icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生7巻3号

1950年03月発行

雑誌目次

特集 保健所

保健所と公衆衞生實地修練

著者: 齋藤潔

ページ範囲:P.127 - P.128

 醫學教育刷新の一環として,1年間の實地修練が行われることゝなり,既に第3年に入つた。この實地修練1年の中,11ケ月が病院に於ての臨床修練であつて,殘りの1ケ月は公衆衞生の修練が保健所で行われている。臨床の實地修練は他の國々でも行われているが,公衆衞生の修練はわが國をもつて嚆矢とする。而もこの新しい制度が率然として現われ,保健所の整備の未だ成らない時に修練者が保健所え送りこまれたのである。その間に保健所の運營に大改革が行われ,わが國の保健所はその出發に於ては,主として衞生の指導機關であり,次いでこれに行政が加わつて現在の姿となつたものである。然るに實地修練者が配置されるようになつて,保健所に更に教育機關としての使命が負わされることゝなつた。而も醫學教育改革の出發時であつて,醫育機關に於ての公衆衞生教育は完備せられず,從つて修練者も十分な準備なく保健所に配屬され,保健所職員の側にも受入れの態勢が出來ていなかつたので,いづれの側にも不滿足不十分であることは己むを得ない所である。これが改善の叫ばれること久しきに亘つたが,最近漸く醫師國家試驗審議會が取り上げ,專門委員會を設けて討議中である。近く成案が得られるであろうが,今日までの委員會の經過を述べ,廣く各方面の建設的意見をきゝたい。
 先ず公衆衞生實地修練の必要である。

大學の教育と公衆衞生

著者: 吉川春壽

ページ範囲:P.128 - P.130

 醫科を卒業した學生はインターンのあいだのある期間保健所に行つて公衆衞生の實際を習得することになつている。個々の患者の診療をする治療醫學だけではもはや不十分で,將來の醫學は公衆衞生の方向へ發展して行かなければならないということは多くの人の一致してみとめているところであるが,その公衆衞生に關する,このような教育方法がどれだけの效果をあげ得るだろうかということを考えるとどうも疑問に思われる。
 保健所に行つて來たインターンの意見を2,3きいて見ると,いろいろの不滿を述べるが,一つには保健所の職員の數が手薄なこと,あるひは職員のレベルが十分ではない等のために思うような指導がうけられないということ,また,一つには保健所管下の大衆公衆衞生に對する認識が乏しいために,實情を十分に調査し得ないというのが主な點のようである。要するに保健所を通じて體驗した公衆衞生といふものがインターンの興味を惹かないといふことは事實らしい。私はさういう學生に對しては,現在の公衆衞生行政がいかにまだ弱體なものであるかを直接知り得たことがすでに大きな收穫なのであつて,將來それをどうしてもりたててゆくかという問題こそ諸君がたとえ診療專門の醫師になろうともいつも心得てゐなければならないのだと云つている。

保健所とインターン

著者: 楠本正康

ページ範囲:P.130 - P.132

 昭和13年に保健所が始めて出發した當時に比べれば,保健所は隨分大きくなつたものと思う。しかし,此の10年の間は保健所にとつてまことに苦難な道であつた。保健所の仕事や期待はどんどん先へ進むが,これに伴う職員や施設は思うように整備出來なかつたからである。
 しかし,昭和25年度においては,始めて,まがりなりにも,保健所としての最小限の整備を完了することの出來る見通しを得た。

保健所のインターン生活から

著者: 小谷彦藏

ページ範囲:P.132 - P.133

『保健所で何をするんだい』
『朝9時迄に行つて,出席簿に印をおし,後はぶらぶらしているんだよ』

インターより保健所への一希望

著者: 南部勳

ページ範囲:P.133 - P.135

 インターン制度が實施されてから4年目であるが,何時も不平不滿の的となるのは1ケ月の公衆衞生實習である。
 その實習の目的は今考慮の外において,インターン側の不滿の云い分を聞くに大凡次の點にちぢめられる様である。

インターン生より見た保健所

著者: 北野周作

ページ範囲:P.135 - P.136

 大きな歩みへの第一歩をふみだしたばかりの保健所に對して,色々な方面からの批判と檢討が加へられ,保健所の機能が十分に發揮されるようになつてゆく事は,公衆衞生の立場から非常に大切な事であると思う。
 そこで保健所に於ける1ケ月の實習を行つた。1インターン生の眼に映つた2,3の感想を述べてみよう。

