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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生7巻6号

1950年06月発行

雑誌目次

特集 産業衞生

塵埃計數の諸問題

著者: 松藤元

ページ範囲:P.319 - P.321

 塵埃を嫌うフイルム製造などの作業場を除けば,塵埃が發生しない作業場は殆んどなく,そのために受ける直接,間接の損害は非常に大きい。勞働基準法が出來てから,作業場の環境條件に注意が拂われるようになつて,餘りこの方面で經驗のない人達迄色々の場所で塵埃を測定しているようであるが,塵埃の計測はそう簡單なものではなく,少くとも今日日本で行われているやり方では,少し練習したら明日からでも信用出來る値が誰でも得られるというものではない。これは望ましくないことは勿論で,その原因について少し述べてみよう。

各種繊維工場の環境調査成績

著者: 岸本七郞 ,   跡見一子

ページ範囲:P.322 - P.324

 ガラ紡工場の環境に關して調査された報告は少い。余等は愛知縣岡崎地方の某ガラ紡工場を調査する機會を得たので,之と對照として紡績工場及び特殊紡績(復紡)工場の調査を合せて行つた。ガラ紡というのは戰時中に羊毛や棉花の輸入と絶の爲盛んになつた工業であつて,これは紡績の落綿,人絹糸,ぼろ布,麻,魚網等を原料とする。そして之等は總て未消毒のまゝ用いる。
 作業工程は反毛,撚子,撚糸,合糸の順序で行われ反毛及び撚子の作業所では埃が朦々と舞つていて,柱や梁には恰も「つらゝ」のように埃が下つている。これ等のガラ紡工場は家内工業式に少人數で行つているものが大部分であつて普通の民家の一部を作業所としているので狭い。

交通從業員の災害

著者: 出原氾

ページ範囲:P.324 - P.327

 近時交通機關の復活と混雑により災害事故は絶えず發生し,年々莫大な人的物的犠牲が拂われている。
 余は名古屋市交通局に於て災害事故を集計したので此處に災害を報告し災害豫防防止の資料に供したいと思う。從業員を所属上より三大別して電車,自動車,工場關係從業員(以下電車・自動車・工場と略す)とし,災害發生状況を比較考察することとする。調査期間は電車及工場は昭和23年度,自動車は20年度より4ヶ年間であり,發生件數は電車130件,自動車66件(年平均16.5件),工場122件である。因に局從業員總數は5500名である。集計した災害程度は微症以上とし,職種は電車,自動車では運轉,手車掌,工場では工員であり,事務關係者は除外し又性別には女子は少く電車12件自動車16件である關係上男女合計として取扱つた。

—松尾硫黄鑛山における—珪肺症と亞硫酸ガス中毒

著者: 田村彰

ページ範囲:P.328 - P.331

I.はしがき
 昭和23年來松尾鑛山の珪肺症並びに亞硫酸ガス(SO2)中毒の研究をしているが,未だ全貌を把握出來ないでいるので,以下記述する事は中間報告に過ぎない。又勞災法に於て最も緊急重要事である珪肺の補償時期に就ても此處では斷定する事を避けたい。

最近發生した2,3の職業性皮膚疾患について

著者: 及川富士雄

ページ範囲:P.331 - P.333

 最近東京都其の他に發生した2,3の職業性皮膚疾患を報告して御參考に供したいと思う。尚本例は何れも災害性に發生したものであつて眞の職業病とは云えないが新しい製造過程中に發生したものであり此の意味で興味があると思われる。

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異型猩紅熱の疫學的研究—業務上感染と見るべき一症例

著者: 戸谷徹造 ,   横井孝久 ,   中島浩二 ,   廣渡敬也

ページ範囲:P.334 - P.336

 近年我國内に猩紅熱様の,發疹性,熱性病,いわゆる異型猩紅熱の集團發生例が各地で報告せられている。余等は昭和23年春名古屋市南區住友電氣工場内に於ける本症の集團發生例に遭遇し且つ,その防疫に從事中これに感染發病したと思はれる1例を經驗したので此處にその概要を報告する。

