文献詳細
文献概要
特集 鼠族昆蟲
疫学における蚊族研究の近況
著者: 細井輝彦1
所属機関: 1東京工大生物学教室
ページ範囲:P.268 - P.270
文献購入ページに移動その第1は,欧洲におけるマラリヤの主要傳播蚊Anopheles maculipennisの"race"に関する問題である。從來ただ1種と考えられてきたmaculipennisが,実は卵型と,吸血性や幼虫生育所などの生態とによつて区別される,5以上の亞種または変種から成り立つているということが,各國における多数の独立した研究から綜合的に判明し,この結果,これまでmaculipennisが多数に発生しているにも拘わらず,マラリアがあまり見られない地方があるという,いわゆる"anophelism sine malaria"のパラドツクスが氷解するに到つた。即ち,ある亞種または変種では原虫に対する感受性に変りがなくても,家畜を好んで吸血するために,実際上はマラリアの傳播にあずからないことがある。その際,氣候,土地,生物などの環境要素によつて,種々いろの変化を生じてくることも肯かれる。
掲載誌情報