保健所實習1カ月

著者: 田中明夫

ページ範囲:P.136 - P.137

 中央保健所で,1週間の公衆衞生に關する講義と見學を終えて,私が實習に行つたのはB區のH保健所でした。この保健所は私達の行つた7月に所長の就任を迎えて獨立したばかりのもので,その昔區役所であつたという建物は,鐵筋コンクリートとは名ばかりの,1階1室,2階2室の焼ビルで,保健所に必要なレントゲン裝置は隣の區役所の地下室に時代離れしたのが1臺,之も外の業者が營利的にやつているもののようでした。新しい時代の國民保健を荷う保健所としては,いささか貧弱だと思いました。
 さてここで私達の1ケ月足らずの實習が始まつたわけですが,先づ所長始め各掛長から,この保健所の機構運營や實務について説明がありました。

奈良標準保健所の巡回健康相談班

著者: 服部敏

ページ範囲:P.141 - P.142

 奈良標準保健所は1市3郡,38カ市町村が管下に屬しており,山間部の村落へは,1日1,2回しかないバスで3時間はかかるといつた状況である。保健所の外來活動がその所在地及び僅かに周邊町村の住民にのみ利用されているという缺點は,現在の機構では解決し難い難點と考えられる。此の根本的な解決策は要所々々に支所を設ける事以外にはあるまい。而し之にはモデル以外は格別と云つた保健所の多い現況では相當思切つた豫算及び人事の處置が必要であり,早急に實現は期し難い。
 他面保健所のフィールドワークは,現在の機構で,保健豫防課の各係長の手にゆだねられている。檢診對象を學校衞生,産業衞生,母子衞生等々特異な社會形態別に把握して實施する場合には斯る機構でも充分であろう。而し,其の對象を地域的な社會集團單位に分けてフィールドワークを行わうとする時には,眞に不充分である。何故なれば,斯る場合の仕事は規模の大小こそあれ,多面多角的な保健所の技術的機能が一つに溶けあつて,行政面を通じてその地域の社會活動の裡へ圓滑に流れ込んで行かねばならぬからで,換言すれば保健所の全機能を發揮し得る様な檢診態勢を整える事が必要であるからである。

保健所の成功例

著者: 大利茂久

ページ範囲:P.142 - P.145

 長崎市に於ては,昨年七月中旬より,保健所を中心に,醫科大學附屬病院,三菱病院,川南工業所病院の協力を得,結核と性病(殊に梅毒)について,市民を對象としての集團檢診を續行中である。其の際日々發見された患者の處置については,萬全の努力を傾注しつゝあるが,本日は,この集團檢診の實施を圓滑ならしむるために,これと隨行した結核と性病豫防衞生講話についての,調査資料を記載することに止める。
 この衞生講話に當つては,小學校地區の24ケ所,中學校10ケ所,合計34ケ所を會場とし一會場を3回づつ巡回講演をした。

保健所利用者の地域的特性

著者: 岩間滿治郞 ,   高田三太

ページ範囲:P.145 - P.149

(本調査の一部は昭和24年11月第6回東京都衞生局學會に於て要旨を發表した)
 昭和23年1月公衆衞生の向上と増進を目的とする新しい保健所法が施行されてから,保健所の利用に就ては新聞にラジオに宣傳せられ,大衆の衞生知識の向上と相俟つて保健所利用者は質,量共に昔日の比ではなくなつた。而らば健康相談所としての保健所は果してどのように利用されて來ただろうか,我々の奉職する小石川保健所も開設以來1年餘を終えたので.この問題を檢討して見た。