人工,混合榮養兒の哺育状況—蒲田に於ける場合

著者: 小池重夫

ページ範囲:P.336 - P.337

 昭和23年9月中旬より下旬にかけて行われた母乳分泌檢査の際に,檢査に來た母親に質問をして人工,混合榮養兒の哺育状況を聽取した。その結果を要約して述べると次の如くである。
 1.配給量で足りるかどうかを質問したところ,足りるもの256名,不足するもの549名でその比は大約1:2である。

乳幼兒健康相談における計算圖表の利用

著者: 山口健男

ページ範囲:P.338 - P.339

 乳幼兒の發育の判定の一手段として,身長,禮重を測定した場合に,測定値をその月齡の標準値,平均値等と比較しておくことが,必要である。乳幼兒では發育が極めて盛んであるので,月齡によつて標準値や平均値が著しく異るからである。測定値を此等の男女別月齡別の標準値や平均値と比較しておけば,月齢や男女の構成の異る乳幼兒の集團を檢診した場合に月齡の差や性別を除去して,お互いを此較することが出來るし,又同一乳幼兒を長期間に亙つて榮養指導した場合にも,ひとめでその成績を知ることが出來る。私は日常乳幼兒の健康相談を行つていて,以上の測定値の比較を簡單に行い得る事が,仕事の能率上重要であることを,痛感しているので,次の樣な計算圖表を作つてみた。
 我國の乳幼兒の發育規準値として廣く用いられているのは,栗山,吉永氏の東大標準値と,齋藤,淸水氏の公衆衞生院平均値である。私は測定値を計算圖表によつてこの兩値と比較することを,次に試みた。

—傳染性と思われた—新生兒下痢症の細菌學的調査

著者: 牛場大藏 ,   佐々木正五 ,   阿部和男 ,   水之江公英 ,   小島正典 ,   市橋保雄 ,   本間哲雄

ページ範囲:P.340 - P.343

 昭和23年10月から東京都内日赤産院にてやや特殊な下痢症状のもとに死亡する新生兒が多數あり,われわれはその原因を探求すべく種々の細菌學的調査を行つた。その結果,將來この種疾病の發生,檢索方法及豫防等に關し考慮すべき事柄を知つたので,その大要を報告する。

—昭和24年度の—いわゆる傳染性下痢症の全國流行の概況—特に水系傳染の可能性に就て

著者: 石丸隆治

ページ範囲:P.344 - P.349

まえがき
 昭和23年初頭新潟縣に原因不明の下痢患者が多發して以來,所謂傳染性下痢症については既に多くの報告がある。特に小島教授は本症に對する綜説1)を發表されている。
 昭和23年度流行の概況2)についても既に發表したが,ここで昭和24年度の流行を概觀する。

水の生物學的試驗の意義

著者: 洞澤勇

ページ範囲:P.349 - P.353

 今回,水の試驗法に關する全般的な再檢討が水道協會を主體として行われ,又,廣い飮料水という立場から國に於ても一定の標準法を採用することになつた。
 飮料水の判定標準に關しても從來3本立であつたのが今回を機會に一本に統一されることになり,全國の衞生技術者もこの點非常に問題が單一化されて便利であろうと思う。

野菜に附着する蛔蟲卵の實驗的研究—文部省科學奬勵金による實驗

著者: 齋藤マサ ,   岡谷良武

ページ範囲:P.353 - P.355

1.緒言
 経戰後蛔虫症の増加は周知の通りであるが,現在に到つても尚蛔虫症に對する對策は確立されて居ない。それで最も重要な感染源たる家庭菜園について,追肥の方法と卵の野菜への附着する程度,並びに野菜の洗滌方法と卵の流出率との關係に關する實驗を行つた。

公衆衞生の發達(4)

