義される(WHO:世界保健機関より).災害をもたらすのは,自然現象の物理的な大きさと,被災地域が備える対処能力との相対関係である.地震など自然現象の発生を防止することは難しいが,事前の活動により,そのインパクトを吸収して災害に至ることを防止したり,災害効果を軽減することは可能である.災害は「1回の不運」ではなく,繰り返すサイクルである.災害のない穏やかな時期は「災害間期」に過ぎず,この時期にこそ万全・周到な備えをしなければならない(図1).
災害は「被災地の外部から多大な支援を必要とするような規模の損壊,生態系の破壊,人命喪失,人々の健康および保健医療の悪化をもたらす出来事」と定義される(WHO:世界保健機関より).災害をもたらすのは,自然現象の物理的な大きさと,被災地域が備える対処能力との相対関係である.地震など自然現象の発生を防止することは難しいが,事前の活動により,そのインパクトを吸収して災害に至ることを防止したり,災害効果を軽減することは可能である.災害は「1回の不運」ではなく,繰り返すサイクルである.災害のない穏やかな時期は「災害間期」に過ぎず,この時期にこそ万全・周到な備えをしなければならない(図1).
参考文献
1) アジア防災センター:国際防災戦略の進捗状況. 国際防災戦略ホームページ(http://www.adrc.or.jp/ISDR/index.html)
2) 総務省消防庁:都道府県の地域防災力・危機管理能力についての自己評価結果. 平成16年6月21日総務省消防庁発表報道資料
3) 上原鳴夫:ベトナム/メコンデルタ洪水災害における保健医療・公衆衛生分野の対応に関する自己評価. WHOベトナム事務所への報告書, 2001年7月
4) 赤十字国際委員会:Preparation of Community Disaster Preparedness Plans. Community Based Self Reliance-Disaster Preparedness Manual
5) 上原鳴夫:災害対策―国際防災の10年における保健医療の役割. 救急医学15(13): 1737-1743, 1991
掲載誌情報