保健所活動に對する基礎的考察—第1回報告

著者: 橋本正己 ,   古川元

ページ範囲:P.149 - P.155

Ⅰ.緒言
 新しい保健所活動は文字通り民衆の日常生活と直結する公衆衞生活動の名實共の中樞たるべき使命を與えられているのであつて,保健所活動の向上なくして公衆衞生の向上なく,公衆衞生向上の基盤なくして文化國家の建設の不可能なことを想うとき保健所活動の重要性は如何に高く評價されても高過ぎると言うことはない。公衆衞生活動が科學的活動であり,科擧の社會的實踐である限り,そる細胞であり,(中樞である保健所も亦その成立のあらゆる面に於て高度に科學的でなければならぬ事は論を俟たない。然るに日本に於ける本格的な保健所活動は末だ始まつたばかりであるため,その成立の基礎に對する科學的な獨自の檢討は殆どなされていない現状である。しかし保健所の擔當地域たる人口10萬の地域に於ける必要な保健所活動の量はある程度科學的な根據より算出し得る筈であり,科學的合理的な保健所の之に對應する在り方も自づからその標準が結論づけられて來る筈である。而も之等の問題は主體的にのみ解決せられるべきで,單なる机上のプランによつて解決出來ない事は自明の理である。

--------------------

改良便所普及農村に於ける寄生虫卵檢査成績

著者: 鈴木武夫 ,   原田文雄 ,   助川信彦

ページ範囲:P.156 - P.158

 都市と農村との寄生虫保有率の高いことは終戰後の著しい現象の一つである。即ち戰前の全國平均保有率は43%前後にすぎなかつたのが,昭和21年には67%に上昇し,その後は更にこれを上廻つている。又戰前都市と農村では保有率が異り,例えば昭和13年迄の横濱市の有卵者25.28%に對し,神奈川縣郡部のそれは59.02%となつている。即ち當時寄生虫問題が主として農村を對象にとりあげられた所以である。かくて都鄙を問わず,その根本的な豫防對策としてとりあげられたのが便所の改良であつた。その結果農村に對して考案せられたりが,高野等による所謂厚生省式改良便所並に厚生省式共同肥料溜2)であつた。成瀬村では昭和16年5月に厚生省式3槽改良便所が設置され現在に至つている。即ち當時戸數489(人口2,844)に對し,改良便所574個,この外に共同肥料溜26,合計600個が設置された。當村の寄生虫卵檢査は昭和13年に日本勞働科學研究所1)により全村民を對象として行われた,その後昭和17,18年小學校兒童に就いての檢査が東京衞生試驗所に依つて實施された。今回は昭和23年12月投藥前の檢便を3日間に渡つて實施,その後直に有卵者に對して投藥し,翌24年1月に服藥後の檢便が行われた。以下その成績の概略を述べる。

乳兒141例の寄生虫感染調査成績

著者: 池田稔正

ページ範囲:P.158 - P.159

 緒言:終戰後に於ける腸内寄生蟲の蔓延は,主として學齡期以上を對象とした諸調査報告に明かであるが,未だ生後1ケ年末滿のもののみの集團檢便の報告をみない。私は昭和24年5月,農村(長崎縣西彼杵郡矢上村)に於ける生後滿1ケ年未滿の乳兒141名を檢便し,その驅蟲の機會を得たので茲に報告する。
 檢査方法:直接塗抹法とセロフアン紙肛圍清拭法とを併用した。前者は採便用硝子棒を肛門に挿入採便し,1枚のノセ硝子の2ケ所に塗抹,それぞれ18×18粍のフタ硝子で輕く壓平し,後者は8×3糎大の無色透明なセロフアン紙を微温湯で濕し肛門周圍を拭き,そのままノセ硝子に貼つて鏡檢した。

腸管寄生原虫の謂査,殊に赤痢アメーバ嚢子保有者に就いて

著者: 永井光 ,   西村猛 ,   高田季久

ページ範囲:P.160 - P.163

 腸管寄生原蟲殊に赤痢アメーバ嚢子保有者は近來全國的に増加の傾向があり,一般識者の注目を惹いて居る。大阪附近に於てはさきに松田(昭15−17)の調査があつて,總原蟲保有率10.8-16.4%,赤痢アメーバ保有率0.5-2.3%と報告されて居るが,その後の調査はない。私らは最近の状況を知るため大阪市内外の3集團を對象として調査を行つた結果赤痢アメーバは松田の成績より明かに増加して居ることを認めた。本報告に於て記述するものは昭和23年5月乃至同24年2月の間に行つた調査の結果であるが,尚ほ廣く調査を意圖して居り他日追加を期して居る。