著者: 杉靖三郞

ページ範囲:P.357 - P.360

公衆衞生の黎明
 歐洲においては18世紀の末から所謂,實利主義が時代の思想となつてきた。『最大多數の人の最大の幸福』と云う言葉は空氣の研究で有名なジェレミイ・ベンサムJeremy Bentham(1748-1832)によつて一層徹底された。このベンサムが唱えた實利主義が科學研究の專門化・分化をもたらす上に大きな原動力をなしたと云つてもよいかと思う。ベンサムの思想は丁度その時代の社會情勢とぴつたり適合したものであつて,人々は意識するとせざるとに拘らず,この思想の影響を大いに受けた。醫學方面の人々もこの時代思想に大いに影響されて,學問を專門化してそれぞれ細かい分野を分擔することが能率をあげる所以だと知らず知らずの間に思うようになつたのである。それ故に,ベンサムこそは19世紀以後の學問研究の專門化の刺戟者であり,また,19世紀以後に漸く盛んになつてきた豫防醫學の直接の創始者だつたと云つてよいかと思う。
 ベンサムは人間の社會現象の説明の自然科學の方法を利用して,社會學という一つの科學を創始しようと努力した。そして,その點に於いて,彼は醫學思想家.殊に,公衆衞生を取扱う醫學思想家達に大きな影響を與えた。彼の弟子のジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill(1806-1873)はベンサムの學問の方法を『科學的な方法」と云つた。

厚生省便り

ページ範囲:P.361 - P.369

早期黴毒の治療指針
 最近梅毒の治療法としてペニシリンが使用されるようになつたが,この治療法は治療日數の短縮(從來の砒素劑や蒼鉛劑による治療日數は大てい半年位かかつたのが,これによると約2週間で完了),副作用の稀なこと等から,治療の中途でやめるものを無くすことが出來,傳染の防止にもきわめて有効適切であるので,公的の性病診療所,性病々院において,今後は常分の間次の治療指針に從つて新患渚に對しペニシリンを使用する治療法を試みるよう,厚生省では3月29日付各都道府縣知事宛通牒を發した。なお,ペニシリン治療を行う際は必ず充分爾後の經過を追及し完全な記録をとること,追つて別の報告樣式を示すまでは,診療状況追及の記録は從來の砒素劑,蒼鉛剤による治療を行つた時と同様に整備しておくこと,既に砒素剤,蒼鉛劑によつて治療を行つている者については從前の定つた治療法が終るまで繼續するよう要望している。
 「早期梅毒に對するペニシリンによる治療指針」ここに示す治療法は,早期梅毒ことに初期,第二期の梅毒に有効であつて,晩期の治療法については更に研究の必要があるので示していない。本治療法を行うに當つては,必ず爾後の經過を觀察し,少くとも第1年目は3ヶ月に1回の健康診斷と血液検査を行い,治療の奏効を確認し,再發或は無効と思われるものには再治療を行われたい。

文部省便り

ページ範囲:P.369 - P.370

學校衞生の動向
 本年に入つてからの學校衞生の動向について,大きなものが幾つかある。先づ第一は,學校衞生についての基準を示す學校保健計晝實施要領が漸く各學校に配布されたことであらう。その實施も傅達講習以來遲々としていたが,漸く保健主事を決定し學校保健委員會への發足をボツボツ初めている。
 次に,健康教育の教科書の檢定が初められ,約十册の受付けがあつた。幸ひ,高等册,中學册がパスした。それらのうち,既に本年度の準教科書として出されているのもある。ともかく,本年6月の展示會を待たずして,健康教育の教科書が街頭に出されるのには,それだけの歴史的基礎が必要である。

海外文献

ページ範囲:P.371 - P.372

米國公衆衞生雑誌(A.J.P.H.)1950年3月第40巻第3號目次絡介
保健教育と公衆關係(James P.Dixon外)
健康保障の現状(Margaret C.Klime)

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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