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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生7巻5号

1950年05月発行

文献概要

特集 鼠族昆蟲

疫学における蚊族研究の近況

著者: 細井輝彦1

所属機関: 1東京工大生物学教室

ページ範囲:P.268 - P.270

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 19世紀末から今世紀初頭の医学に画期的な波紋を投じたフイラリア,マラリア,及び黄熱に関する蚊の媒介説は,その後30年間に現れた大小無数の追試によつて実証され,ふえんされて,傳播蚊の種類,分布,習性,及びそれらによつて決定される蚊の疫学上の役割りが,あらまし解決された。デング熱の傳播蚊確定について,マニラで行われた実驗(1926,'31)を最後として,蚊の研究はようやく疫学の一線から退いたかのように見えたが,そのころから話題を賑わわせ始めたものが3つある。
 その第1は,欧洲におけるマラリヤの主要傳播蚊Anopheles maculipennisの"race"に関する問題である。從來ただ1種と考えられてきたmaculipennisが,実は卵型と,吸血性や幼虫生育所などの生態とによつて区別される,5以上の亞種または変種から成り立つているということが,各國における多数の独立した研究から綜合的に判明し,この結果,これまでmaculipennisが多数に発生しているにも拘わらず,マラリアがあまり見られない地方があるという,いわゆる"anophelism sine malaria"のパラドツクスが氷解するに到つた。即ち,ある亞種または変種では原虫に対する感受性に変りがなくても,家畜を好んで吸血するために,実際上はマラリアの傳播にあずからないことがある。その際,氣候,土地,生物などの環境要素によつて,種々いろの変化を生じてくることも肯かれる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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