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特集 鼠族昆蟲
公衆衞生の發達(3)
著者: 杉靖三郞
所属機関:
ページ範囲:P.300 - P.301
文献購入ページに移動ペスト:18世紀に於ては,ヨーロツパ各國に於いて諸種の傳染病に対する組織的な國家管理がはじめて行われた。18世紀の間及び19世紀の初期ではペストがまだ屡々近東諸國(トルコ及びダニユーブ沿岸)からヨーロツパえ侵入して恐ろしい猛害をもたらした。18世紀のはじめ,1709年には,ロシアでペストの大流行があり,翌年の1702年には,マルセイユ及びツーロンで大猖獗を極めて9萬人の人が死んだ。1734年にもダニユーブ沿岸及びウクライナで大流行あり,1743年にシチリー島のメツシナで3万人の死亡者を出した。1770年からその翌年えかけてはモスコーで大流行あり,人口23万のうち5万2000人がそのために死亡した。これらの大流行によつて,昔から行われていたカランチン(Qurantine−40日間という意味で,海港檢疫では40日間船を港外に停舶させた)による防疫法が時勢おくれで非人道的且つ労多くして効なきことが判り.傳染病を限られた地域内で食い止めるという方法が工夫されるようになつた。また,各地に傳染病者を隔離する病院も数多く作られるようになつた。
天然痘:世紀のヨーロツパに於いては,天然痘はまた到るところで流行する普通の疾病であつて,ただその大流行の折の記録が残つているだけである。
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