新潟縣の受胎調節實施状況について

著者: 君健男

ページ範囲:P.163 - P.165

緒論
 優生保護法が昨年9月に施行され約1年を經過したが本縣に於ては人工妊娠中絶の實施數は逐月増加の一途をたどり本年7月には遂に1000件を突破,1167件に達し8月には1234件という數字を示した,しかもその内容を見ると同一人が本年に入り身體的理由により既に3回の妊娠中絶を行つている例があるが,かゝる現状は受胎調節が可能な現状に於て切實な關心を持たねばならないことである,正しい受胎調節を國民に指導し妊娠と中絶を反復している人々を啓蒙することは今後の公衆衞生活動の一つの大きな使命と考えられる,かゝる見地からこれが基礎調査として受胎調節の實施状況を本年7月10日より約1ケ月に亘り調査したのでその結果を要約して報告する。
 調査對象の選定は本縣の17ケ所の保健所管内で夫々700世帶を任意抽出法によりえらび調査票を配布した。

大都市中産俸給生活者の居住状態

著者: 大和田國夫 ,   堀内一彌

ページ範囲:P.165 - P.168

1.はしがき
 昭和22年夏季休暇を利用して.慶應義塾大學醫學部及び大學附屬醫學專門部學生を用いて,住居の使用法について調査させ,家の平面圖,家具のおき場所,室の使用法,その他を確實に記載させた。被檢家族約1000のうちから,東京都35區内居住の,子女ある中産俸給生活者(世帶主の學歴が大学,專門學校卒業程度)の資料をあつめて觀察を行つた。職業は會社員163,官公吏30,教員15,勤務醫師6で,その家庭構成人員は成人として,4.98±0.09即ち5名である。

死亡調査に現れた癌疾患

著者: 服部敏 ,   田村次郞

ページ範囲:P.169 - P.170

 奈良縣は從來より癌患者の高率を以て知られてゐた。筆者等は癌患者の實態を調査する一つの試みとして,人口動態死亡調査票を利用し,癌による死亡者の統計的觀察を行い,田村は其の要旨を第4回全國保健所長會,學術會に報告した。其の成續に據つて,再び此所に報告し,併せて癌豫防事業に關する私見を述べ,大方の御叱聲を乞ふ次第である。
 本例は奈良標準保健所管内の昭和23年1月より12月迄1ケ年間の人口動態死亡調査票3,585例(戰死戰病死を除く)中より抽出した癌死亡者(惡性腫瘍を除く)241例に就て觀察した。尚當保健所管内は山間部農村地帶である添上郡(人口43,830)山邊郡(人口49,074)と平坦部農村地帶である生駒郡(人口106,343),都市である奈良市(人口78,369)よりなり,1市4町33ケ村總人口277,616人(昭和23年常住人口調査)を含んでいる。

アサリ及びカキの毒成分の本態に關する研究

著者: 八田貞義 ,   板井孝信 ,   宮本晴夫

ページ範囲:P.171 - P.174

Ⅰ.まえがき
 昭和24年3月下旬に靜岡縣の濱名湖畔の舞阪町と新居町にアサリ及びカキ中毒事件が發生した。靜岡縣當局の報告によるとアサリ中毒患者は舞阪町に60名(内死亡2名),篠原村2名(内死亡1名),新居町5(内死亡1名)計67名であつて,そのうち4名は死亡した(致命率6%),カキ中毒患者は新居町の36名で,そのうち3名の死亡者を出した(致命率8%),
 當地方は昭和17年3月下旬にアサリの集團食中毒によつて總數334名の患者と114名の死亡者を,翌18年3月新居町に18名のカキ中毒患者と6名の死亡者を,出すの慘事を惹起しており,當時當試驗所の松尾1)秋葉服部2)等の諸氏により,その本態についての情細なる研究がなされ,また著者の一人八田も傳染病研究所に於てこの事件の細菌學的方面に專心したが,未だ中毒物質の本態については緒論に到達し得なかつた。

終戰後滿洲に於ける日本人の疫學調査

著者: 井伊章

ページ範囲:P.175 - P.176

 終戰後滿洲撫順市は在來者41,000名に新らたに48,000名の北滿及び奥地よりの疎開者を受け入れた。その後中共,ソ聯,國府軍と相次ぐ進駐を迎へた。翌21年6月初旬より10月中旬にかけて73,600名に達する引揚げ還送があつた。その間の死亡者は8,300名と日僑善後連絡處(以下日僑と略す)では推定している,こゝにその1年間の疾病發生死亡状況を報告する。
 一般疾病死亡に就いての主たる材料は日僑に,發疹チフス腸チフスの材料は舊滿鐵撫順病院に求めた。

食習慣と長壽

著者: 近藤正二

ページ範囲:P.177 - P.180

 長壽とか老衰とかを考える際には(乳幼兒死亡迄も含んだ)平均壽命よりも人口に對する高齡者の率を見る方が正しく且つ簡便である。長命者の多少は地方により著しき差がある。人口に對する滿70歳以上の高齡者の率を縣別に見ると第1表の如く,全國平均2.65%に對し,烏取・島根・高知・徳島の4縣は4%以上であるのに秋田縣は僅かに1,6%に過ぎない。更に個々の村に就て見るならば此の差は一層甚だしい。今女だけに就て見るに,人口に對する70歳以上の率は長命者の多い村では10%もあるのに少い村では僅かに1%内外に過ぎない(全國平均は3.1%)
 一般に長命者の多い處では之等老人のみならずそれに續く60歳乃至50歳代の人々の活動力(老後の體力)もさかんであるが,長命者の少い處では之等の人々の活動力が著しく劣る。即ち長命者の多い處では老衰が遅く,長命者の少い處では老衰が早いのである。例えば隱岐の黑木村の如きは,人口3700餘の中に滿80歳以上が82人も居つて,しかも其の大部分が元氣で働いて居るので60-70歳では未だ老人と言えない位であるのに,秋田・山形縣などに多く見られる短命村では大體60歳が既に老衰期とされて居る。したがつて長命村と短命村とでは一生の間の活動期間に大きな差がある。尚其上に短命村では50歳60歳代で半身不隨等で働けない人が相當に多いのが常であつて,之をも考慮に入れるならば兩者の差は一層甚だしいものになる。

公衆衞生の發達(1)

著者: 杉靖三郞

ページ範囲:P.181 - P.182

生命統計の始まり
 疾病の流行を防ぎ公衆衞生を改良しようという試みには,古代の文明國においても行われていたのである。然しこれらの試みは基礎となるべき正確な知識(つまり,公衆衞生に關する調査・統計資料)が缺けていたので,充分な好い效果を現わすことが出來なかつた。かような調査資料を作ることは十七世紀のイギリス人,ウイリアム・ペテイWilliam Petty(1623-1687)によつて始めて試みられたのである。この人は醫者であり且つ發明家でもあつた,また,政策的經濟學の創始者とも呼ばれている人である。1662年は彼は一人の友人と協力して"死亡數に關する自然並びに政策上の觀察"(Natural and Political Observations upon the Bills ofMortality)と題する著作をあらわしたその當時の資料はごく貧弱なものであつたが彼はこの著作で人口,死亡率,疾病蔓延率などを推定しようと努力したのであつた。この仕事にたずさわつた結果,彼は資料の不完全を痛感し,正確な統計資料を得るため政府が施設並びに制度を設ける必要があると主張した。この著作のなかで,彼が"一國の眞の富は有能な人の力に求むべきこと"(the true Wealth of a country is to be sought in its efficient man power)と主張していることからもその優れた見識がうかゞわれる。

厚生省便り

ページ範囲:P.183 - P.186

第7回醫師國家試驗合格者
 昨年10月に實施した第7回醫師國家試驗合格者が12月29日厚生省から發表された。受驗者總數は3.040名で,うち合格者は2.642名,合格率は96.9%であるが,その學校別受驗者及び合格者は次の通りである。

海外文献

衞生の基礎的方則と實行方法

著者: アンドレ・ライオン

ページ範囲:P.187 - P.189

 衞生の基礎的問題として第1に無菌水の供給,第2に下水處置,第3に昆虫に對する闘爭がある。
 腸チフスやコレラや赤痢などの如きは飮料水や下水で汚された食糧で撒布されるのである,故に斯る疾病傳播の豫防は其の給水途上人類の排泄物により汚損されるからこれを保護すべきこと或は汚染の危險を取除かれるべきことである,水道給水も泉水の供給も得られない處では適當に隔離され且建設された井戸が水源として最良のものである。そして其井戸は水質善き無機質の水量充分なる地下泉が得られる如く構築されねばならぬ。水はコレラ流行時には感染の主なる源の一であるから斯る危險のあるときは淺い井戸は使用してはならない。又流水も使用してはならない,これらの水源は屡々汚染衣服洗濯のために用いられているからである。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら